続横浜の事件

福島事件の第2回公判が行われ、ネラーの鑑「いのげ」氏が1000kmを越えて傍聴に行かれています。今朝は某巨大掲示板で速報部分だけとりあえず読みましたが、詳しくは紫色の顔の友達を助けたいのコメント欄にレポートしてくるそうです。今のぞいたところではまだ無いようですので楽しみにしておきます。

こちらはずっとマイナーな横浜の事件の続編です。マイナーなんですがもう1回ぐらいは続けても良さそうなので、情報整理しながらエントリーします。まず報道からの事件のポイントです。

  • 53歳の女性の脳出血患者であった。
  • 横浜市立脳血管医療センターで起こった
  • 執刀医は38歳とあるので、事件当時は35歳であったと考えられる。また頭部内視鏡手術は初めてであった。
  • 手術法は頭部内視鏡手術であった。
  • 手術後に左半身まひなどの重度の障害が残った。
  • 外部有識者による調査委員会が「内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さ」などとして事故と断定した。
  • 家族は業務上過失傷害と傷害容疑で刑事告訴していた。
これに追加情報として昨日望んだのが、
  1. 内視鏡手術の難易度
  2. 当該病院の診療体制
難易度については脳外科医(留学中)様からコメントを頂きました。

  1. 内視鏡手術の適応:定位脳装置や開頭脳内血腫除去術の適応に順ずると思います(40-50ml以上、被殻出血または皮質下出血)。
  2. 個人的に、内視鏡による血腫除去術の方が、開頭手術と比較して、手技として簡単と思います。だから、経験10年目で専門医の資格があるのであれば、やってもいいのではと思います。
ちなみに脳内血腫除去の手術目的は、「神経症状を改善させること」ではなく、「生命の危機を脱すること」です。
生命の維持を目的として行われるので、術後に神経症状が改善しないことは念入りに説明します。また、術後出血も一定の確率でありえます(何せ、一旦出血したわけですから)。
外部調査委員会の結果を見たいものですね。

反論があればまたコメントを寄せていただければ良いのですが、脳内視鏡手術は手技としてそんなに難しくなく、適応も開頭手術に準じるほどのものがあるそうです。後は患者の出血部位、程度によるのでしょうが、経験10年目の専門医であれば選択しても良い手技としています。専門外なので「そんなものか」ぐらいしか分かりませんが、この情報から経験10年目の医師が脳内視鏡手術を選択してもさほどの問題とはされないと考えられます。

それとコメントにはもう一つ大事な事が書かれています。

    脳内血腫除去の手術目的は、「神経症状を改善させること」ではなく、「生命の危機を脱すること」です。
これは大事な事で、そもそも脳出血を起した時点で出血部位の脳の機能は大きなダメージを受けているわけであり、血腫を除去したからと言って「ハイ、元通り」とはなかなかならないと言う事です。放置すれば死亡するから「死なないように」血腫を除去するのが真の目的なのです。もちろん救命させるだけでなく、その後の機能回復が良好であって欲しいと言うのは誰しも願う事であり、医師も当然そうなのですが、脳出血と言う重大な病変ではまず生命を救うことが第一義の命題である基本を踏まえておく必要があります。

次に事件の舞台となった横浜市立脳血管医療センターの内情です。これについてはstarpoint様から有力な情報を頂きました。参照にした情報は、脳卒中から助かる会の人事委員会の概略からです。この人事委員会がどこの人事委員会か文中からは確定できないのですが、おそらく横浜市の人事委員会のものと考えています。そこでは脳出血の治療の両輪とも言うべき脳神経外科と脳神経内科の間に相当な軋轢があった事をうかがわせる内容となっています。参照にさせて頂いた情報は脳神経内科側の情報に偏っていますから、割り引いて考える必要はありますが、外科と内科が犬猿の仲であったことだけはよくわかります。

いちおうこの情報に基づく脳神経内科側の主張をまとめると、

  • 脳神経外科は腕が悪い


    1. 高血圧や発熱、尿量が少なさ等に対して、原因も調べず機械的に処置し、指摘をしても間違った指示を出し続けた。
    2. 検査や看護体制が整っているのに、金曜の午後に入院した患者は月曜になってから手術するなど考えられないようなことをやっていた。
    3. くも膜下出血に対する脳血管内コイル塞栓術の成績は極めて悪く、12例中7例が後遺症(うち死亡2例)。実に60%以上。血管内治療学会に報告されている合併症発症率は4.2%程度である。
    4. 術後の症例研究会、検討会をやるよう神経内科から何度も要請したが、2002年4月に1回やっただけ。


  • 亀田さんの事件(おそらくこの事件)


    1. 内視鏡を使ったと聞いて驚いた。開頭血腫除去手術を行えば、普通そこまでは悪くならない。
    2. センターで初めての内視鏡手術だったにもかかわらず、倫理委員会にかけていない。
    3. クリアシースの内視鏡手術は初めてだった。学会の研修も受けず、実物(動物など)を使っての訓練もやっていない。


  • 隠蔽へ(おそらく外部調査委員会の報告に至るまでのゴタゴタ)


    1. 畑先生はインシデントレポ一トが出された直後に調査を始めようとしたが、センター長は、「藤井に任せろ。お手並み拝見」と止められ、調査が遅れた。
    2. 3月末にセンター長から聞いた内容の書類を配った。そこには「小委員会が意見を聞いた外部の脳外科専門医が”青戸病院と同じ”と書いてきたので、衛生局が”マズイ。何があっても削れ”と言った。」と書いてあった。
    3. 5月、衛生局が、小委員会の外部の有識者2人の意見が分かれたので、外部調査委員会を立ち上げたと記者発表したことを新聞記事で知った。
    4. 9月、外部調査委員会の報告書が出る。「総合的に見て医療過誤と言わざるを得ない。インフォームドコンセントが足りなかった。院内での対立が発表を遅らせた。主治医は家族に説明していた(ウソ)。」というもの。センターの責任にすり替えられた。


  • 米国籍男性の血管内治療(これは略します)
  • 看護部について


    1. 脳卒中の専門知識を持つ看護師が少なく、毎日の教育が大変だった。
    2. 言葉使いや環境整備(ベッドを調える等〉がひどかった。
    3. 松岡先生を非難する文書が院内に出回ったが、衛生局から頼まれて看護部がねつ造した文書だった。


  • 以下略
いやはや凄い状態です。迫害されたと感じている脳神経内科側の報告なので、正義の脳神経内科、悪の脳神経外科及びセンターという構図です。これもまた真相がどうであるかが問題ですが、脳神経外科側の情報が無いので公平な判断は出来ません。ただ外部調査委員会の調査報告を民事訴訟において否定している経過の一端だけを窺う事はできます。調査報告を蹴って民事訴訟に対応している不思議さをYUNYUN様が御指摘され、私も確かに不可解と思いましたが、この人事委員会の証言を読めば、横浜市は「問題なし」が基本姿勢のようです。

調査報告の内容はほんの一端しか示されていませんが、

となっており、こんな短い言葉ではどこが力点なのかわからないのですが、個人的にはインフォームドコンセントが不十分である事が重そうな気がします。やや似たようなケースで防衛医大コイル塞栓術訴訟のインフォームドコンセントがありますが、強いて言えばそれに近い内容のような気がします。神経内科側の証言でもその程度しか表現されていませんから、報道にあるような未熟な手技に力点を置いた内容では無い可能性も考えられます。

昨日頂いた情報をできるだけまとめてみましたが、焦点は外部委員会の調査報告書になってきそうです。これもstarpoint様からの情報ですが、

時期から見てこれでしょうか。

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/joho/kokai/koh2.html
横浜市立脳血管医療センター問題に関する調査委員会 報告書2004.12.21行政運営調整局 職務公正調査課671-2111 センターで閲覧

市民情報センター  http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/joho/pamph/guide2.html

近くの方が見て来るって手はあるのかな。>どなたか

横浜は遠いな〜。