議員へのアプローチ

医師の結集組織論は定期的に出しているのですが、まだまだ関心は高くないようですね。「改善案を実現させる具体的なプロセス」を考えると小異を捨てて大同を行い、集団として意思表示を行なうのはいずれ必要なんですが、そこのステージまで盛り上がるにはまだ時期を待つ必要があるようです。

そんな中で昨日のコメントの中で一般人様から頂いた物が目を惹きました。

小松さんの医療崩壊でも持って、地元の政治家に会いに行く。

コレ群れなくてもできること。本当に政治に何かを求めてやろうとしてる人は、やってること。
なんかね、ネットの医師って口ばっかりな気がします。だから、ほんとに団結して勤務医の団体作るとかも、夢だなって思います。
ネットで毒吐いてそれで終わり。パソコンの前以外では活動しない。パソコンの前では自分と同じ考えの人がいて、なんか傷舐めあえる。

ネット上では「やる気」あるんですよね。それは感じます。
でも、現実世界では「やる気」ないんだろうな。
「政治家に会ってきました。表向きにはやる気になってくれましたが、実際はどうかわかりません」ぐらい言う人がいてもいいのに誰もいないんだもん。笑ってしまう。
まあだから、政治家のブログに片っ端からTB打って気付いてもらえばいいんじゃないでしょうか。

かなり辛辣な表現があり賛否両論があったようですが、提案の趣旨としては秀逸なものと思います。「改善案を実現させる具体的なプロセス」の到達点の一つが結集組織論になるのですが、現状では実現困難なのは認めざるを得ません。ではそれが出来ない限りこれ以上の行動を起せないのも悔しいところがありますから、現実的な実行可能なアクションを考える上で参考になります。

私も含めてですが、医療危機に対する医師の行動はネット比重が相当高いです。一方で現実の行動は非常に少ないものになっています。これについての批判はある程度甘んじて受けなければならないでしょう。とは言え医師は医療をやっています。とくに勤務医は非常に長い拘束時間を耐えて黙々と眼前の医療に従事しています。この診療時間に費やす時間の長さゆえに医師同士の幅広い連携は時間的に強い制約がありました。

その強い制約を乗り越える情報ツールがネットと言えます。ネットを手に入れることにより大袈裟に言えば日本中の同じ思いを抱いている医師との連携が初めて可能になったと考えています。さらにその連携の幅、量が飛躍的に増大したのは福島事件が契機であり、福島以前と以後では様相を一変したと言っても良いでしょう。ですので医師がネット上とは言え広域に連携し始めてからまだ1年足らずといえます。

ネットで情報交換をした結果、個々の医師が日頃から感じていた不満や矛盾は自分だけが例外的に感じていたものではなく、多くの医師が同じ思いを抱いていた事を知りました。それ故に一斉に声を上げ始めた段階とも言えます。声を上げ始めてはいるのですが、連携はあくまでもネット上の連携です。ネットは匿名世界が原則ですので、共感して悲憤慷慨してもしょせんはPCの前です。また匿名であるが故にかなりの痛烈な評論も書けるでしょうが、医師の社会的立場からこれを実名で堂々と公表して意見表明をするのは躊躇しても不思議はありません。

「改善案を実現させる具体的なプロセス」も一遍に理想的な行動を起す手法を考えるのではなく、今の現実、身の丈にあった手法を摸索する方が現実的です。今の現実とは医師の連携は未だネット上から抜け出せる段階では無いと言う事です。ネットを抜け出して現実世界で行動を起せる段階で無いという事を十分考慮して起せる行動を考えるべきだと言う事です。

そういう点で一般人様の提案は非常に現実的です。まず医療を変えるのは誰かと言う視点をキッチリ据えています。これは誰もが知ってはいるのですが、ついつい見逃してしまう点です。医療を変えられるのは国だけだということです。そして国の医療を変えることを出来る人間は国会議員であるということです。国会議員が国会で論議し議決してくれない事には何も変わらないと言う事です。単純ですがこれは考え方の基本でしょう。

世論を喚起するのも、目的は喚起された世論が国会議員を動かすのが目的とも言い換えられます。すべてはそのために行なっていると単純化して考えても大筋は間違っていません。私も含めてネット医師は世論を喚起する事にまず主眼を置いています。これはこれで極めて重要な作業であり、実りはまだ少ないですが、地道に行なっていく以外は方法はありません。

ここでもう一つネットで参集しているという制約の上で行動できるものとして、ネット上で国会議員にアプローチするのは現実的に試みるべき手法と考えます。ネットの匿名の制約も守られますし、空き時間を見つけていつでも出来ることです。一般人様の直接陳情に行くという行動の提案までは躊躇われても、ネット上で書き込みをするのは難しい行動ではないと考えられます。

その延長線上で考えたのですが、議員のBBSやブログに個々の医師がアプローチするのも有用でしょうが、ネットの特性を生かして、ネット上の医師団体を作って、そこからの申し入れなり書き込みのスタイルにするのもより効果的なような気がします。議員の性質として個人よりも団体からの声のほうが重視する傾向があると考えるからです。

こんな事を書くと去年から実を結んでいない新組織論の焼き直しになってしまいますが、私が考えているのは少し違います。議員へのアプローチ活動をする医師団体は必ずしも実体は不要なんです。本当の新組織であるならオフィスを備え、常駐の事務員を雇わなければなりませんが、この医師団体はそういう意味の実体は不要です。必要なのはもっともらしい名前だけなんです。

最低限の実体は医師団体HPです。そこはindexページを読めば医師による会員制であり、会員医師しか閲覧できない形態になっています。中には非会員では閲覧できないBBSも備えられており、なにか活発に行動しているんじゃないかと思わせるものがあれば十分です。もちろん実際に会員を募ってBBSで論議しても構いませんが、HPを作ることでそういう会がネット上で確認できることがまず重要です。

ネット上での仮想の実体を作り上げれば、議員にアプローチするときにそこの会員の意見としてコメントするのです。実体は調査しようがありませんから、ある規模の団体であるとのイメージさえ与えれば、個人の医師が匿名でコメントするよりよほどインパクトがあるような気がします。しょせんはネット上の団体ですから、誰でも自由にその名を名乗ることが出来ます。より理想的には会員登録ぐらいは実体としてあったほうが良いでしょうが、実体が無くとも「ありそう」と相手が思っただけで発言の重みが変わってきます。

一種の詐欺みたいなものですが、ちゃんと会員募集さえしておけば問題では少ないでしょう。瓢箪から駒でこれを契機にネット上の団体に発展することも十分ありえます。これぐらいの活動なら現時点のネット医師でも十分可能ではないかと思うのですが・・・。