5月22日の感染地日記

昨日の午後は1月の後半に降りかかった胃腸炎騒動の最後の後始末に行って来ました。覚えておられる方もおられると思いますが、胃カメラをして、ピロリ菌が見つかって、その除菌の第二ラウンドの結果説明です。今回は無事除菌に成功していましたので、まずは良かったと言うところです。そんな事を午後にしていましたので、昨日のFaxの紹介ができませんでした。早速ですが5/21 12:07着信の神戸市医師会新型インフルエンザ対策本部よりの「新型インフルエンザ関連情報(第16報)」です。

PCR検査について

 今回の新型インフルエンザについて、神戸市医師会としては、我々の対応が今後世界のモデルケースになるかもしれないの認識のもと、疫学的リサーチについても極めて重要よ考えてきました。しかし、環境保健研究所(神戸市)の処理能力、培地の不足、検体の採取方法、保存方法、集配方法などに様々な問題点があり、これ以上のPCR検査は困難との判断で、一旦は神戸市において一般会員レベルでは原則行なわない旨のお知らせを出しておりました。

 その後、国と神戸市と神戸市医師会との間において行政間の調整等も含め様々な問題点について精力的に協議した結果、最終的に厚労省神戸検疫所内田所長の英断もあり、昨日深夜、実施に向けてスタートできる状況までこぎつけました。

 検体処理応力との兼ね合いもあり、まず当面はまずインフルエンザ定点の医療機関より協力していただき、その後の検体数の出方によって、擬似症定点にも拡大、さらには一般会員の中で希望される医療機関にも範囲を広げていく方針でいくことを決定いたしました。明日5月22日(金)より検査実施できる体制になりましたので、ここにご案内いたします。

 検体の採取、保存、集配、伝票の取扱い等の具体的手順については、追って実施医療機関に直接、検体培地とともに文書を送付いたしますのでお待ちください。

 公衆衛生学的な見地からも今回の疫学的な検証は極めて重要でありますし、舛添大臣の「季節性インフルエンザの取扱いにする方向で検討する」方針については、発熱相談センター、発熱外来の解消により早期に患者を的確に把握できなくなる、また新型ウイルスの特性や今後の変異状況など、疫学的にも詳細な検証もできなくなる等の極めて大きな問題があります。従って神戸市医師会として断固反対の立場をとっていることも確認しておきます。


タミフル等の予防投与について

 会員より多くの問合せがありました。ガイドラインによる基本的な考え方は、国内発生早期において感染拡大を防ぎ、地域封じ込めを図るために行政的な措置として行政が調査の後、感染症を正式に認定し、接触者に対して無料で赤タミフルを投与するのが厳密な意味での予防投与です。

 ですから現在の「まん延期直前」の段階で一般医療機関において感染者が発生した場合には該当しませんが、特別な事情がある場合には上記の対応が認められることもあります。個別のケースについては保健所予防衛生医務・薬務係医療機関専用回線にお問合せください。

 なお、現状で感染者が発生した場合、接触者に対して予防投与を行なう場合には保険適用になりませんのでくれぐれもその点に御留意ください。限りある貴重な抗インフルエンザ薬を際限なく使用することについては、今後のさらなる強毒性インフルエンザに備える意味でも慎重な対応をお願いいたします。

お読みの通り今日の情報は2つで、

  1. PCR検査の範囲拡大
  2. タミフル予防投与基準
タミフル予防投与の話はもう良いかと思うのですが、これだけではどんなものか想像しにくいかと思います。薬局のオモテとウラ様の備蓄用「赤タミフル」はやっぱり赤かったに画像がありますので紹介しておきます。
普通のタミフル タミフル(備蓄用)
タミフルは外箱が赤色を使っていて「備蓄用」の文字が記入されています。赤いのは外箱だけでなく、カプセル自体のシート包装も、
見た事がない人のために、普通のタミフルのシートは緑色です。医療機関で実物を見た方がおられれば御一報ください。だからどうしたと言うわけではありませんが、単なる野次馬根性だけです。

PCR検査の件は5/18の第12報で

A陽性例の検体の送付については昨日の会議で議題になりましたが、その保存方法、輸送方法等の取扱い、そして環境保健研究所、神戸検疫所等での受け入れ能力の現状からして困難なことが判明いたしましたので送付はしないことになりました。ご注意ください。

これがどの程度の範囲でPCR検査をしないかやや把握し難い文章だったのですが、今日の第16報でおおよそ判明しました。どうも5/18時点ではインフルエンザ定点の医療機関でも検査をしない方針であった事が確認されます。それでは今後の疫学的検証に支障を来たしそうだから、せめて定点医療機関PCR検査を行い、出来うるならば擬似症定点(インフルエンザ定点と、どう違うんだろう?)、さらには一般医療機関でも疑われるものには出来る限りPCR検査を行うおうとの決定と読みます。

医学的には必要なことなのですが、舛添大臣の「季節性インフルエンザの取扱いにする方向で検討する」の方針に「断固反対」まで言ってしまうのはどうだろうかとは思っています。微妙な問題で、継続的な追跡調査の必要性と、いつまで感染症法の新型インフルエンザとして扱うかの社会問題は一筋縄では行かないところがあります。

非常に現実的な問題ですが、現在設置されている発熱外来は形態は様々です。駐車場にテントを張った程度の形態のところもあるとは聞きますが、そういう施設では長期戦になると苦しくなります。タマタマ今回の新型インフルエンザ騒動が4月の終わりから5月にかけての比較的気候の良い時期であったから良かったようなものの、これから梅雨になり、夏が来ます。テント形態の発熱外来の運用が厳しくなるんじゃないかと思っています。

新型インフルエンザへの考え方は現在のところどうやら「弱毒性」であるとの情報がそろいつつあります。もちろんこれが強毒性に変異する観測もあり、調査を続ける必要性はありますが、いつまでこれに対して発熱相談センターや発熱外来の体制を続けるかの判断も必要です。個人的には「断固反対」とするよりも、継続的調査の形態の提案の一つぐらいの姿勢の方が良いような気もしますが、どんなものでしょうか。

それと情報を読むと今回のPCR調査拡大に踏み切れたのは厚労省神戸検疫所の英断となっていますから、厚労省のなんらかの同意があるとも考えられますが、一方で舛添大臣の方針に「断固反対」の表明が付け加えられているのに落差と言うか、違和感を感じます。何か舞台裏がありそうな感じもするのですが、勘ぐりすぎなのかどうかは、何とも言えないところです。

あえて憶測すれば、舛添大臣の発言の真意と言うか裏に、季節性インフルエンザとして扱うとなれば、今後は新型インフルエンザの追跡調査は完全に打ち切られるないしは大幅縮小してしまうとの意向があるのかもしれません。ある程度の規模の調査を継続するためには、あくまでも感染症に基づく新型インフルエンザである必要があり、そのためには発熱相談センターや発熱外来を維持しなければならないとの意向の裏返しなのかもしれません。予算の問題が常に絡みますからね。

今回の新型インフルエンザ騒動を後日に検証するためには、しっかりした疫学的データを残しておく必要があり、そのためにはどの程度の規模で継続調査するかの科学的な判断が必要です。具体的な内容は疫学的手法論として確立しているはずなのですが、それも併せての方針決定が求められる時期も近づいているのかもしれません。