新温泉町の診療所

3/9付日本海新聞より、

診察時間、半分に 照来、八田、岸田の3診療所

 兵庫県新温泉町は、温泉地域にある三カ所の町立診療所(照来、八田、岸田)の診療体制を四月から縮小する。八田診療所(同町千谷)の常勤医が三月末で退職することに伴う対応で、後任が決まるまで照来診療所(同町桐岡)の常勤医が三診療所を一人で担当する。

 今回退職する医師は昨年四月、八田診療所に赴任。同診療所に常勤しながら、毎週火曜日は岸田出張診療所(同町岸田)で診察していた。

 一年で退職することになった理由について同町は「一身上の都合」と説明。慰留に努めたが、同医師の決意は変わらなかったという。現在、後任の医師を募集しているが、めどは立っていない。

 四月以降、三診療所の診察時間はこれまでの約半分となり、午前は照来、午後は八田・岸田が基本となる。ただし八田は金曜日、岸田は第一、三火曜日が休診となる。

 新しい診察時間は次の通り。

 ▽照来診療所=月−木曜日(午前九時−正午)金曜日(午前九時−午後四時半)▽八田診療所=月−木曜日(午後一時半−同四時半)第一・三火曜日、金曜日(休診)▽岸田出張診療所=第一・三火曜日(午後一時半−同四時半)

兵庫県新温泉町とは、浜坂町と湯村温泉のある温泉町が合併して出来た町です。湯村温泉はちょっと古くなりますが夢千代日記の舞台となったところで、なかなか風情のある温泉です。そこの町立診療所の医師が、

    2人 → 1人
こうなるという話です。但馬も医師不足の厳しい地域ですから「ここでもまた」と直感的に感じるのですが、よく読むと3つの診療所を2人の医師で維持してきたわけであり、そこまでしないと新温泉町の医療が維持できないかの疑問が出てきます。額面通りに取ると、もう1人の医師がいなくなると新温泉町の医療が壊滅するような印象です。そこで確認の意味で、新温泉町の旧温泉町の医療機関を地図上で確認してみます。
場所は住所でプロットしたのでややずれているかもしれませんが、青色の背景の医療機関があるところが旧温泉町の中心街になります。それに対し問題の町立診療所は確かに町の周辺に位置しています。場所的におそらく旧温泉町の周辺部の住民のために作られた診療所である事はわかりますし、無いよりあった方が良いのも理解できますが、医師が1人しかいないのですから、医師の負担を減らすためには集約化の検討はどうかと素直に感じます。

ところがですが、1人になる医師の勤務シフトは、

診療時間
9:00〜12:00 照来 照来 照来 照来 照来
13:30〜16:30 八田 八田 八田 八田 照来
*第一・第三火曜の午後は岸田


3つの診療所の距離はさほどではないので、冬場はともかく昼休みの間の移動はさしての負担で無いかもしれません。また診療時間も午後4時30分には終了しますから、時間外の応需がさほどでなければ、医師の負担はさほど重くないとも見れます。土日は休みですしね。また辞職された医師は去年の4月に赴任し、3月末に退職のようですから、去年の四月以前にもこのシフトで勤務されていたかもしれません。

さらに調べてみて2人体制の時の勤務に少し驚きました。まず残られる医師の方ですが、

毎週/月〜金曜日 午前8時30分〜午後5時

朝の8時30分から夕方の5時までぶち抜き外来です。さすがに「休む間もなく」みたいな忙しい日は少ないとは思いますが、昼休み抜きの8時間30分の連続診療時間の設定はなかなかのものです。労基法の問題ももちろんありますが、少々驚くシフトです。続いて辞職予定の医師の方ですが、

    月、水、金曜日 午前8時30分〜午後5時
    火曜日 午後1時〜午後5時
    木曜日 午後1時30分〜午後5時
    (午前中は浜坂病院勤務)

とりあえず月、水、金は午前8時30分から午後5時までのぶち抜き外来。火曜の午前は岸田出張診療所で午前9時から午前11時まで診療の後、戻ってきて午後1時から午後5時の診療。木曜日の午前は浜坂病院に勤務した後、午後1時30分から午後5時まで診療です。ちなみに浜坂病院の勤務とは外来で、午前8時30分から午前11時30分までです。分かり難いかもしれませんが表にしてみます。

診療時間
8:00
八田 移動 八田 浜坂 八田
9:00 岸田
10:00
11:00 移動
移動
12:00
13:00 八田
八田
14:00
15:00
16:00


すべては診療の濃度によって変わるとは言え、なかなかの負担に思えます。この負担が原因で辞職になったのか、それ以外の要因で辞職されたのかは不明ですが、こうやって見ると、1人で3つの診療所を回った方が楽そうに見えるのが不思議です。1人で3つの診療所を維持するより、どこか一つに集約した方がと思いましたが、こうやって見ると訳がわからなくなってしまいました。

単純計算ですが診療時間の一週間の合計は、

  • 2人体制


    • 残られる医師:42.5時間
    • 去られる医師:38.5時間


  • 1人体制:30.0時間
去られる医師も残られる医師も移動時間の評価が問題なのですが、実情はどうなっているのでしょうか。もう少し現地の情報が欲しいところなんですが、ssd様のところに元所長様のコメントがあります。ネットなのでどこまで信用するかは自己責任ですが、かなり信憑性があるように思えます。

    この2群(八田岸田連合軍とてらぎ)の合併はそもそもむりなこと。僻地の山の向こうとこちらを一緒にするなんてどだい無理無理。
    忘れ去られようとしている限界集落の維持に出張持ち回り診療をするというだけのことで、岩手県と一緒でしょ。
    こんな対象人口2000×2地区でも昔は患者数も多かったんです。単独黒も出せたんです。(遠い目)
    あのときにもっと集約化を打ち出していればまた何か変わることもあったのでしょう。

    そうそう、この地区の医師不足は今に始まったことではなく、10年来の問題なので、何を今更感が非常に強いですね。医者?こんなところにいなくて当たり前でしょ。

どうも地域性がよほど強いらしく、現場で所長として働いた感覚として、

    この2群(八田岸田連合軍とてらぎ)の合併はそもそもむりなこと。僻地の山の向こうとこちらを一緒にするなんてどだい無理無理。
地方政治としても集約化を打ち出せば大紛糾確実みたいな問題のようです。地方の事情は本当にディープです。