横浜の事件

暇人28号様が巨大掲示板経由でコメントしてくれた神奈川新聞のニュースです。神奈川新聞のサイトを見に行っても無かったのでコメントからの引用とします。

 医療過誤で執刀医ら書類送検へ/横浜市立脳血管医療センター
社会 2007/02/22  横浜市立脳血管医療センター(同市磯子区、植村研一センター長)で二〇〇三年七月、脳出血の女性患者(53)が内視鏡による頭部手術後に重度障害を負った医療過誤で、県警捜査一課と磯子署は今週中にも、業務上過失傷害の疑いで、当時の脳神経外科部長(55)、執刀医(38)ら四人を書類送検する。

 手術の様子を記録したビデオ映像などの鑑定結果や、〇六年三月に実施した同センターなどに対する家宅捜索で押収した資料の分析などから、四人の刑事責任を問えると最終的に判断し、立件に踏み切る。

 これまでの調べでは、外科部長らは同年七月二十八日午前十時五十分ごろから約三時間、同様の手術の経験がない執刀医に、患者の頭部内視鏡手術を実施させ、脳内動脈からの出血などで、手術後に左半身まひなどの重度の障害を負わせた疑いが持たれている。

 患者の夫らが〇五年三月、執刀医らを業務上過失傷害と傷害容疑で刑事告訴していた。

 同センターは院内外の指摘を受けて〇四年四月、外部有識者による調査委員会を設置。九月に同委員会は「内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さ」などを列挙し、医療過誤による事故と断定した。十月にはセンター側が家族に謝罪し、〇五年一月には関係職員を処分していた。

事件のエッセンスを取り出して見ます。

  • 53歳の女性の脳出血患者であった。
  • 横浜市立脳血管医療センターで起こった
  • 執刀医は38歳とあるので、事件当時は35歳であったと考えられる。また頭部内視鏡手術は初めてであった。
  • 手術法は頭部内視鏡手術であった。
  • 手術後に左半身まひなどの重度の障害が残った。
  • 外部有識者による調査委員会が「内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さ」などとして事故と断定した。
  • 家族は業務上過失傷害と傷害容疑で刑事告訴していた。
まず執刀医が事件当時35歳であったのなら、10年程度の経験を積んだ脳外科医となります。診療科によって感覚は変わりますから脳外科の医師のコメントが欲しいところですが、若手から中堅に進みつつある段階ぐらいと考えます。恥しいお話ですが、頭部内視鏡手術なるものがあるのにも驚きました。水頭症の手術でそういうものがあるとは知っていましたが、脳出血で使われるとは初めて知りました。内視鏡手術は他の部位で用いられる時、通常の手術より技量を要し、なおかつ適用範囲が狭いとされています。もし頭部内視鏡手術もそれに準じるなら、患者の脳出血の部位や程度はどれ程なのかはある程度推測できそうな気がします。

医学的に知りたい情報は、

  1. 頭部内視鏡手術を行なったことから推測される脳出血の部位、程度はどれほどのものか。
  2. 経験10年程度の脳外科医が初めてであっても頭部内視鏡手術を行なうことの是非。
この二つは基本情報としてまず必要かと考えます。脳外科の医師の方に情報頂ければ幸いです。

それとこの時の医療体制を知りたいところです。手術が行なわれたのは横浜市立脳血管医療センターです。正直なところ名前ぐらいしか聞いた事の無い病院ですが、名前からして脳外科の専門病院の雰囲気があります。どの診療科であってもそうですが、担当医師が熟達していない治療を行なう時には、指導医の手取り足取りの監視の下に行なわれるはずです。当然ですが担当医の技量が不十分であると判断すれば、すぐに取って代わる体制であったと考えます。そういう当たり前の事を当たり前に出来ている病院なのかどうかの情報も欲しいところです。

医学的にミスとするには上記の基本情報の上で、

  1. そもそも頭部内視鏡手術の適応で無かった。
  2. 適応ではあったが、執刀医、指導医とも経験が未熟で行なえるほどの技量が無かった。
  3. 執刀医が禁忌の誤操作を行ない、指導医の指導も間に合わなかった。
これぐらいしか私には考えられないのですが、小児科医にとって脳外科は門外漢であり、よろしく情報の提供をお願いします。