仮想現実の現実化

医療問題の終着駅は国が医療政策を変えるになります。現在行なわれている医療体制がどれだけの無理矛盾に満ち溢れているかは当ブログだけではなく、幾多の医療系ブログや医療系BBSで、とくに福島事件以来飽くことなく盛んに論じられています。そういう状況でネット医師が求められている課題は、論じて煮詰められた議論を現実世界にどう反映させるかです。この問題に目を向けないと「マスターベーション」の批判を浴びてしまいます。

ネットで医療問題を論じているネット医師の意識は幾つかに分かれます。

  1. 静観派


    • 焼野原になって本当に国民が困るまで放置すれば良い派
    • 焼野原は本音では困るがあきらめ派


  2. 行動派


    • 今すぐにでも真剣に崩壊をくい止めたい派
    • 崩壊は必然だろうがそれでもなんとかしたい派
静観派は某巨大掲示板の基本的な論調です。m3.comになると静観派と行動派があい乱れます。医療系ブログでは行動派が主流です。仮想現実の議論を現実化するには、まずこういうネット医師の意識の違いを考えておく必要があります。ネット医師といえども決して一枚岩では無いと言う事です。静観派と行動派に大別しましたが、もちろんこの中間派もいるわけですし、意識のもち方は流動的な側面があります。

また行動派の最右翼の医師でも、実名を曝してまで積極的に行動しようと言う医師はごく少数派です。医師という職業柄、そこまでの行動は医師としての職業生命に影響を受ける危惧が強いからです。開業医でもそうでしょうし、勤務医なら尚更です。自分の生活を脅かしてまでの行動は躊躇されて当然です。私も他人の事は言えません。

仮想現実を現実化するためには、仮想現実の議論を現実社会に訴えるための仲介方法が必要です。簡単に言えば現実社会にアピールする機関です。ネット社会では個人の意見が平等に比較され、評価されるのは意見の質だけですが、現実社会では意見の質も重視されますが、それと同じぐらい「誰が言ったか」が重視されますし、何人が賛同しているかも重視されます。ここが仮想社会と現実社会の大きな違いです。

医療危機の目に見える進行とともに静観派の最右翼の医師はともかく、それ以外のネット医師の中に「なんかせなあかん」の意識は徐々には芽生えていると感じています。考える事は誰しも同じで、医師が感じている危機の実相を広く訴えて再生への道筋はつけられないかと言う意識です。そのためにはバラバラで行動しても得られる成果は乏しく余りにも無力であるので、有志の医師だけでも団結して行動しようと言う気運です。

とくに福島の時にある程度の成果を見せたので容易であるとの感触があるのかもしれません。ただ私が考えるに福島の時は幾つもの好条件が重なっての稀有の成功であり、いつでもネット医師は団結できると言う前例ではなく、むしろ例外的な事象と考える方が良いような気がします。例外であった証左に以後のネット医師団結の試みは線香花火ほども燃えず消えうせています。ネット医師とは言え相当な契機が無いと実名を曝しての行動しないというのが現在でも大前提です。

現実的なネット医師の団結法としては、ネットの匿名性を残しての方法を考えなければなりません。ネット医会の存在位置は、仮想現実と現実の谷間に存在する架け橋的な性格で無いと成立しないと考えています。ある意味ヌエのようなものですが、それぐらいのもので無いとネット医師は参集しないような気がします。あまりにも現実世界に寄り過ぎた団体ならば、参加への敷居が高すぎてネット医師は敬遠するだろうと言う事です。

そんな仮想世界の団体では現実社会に影響力は無いとの批判もあるかもしれませんが、考えようでしょうが案外捨てたものではありません。えらく古いエントリーなんですが去年の5月に考えてみれば怖いを書いた事があります。一部には無抵抗主義の逃散礼賛と受け取られたようですが、今でも医療危機の最前線の勤務医の意見をまとめる団体はありません。とくに今春に予想通り広範囲に医療荒廃、医療崩壊が広がればやっと社会問題化する可能性があります。

社会問題化すれば参議院選挙が夏にありますから、ポーズであってもこれへの取り組み姿勢を見せなければなりません。また医師の意見を無視したトンデモ解決案でお茶を濁らされるかもしれませんが、勤務医の代表的な意見に耳を貸そうとする政治家が出てくる期待も一方であります。見渡しても公式の団体が無いわけですから、仮想であっても一定規模の団体があれば、そこの意見を聞きに行かざるを得なくなります。

現実社会の勤務医団体があればネット上の仮想団体など一顧もされませんが、現実には無いのですからあれば相当な存在感になるんじゃないでしょうか。またネット上であるという特性から、運動のやり方によっては実体以上に強大な団体と認識してくれる可能性もあります。

そういう観点からネット上の新団体に求められるもは、

  1. 参加ハードルは可能な限り低くして数を集める事が重要。


      政治的に一番単純に評価されるのは数だからです。


  2. 接触があったときの代表者の発掘が必要。


      政治からのコンタクトがあった時にわたりあえる人材がどうしても必要です。他の参加会員は匿名参加で数のうちだけで問題ないのですが、この人物が現実社会の窓口になります。ここは大きな問題になります。座位様から「いのげ」氏担ぎ出し論がありましたし、最近この問題に積極的に取り組まれていると聞く本田先生を担げるのなら担ぐのも一法です。もっとも現実世界への代表選出は集まった数を背景に依頼すると言う手法もあり、スタート時には棚上げしても良いかと思います。


  3. 政治家に名を知らしておく活動は必要。


      政治家が接触するにも知らなければコンタクトしてきません。そのため団体名でメイルなどの周知活動は必要です。


  4. 理論武装をしておく。


      会の内部で固めるのが理想論ですが、外部のブログやBBSでやっているものを情報収集しても構いません。実際の現実社会で行動するのは代表ですから、代表の理論さえ会員が把握しておくだけでも十分かと思います。
この団体のおもしろいところは、政治家が意見を聞きに来ても要望を伝えるだけにしかなりません。実体は仮想空間ですから、代表が巧妙に言いくるめられても団体の構成員の活動を縛れないのです。では代表はお飾りかと言えばそうではありません。代表は仮想の医師集団を背景に持っているのですから、その発言は重みを増します。代表は内情から自分の裁量で妥協は不可能な分だけ、超強面交渉となるわけです。なんか旧ソ連とか北朝鮮との交渉みたいになりますけどね。

名前だけでも数千人単位で結集すれば相当なものだとは思いますし、この程度の参加条件であればネット医師のかなりの部分を取り込める可能性はあります。静観派からは冷笑されるかもしれませんが、焼野原状態に突進しても、その最前線の勤務医を代表するまとまった意見がまったく出ないのは、この先の戦略からすると面白く無いとは思うのですが。