小ネタに嘆息

ほんの小ネタなんですが、日医の衰退が象徴的に表されているので取り上げてみます。

少し前に私の手許にも来たレセプトオンライン化の通達。どうせ期限が近づけばメーカーがニコニコしながら売り込みに来るだろうと適当に読んで捨てちゃいましたが、うちレベルで平成22年頃がリミットだったと記憶しています。うち的には少し早めですが、レセコンの更新時期に当たり「しゃ〜ないか」ですが、全医療機関に網羅的に行なうものですから大変だろうなぐらいは思っています。なんと言っても電子カルテは愚か、未だに手書きで手計算の診療所もしっかり残っていますから、他人事ながら心配したものです。

レプトオンライン化については日医は明確に反対であったはずです。私が医師会に入ったときにもはっきり言われました。今でもオンライン化ではありませんが、FDによる請求がありますが、あれさえも日医は反対であると聞かされています。理由はここではっきり書けませんが、非常に現実的な理由で、「なるほど」と感心した記憶があります。

そこまで反対であったのに、考えてみればほとんど何の抵抗も無く、導入が決定されたのには違和感を感じたものです。入会以来年数が経過したのでまた方針が変わったぐらいと思ってはいたのですが、反対理由が本当に現実的だっただけに「???」ぐらいは残っています。

私は医師会活動は必要最小限以下しか参加していませんので、内部情報なんて立派なものは全くに近いほど入ってこないのですが、それでもか細いルートから断片的には入手できます。そんなわずかな情報源からレセプトオンライン化の情報が手に入りました。読んではっきり言って驚きました。入手した情報を書いておきます。

レセプトオンライン請求について(日医)

日医は、平成19年4月実施の試行的オンラインのみ了承したが、厚生労働省は、日医の了解もなく、平成24年度までに段階的に実施する旨の省令・通達を出した。平成18年6月13日に参議院厚生労働委員会で附帯決議として義務要件ではなく努力目標として記載させたにも関わらず。

これがレセプトオンライン化に関して手に入れた情報のすべてです。この情報からわかることは、

  • 日医の姿勢は反対である
  • 平成18年6月13日に参議院厚生労働委員会で附帯決議で義務化を避ける決議まで獲得している
  • 今年の4月に厚生労働省は附帯決議を一顧もせずに踏み潰した
  • 踏み潰された日医は何の抵抗も出来ない
日医の力の衰え振りがあまりにもまざまざと現れています。伝説時代である武見太郎元会長時代とは180度異なり、今や厚生労働省は日医の意向を全く顧慮することなく、財務省や経済諮問会議の意向をのみを忠実に反映させる存在になっている事がよくわかります。日医が何を言おうと厚生労働省は今や気にもかけないという事の一つの証明です。

ここまで衰えた日医の厚生労働省にとっての利用価値はアリバイ作りに利用するだけです。実力的には張子の虎まで衰えていますが、世間的には強権的な圧力団体のイメージが残っていますから、厚生労働省が大きな医療政策を実施するときに日医の賛成を取り付けるのは世間的には「文句無しの決定」の印象を与えます。

ところが実際には日医が賛成しようと反対しようと、厚生労働省の思惑通り政策は断行されます。日医が賛成したものは「日医も賛成」と宣伝し、日医が反対のものは日医の意見をまったく無視して触れもしないと言う事です。簡単に言うと日医の厚生労働省への影響力は、限りなく低下したと言う事です。

かつての厚生労働省は日医の鼻息を窺いながら医療政策を行っていましたが、現在は財界による第三議院とも呼べる経済諮問会議その他の審議会の鼻息を窺って医療政策を行っていると言う事です。財界の意向が強大なのは周知のことですが、曲がりなりにも幾分は発言力が残っているのではないかと思っていた日医がこれほどとは少々驚きました。

だからかもしれませんね、最近の日医の路線は日医会員以外の医師でも首を傾げるものが増えています。別に日医の支持者ではありませんが、あそこまで厚生労働省に擦り寄ったら新規入会は愚か、現会員からも離反がおこり脱会者が出てきそうな方針を次々に打ち出しています。あれって単に日医の面子を守るためだけにやっていそうな気がします。

どういう事かといえば、反対しても無視されるだけなら、苦い政策でも賛成して、日医が医療政策の決定に影響力が残っているとのポーズを示すためのように思います。本気で反対して悉く厚生労働省に無視されたら、日医の面目丸つぶれと考えているんじゃないかと思います。かつては厚生労働省が日医の意向を察知しながら医療政策を行っていたのと正反対で、厚生労働省の意向を探りながら、それに迎合した方針を打ち出すのに腐心していると見れば、最近の日医の行動が理解できるような気がします。

日医の力はそこまで落ちたんでしょうか、堕ちたんでしょうね。日医に残っているのはかつてのイメージだけで、もうそれ以上でもそれ以下でもないような気がします。物事が終わるときには終わるようにすべての事柄が進んでいくと言われていますが、日医の衰退の凄まじさもその一つの象徴と感じます。

このエントリーを書いているのは朝ですが、気分は壮大な医療の落日を眺める黄昏気分です。日はまた昇るのでしょうか。