新型インフルエンザに係る保険医療機関の時間外診療等について

「今日もまたインフルエンザか」の声も出そうですが、本業の切実な問題ですから、どうか御勘弁下さい。平成21年9月15日発保医発0915第2号「新型インフルエンザに係る保険医療機関の時間外診療等について」を確認してみます。まず冒頭部の前文です。

 新型インフルエンザに係る夜間の外来診療体制の確保については、別添の事務連絡において、「夜間の外来診療体制については、救急外来を設置する医療機関だけでなく、例えば、インフルエンザ患者の診療を行っている診療所に対して診療時間の延長や、夜間の外来を輪番制で行うことを求めるなど、地域の診療所等との連携を図ること。特に、小児患者の外来診療体制については、地域の小児科を有する病院だけでなく、地域の小児科診療所等との連携確保に努める」旨の依頼がなされているところであり、各地域においてはこれを踏まえた対応がなされているものと承知している。

 今般、このような取り組みを行っている保険医療機関の初診料及び再診料の時間外加算等について、臨時的な対応として別途通知するまでの間、下記のとおり取り扱うこととしたので、その取扱いに遺漏のないよう、貴管下の保険医療機関等に対し周知徹底を図られたい。

通達内容はインフルエンザ対策の時間外診療体制整備の一環として、時間外加算の取扱いの指示を出しています。こういうところは診療所にとっても重要なところです。具体的な内容は、

  1. 都道府県、保健所設置市、特別区からの依頼を受けインフルエンザ患者に係る時間外の外来診療を行っている保険医療機関については、「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」(平成20年3月5日保医発第0305001号)別添1第1章第1部第1節A000初診料の(11)のイの規定を適用しないものとし、同アにより時間外とされる場合であれば、時間外加算を算定できるものとする。
  2. 上記1の取扱いは、再診料についても同様とする。
  3. 都道府県、保健所設置市、特別区からの依頼を受けインフルエンザ患者に係る時間外の調剤を行っている保険薬局については、「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」( 平成20年3 月5 日保医発第0 3 0 5 0 0 1号)別添3区分01調剤料の(10)のウの(ロ)の規定を適用しないものとし、同(イ)により時間外とされる場合であれば、時間外加算を算定できるものとする。

お役所文らしくいつもの様に砂を噛むような文章ですが、まず対象は、

    都道府県、保健所設置市、特別区からの依頼を受けインフルエンザ患者に係る時間外の外来診療を行っている保険医療機関
どうやら正式の「依頼」を受けている医療機関があるらしく、そこのみを対象にするとなっています。ちなみにうちの診療所は「依頼」を受けた記憶がありませんから対象外になります。依頼を受けた医療機関は、
    「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」(平成20年3月5日保医発第0305001号)別添1第1章第1部第1節A000初診料の(11)のイの規定を適用しないものとし、同アにより時間外とされる場合であれば、時間外加算を算定できるものとする。
これを読んで即座に「なるほど」と理解できる人は限られていると思います。私も何となく分かるような気もするのですが、詳細までわかるわけではありません。ただ今回の通達は親切にも、平成20年3月5日保医発第0305001号も添付されていますから助かります。まず「別添1第1章第1部第1節A000初診料の(11)のアの規定」ですが、

時間外加算

ア 各都道府県における医療機関の診療時間の実態、患者の受診上の便宜等を考慮して一定の時間以外の時間をもって時間外として取り扱うこととし、その標準は、概ね午前8時前と午後6時以降(土曜日の場合は、午前8時前と正午以降)及び休日加算の対象となる休日以外の日を終日休診日とする保険医療機関における当該休診日とする。

 ただし、午前中及び午後6時以降を診療時間とする保険医療機関等、当該標準によることが困難な保険医療機関については、その表示する診療時間以外の時間をもって時間外として取り扱うものとする。

時間外加算の規定なんですが、原則は

  • 午前8時以前
  • 午後6時以降
  • 休日加算の対象となる休日以外の日を終日休診日
ではこの時間帯であれば無条件に時間外加算が付くかと言えばそうではなく、例えば午後6時以降にも診察時間を設定している医療機関があります。そういう場合には、設定した診察時間以外で時間外加算を行なうとなっています。午後7時まで診察時間としていれば、午後7時以降が対象時間になります。さらにそれだけでは時間外加算算定の必要条件に過ぎず、十分条件として「イの規定」が設けられています。

イ アにより時間外とされる場合においても、当該保険医療機関が常態として診療応需の態勢をとり、診療時間内と同様の取扱いで診療を行っているときは、時間外の取扱いとはしない。

どういう事かといえば、医療機関は時間外患者を待ち受けている体制であったら時間外加算を算定できないのです。あくまでも診察が終了し、通常の診療体制を解除した状態から、時間外患者のためにヨッコラショと診療体制を再開する状態でないと算定できないという事です。診察時間が長引いて必要条件の時間帯に突入しても時間外加算は算定できません。

これは結構厳しくて、医師会などでよくある輪番による休日当番でも厳格と聞いています。休日当番と言っても、医師は長時間診療所に拘束されるわけですし、職員にも出勤を頼む事もあります。そこまで体制を作っているわけですから、もう少し患者を診ようと「休日当番やってます」の貼り紙を出したらアウトと聞いたことがあります。あくまでも診察終了状態から起動する手間賃であるからです。

つまり時間外加算の算定条件は

    必要条件:診察した時刻
    十分条件:診察する体制
休日夜間診療所や救急病院はどうなっているのかの疑問はあるでしょうが、これは別に例外規定が設けられ時間外加算が算定できます。説明がいつもながらくどくなりましたが、今回の通達でどう変ったかですが、「イの規定を適用しない」つまり十分条件は除外され、必要条件さえ満たせば時間外加算を算定できるとしています。これは調剤薬局も同様としています。


ここで引っかかるところは「イの規定」の除外はわかりましたが、「エの規定」と言うのがあります。

エ 時間外加算は、保険医療機関の都合(やむを得ない事情の場合を除く。)により時間外に診療が開始された場合は算定できない。

依頼された医療機関と言うのがどういう内容なのかがわかりにくいのですが、もし一般診療所にも依頼されたところがあり、院内感染予防のために時間差診療を行った場合はどうなるかです。当然と考えますが、

    やむを得ない事情の場合を除く
これに該当すると考えられ、時間外加算の算定は行なわれると思います。そこは良いのですが、医療機関の都合により時間外加算が患者負担として増える事になります。もっとも成人の場合、時間外加算は85点であり患者負担は3割として260円増えるだけですから、そんなには心配ないかもしれません。ただ依頼されるような医療機関は現在でも夜間・早朝等加算(50点)が既に算定されている可能性があります。それでも算定はあわせて135点で、一部負担の増加分は410円です。

小児科では6歳未満の乳幼児でこの特例規定が既に実施されていますが、どうしても一部で窓口トラブルが避けられません。小児科の場合はそれでも乳児医療がかなりカバーしていますから少ないのですが、成人の場合、もう少しトラブルが増えるかもしれません。その点は心配しておきます。もっとも小児科であっても心配はあり、7歳以上の患者はこの措置が適用されますから注意が必要です。

もっともうちは「依頼」を受けていませんから関係ありません。それにしても具体的に「依頼」されている医療機関はどこなんだろう・・・。