焼野原後を考える 〜天の時は〜

まず11/10のエントリーへのコメントが入りにくくなっております、原因は不明です。幾つか頂いておりますが、コメント欄に反映されず申し訳ありません。前にもそんな事がありご迷惑をおかけしましたが、こればかりは「はてな」のシステム上の問題であり、どうかご了承の程をお願いします。

ところで今続けているシリーズですが、どうにも最初に考えていたシナリオ通りに話が進まず、そのため看板に偽りありの状態が続き、厳しいご評価も頂いていますので、構想していた粗筋を大急ぎで披露にして幕引きにしたいと思います。

医療への風当たりを変えるためには、何か変化が必要です。変化は医療が国が管轄するものですから、国を動かす勢力である政治に変化が必要です。政治に変化をもたらすには国政選挙の結果が一番効果的であり、最も近い国政選挙は来夏の参議院選挙です。ここで医療が選挙の争点の一つに浮上して欲しいと言うのがまず前提です。

現代の医療の抱えている問題点は多岐に渡りますが、その中で現在も切実な問題であり、たとえ医療が焼野原になって再建されても、整備が切に求められるものとして、勤務医の労働環境の整備があります。これに対する要求や運動は医師個人であっても可能です。実現のためのストライキは現実的には難しいですが、要求のための交渉は可能と考えます。

根拠はちゃんと厚生労働省通達が立派に存在します。平成14年3月19日付け基発第0319007号「医療機関における 休日及び夜間勤務の適正化について」でその適用を明確に通達しています。

  1. 宿日直勤務の趣旨
      宿日直勤務とは、仕事の終了から翌日の仕事の開始までの時間や休日について、原則として通常の労働は行わず、労働者を事業場で待機させ、電話の対応、火災等の予防のための巡視、非常事態発生時の連絡等に当たらせるものです。したがって、所定時間外や休日の勤務であっても、本来の業務の延長と考えられるような業務を処理することは、宿日直勤務と呼んでいても労働基準法(以下「法」という)上の宿日直勤務として取り扱うことはできません。
  2. 宿日直勤務の許可基準として定められている事項の概要
      上記1.のような宿日直勤務の趣旨に沿って、労働基準法上宿日直勤務の許可を行うに当たって、許可基準を定めていますが、医療機関に係る許可基準として定められている事項の概要は次の通りです。
      1. 勤務の態様
          常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみを認めるものであり、病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温等の特殊な措置を要しない軽度の、又は短時間の業務を行うことを目的とするものに限ること。したがって、原則として、通常の労働の継続は認められないが、救急医療等を行うことが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分とりうるものであれば差し支えないこと。 なお、救急医療等の通常の労働を行った場合、下記3.のとおり、法第37条に基づく割増賃金を支払う必要があること。
      2. 睡眠時間の確保等
          宿直勤務については、相当の睡眠設備を設置しなければならないこと。また、夜間に充分な睡眠時間が確保されなければならないこと。
      3. 宿日直の回数
          宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。
      4. 宿日直勤務手当
        • 宿日直勤務手当は、職種毎に、宿日直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1を下らないこと。
        • 宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合労働実態が労働法に抵触することから、宿日直勤務で対応することはできません。
          宿日直勤務の許可を取り消されることになりますので、交代制を導入するなど業務執行体制を見直す必要があります。

 この通達の遵守を求めての要求運動を、来夏の参議院選挙にむけて全国的に展開できないかと考えています。医師の要求は世論の反発を招きやすいのですが、この通達と実際の労働環境の乖離を訴えれば、必ずしも反発は受けない可能性はあるんじゃないかと考えています。この通達による勤務環境の実現は勤務医なら誰しも望むものでしょうし、本来なら医師がもっと厳しい条件で働きたいと言っても、それを許してはならない通達と考えるからです。

それと現在もそうですし、たとえ焼野原になっても必要な物に勤務医の団体があります。開業医と勤務医が分断するのは本来好ましくないのですが、日医への勤務医のアレルギーは相当ですから、現在ほとんど未組織の勤務医が結集する団体の結成がまず望まれます。新組織結成の気運だけは醸成されつつありますが、なかなか実を結びそうにありません。何か発火点が必要です。

医師は独立心旺盛な職種です。大同につくよりも小異を立てることに執着すると言えば言い過ぎかもしれませんが、なかなか団結し難い性質があります。幅広く結集を呼びかけるためには、どうしても最大公約数的な要望をまとめるスローガンしかできません。ただ結集のためにはそんな温いスローガンでは熱気が高まりません。もっと現実的で先鋭的なスローガンでないと「オレも参加する」になりにくいと考えています。

「当直のための通達を実現する運動」なら、ほとんどの勤務医の利害関係は一致するのではないかと考えます。現実的ですし、法的根拠も明快です。この運動をサポートする組織として結集を呼びかければ、結集のための発火点と言うか触媒になれる可能性は十分にあります。

私の過去ログを読まれた奇特な方なら分かってくれる人もいるかもしれませんが、私の本音は医療が焼野原に向かう暗い予想を抱きながらも、なんとか踏みとどまって今の状態からの再生を願っています。ただし静観しているだけなら、事態はどう考えても悪化の一途です。そのため最悪の予想である焼野原もにらみながら、現実的な対処法を摸索しています。

たいした対処法ではないのですが、変化を求めるために当面の目標を来夏の参議院選挙と考えます。そこで医療問題を政治問題にするために医師側から「当直のための通達を実現する運動」を起こすのは悪い策でないと考えています。もう一つの狙いは、この運動をサポートするための組織の自然発生を期待し、この組織が今後の勤務医の労働環境改善のための中核組織になってくれる事を期待することです。

とらぬ狸の皮算用の的な希望的観測に満ち溢れた提案ですが、これなら医師が自らの意志で出来る範疇で実行可能な範囲で無いかと考えます。そんな面倒くさい事をするより単純に逃散と言う意見もあるでしょうが、できたら逃散したくない医師も数多くいると思います。逃散したくなくとも激務の上乗せのみが積み重なるのが実情ですから、この程度のアクションは起こしても無謀な企てではないと思ってはいるのですが、天の時は未だ至らずでしょうか。本当は参議院選挙ではなくて、衆議院選挙が理想的なんですけどね。

あ〜あ、それにしてもこのネタでもう少し日数を稼げる予定でしたから、また明日からの新ネタを考えなくてはなりません。そっちの方も頭が痛い、う〜ん、う〜ん。