息抜きのジョーク

連日のインフルエンザ関連のお話で食傷気味と思います。今日も「またか」なんですが、タイトルにしたようにたまたま見つけたジョークです。元は平成21年5月26日付事務連絡「新型インフルエンザに関連する診療報酬の取扱いについて」です。この事務連絡の内容はインフルエンザ対策のFax処方時の診療報酬のQ&Aになっており、医療機関にとって重要なところは、

(問1)

 事務連絡の「1.ファクシミリ等で処方せんが送付されるケース」にあるように、かかりつけ医等が、電話による診療の結果、ファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんを発行する場合、保険医療機関は、電話再診料、処方せん料を算定できるのか。

(答)

 算定できる。

ところでこの事務連絡が行なわれたのは5/26です。この頃の新型インフルエンザはどうなっていたかと言うと、5/16に神戸で国内発見第1号が見つかっています。それからテンヤワンヤの騒ぎの渦中に放り込まれたのですが、5/20時点の神戸市の公式情報です、

 昨日午後、川島会長及び神戸市行政は共同記者会見で、神戸市は第三段階「まん延期」直前と発表されました。すなわち「まん延期」に準じた医療体制を整え協力する旨確認したわけです。今後は対応可能なすべての医療機関において新型インフルエンザ患者(疑い例を含む)を診察していただくことになりますからここにご案内します。医療機関でのさらなる感染拡大を防ぐためにも以下のことに十分ご留意ください。

新型患者の急増で発熱外来体制や全員入院体制が破綻し、そういう状態に対する対応を神戸市と厚労省が折衝を重ねていた時期です。当時のインフルエンザ対策はまだガイドラインにかなり忠実でしたから、厚労省としては第二段階に留めておきたい意向があり、神戸は眼前の破綻状況から第三期への移行を強く求めたとして良いかと思います。

そういう折衝の末、出てきた妥協案が、

    神戸市は第三段階「まん延期」直前
この指定地域だけ「まん延期」直前はその後もしばらくは行われた事は覚えている方も多いと思います。ちなみに5/20当時の「まん延期」直前地域は、

兵庫県神戸市の全域、兵庫県芦屋市の全域、兵庫県明石市の全域、兵庫県西宮市の全域、兵庫県尼崎市の全域、兵庫県伊丹市の全域、兵庫県川西市の全域、兵庫県宝塚市の全域、兵庫県三田市の全域、兵庫県加古郡播磨町の全域、兵庫県加古郡稲美町の全域、兵庫県加古川市の全域、兵庫県高砂市の全域、兵庫県姫路市の全域、兵庫県豊岡市の全域、兵庫県養父市の全域、兵庫県朝来市の全域。兵庫県美方郡香美町兵庫県美方郡新温泉町の全域。大阪府大阪市の全域、大阪府豊中市の全域、大阪府池田市の全域、大阪府吹田市の全域、大阪府高槻市の全域、大阪府茨木市の全域、大阪府八尾市の全域、大阪府箕面市の全域、大阪府三島郡島本町の全域、大阪府豊能郡能勢町の全域。滋賀県大津市の全域、滋賀県草津市の全域。

こんな感じです。ただ国内体制はあくまでも第二段階で、第二段階をさらに細分化して、

  • 普通の第二段階
  • まん延期直前の第二段階
こういう風に扱っています。これもちなみにですが、厚労省HPでは私が確認したところでは9/21までは間違い無く、

日本の状況

第二段階(国内発生早期)

これは昨日見たら無くなっていました。細かい事を書き連ねましたが、事務連絡があった5/26時点はもとより、その後も公式には第三段階である蔓延期に日本はなってなかったはずです。実質とか事実上はそうですが、ガイドライン自体が実情に合わなくなって使いにくくなって、変わり様がなくなったと考えています。ただし5/26時点ではまだまだガイドラインが強い影響力を保持していた時期です。


さてと、事務連絡の調剤薬局に関連する事項を読んでいて発見したのが次の個所です。これは別添2の平成21年5月22日付事務連絡「ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの取扱いについて」になるのですが、「薬局の対応」として、

まん延期終了後、速やかに医療機関から処方せん原本を入手し、以前に送付された処方せんを原本に差し替える。

ちょっと苦笑で、事務連絡では「まん延期」に既になっていました。たぶん5月の騒動のときに神戸市と厚労省で「まん延期」という言葉の使い方で厳しい折衝があったと推測していますし、その折衝の上の妥協として「まん延期直前」なるあらたな概念が誕生したと考えています。神戸の関係者の方の苦心が思い浮かぶのですが、5/22時点で厚労省の事務連絡はアッサリと「まん延期」の言葉を使っているのがちょっとしたジョークかと思います。

もっともここは「これからまん延期になるの意味だ」とすればそれまでですが、まん延期が終わるにはまん延期に進まないと終わりません。当時はガイドラインに基づいてより考えられていましたから、感染の段階と言うか進み方は、

    感染初期 → まん延期 → 回復期 → 終息期
これが右向き一方通行に進んで終了するプログラムです。ガイドラインは何度か読みましたが、今から思えば不思議なのですが段階がバックする想定はなかったかと思います。おそらくまん延期に至らなかったらステップを飛ばして回復期や終息期に進むつもりであったかもしれませんが、どうするかは具体的に書いてなかったと記憶しています。

実際に行われたのはまん延期直前状態なる新たな定義を作り出し、この定義はバックできる運用とした事です。現実的にはそれも一案ですが、一方でまん延期終了を想定して指示が出ているのもおもしろいところです。進まなければ終わらない幻のまん延期は今になれば少々笑えます。過ぎてしまった事ですし、大勢に影響の無い些事なんですが、5月の騒動を思い出して、結局何を守ろうとしていたのだろうと思っています。