親族確認の方法は

宇和島の事件です。構図は単純で腎移植が行なわれた時に、提供者が親族でなく、さらに金銭授受が行われていたと言うものです。言ったら悪いですが、それぐらいの事は裏でそれなりにあるんだろうな〜ってところです。もちろん正当化しようというのではなく、移植希望者の切実な願いとその人数に対し、移植に提供される腎臓の数が極端に少ない現状からです。

もちろん犯罪なので摘発されて然るべしなんですが、ここで親族確認が出来なかった病院サイドが「怠慢」と叩かれています。臓器移植法では生体腎移植が出来るのは血族6親等、姻族3親等だったはずです。昔より家族の数は少なくなったとは言え相当な広がりです。私の家は親の代から兄弟が二人ですから親戚は少ないのですが、6親等と言えば再従姉妹まで入ります。再従姉妹と言われても顔も名前も知らないのですが、その親族関係を証明するにはどうしたら良いのでしょうか。

戸籍謄本という事になるのでしょうが、たしかあれは結婚すると戸籍が分かれ、私の戸籍謄本で子供との親族関係は分かりますが父との親族関係は分かりません。父と私の親族関係を証明するには父の戸籍謄本が必要です。そうなれば再従姉妹の親族関係を証明するには父の戸籍謄本、祖父の戸籍謄本、曽祖父の戸籍謄本、大叔父の戸籍謄本、さらに大叔父の子供(何と呼ぶか分かりません)の戸籍謄本の計5通がとりあえず必要になります。

これで書類上で親族関係が証明されるわけですが、書類上で証明された人物が本人かどうかの証明が次に必要になります。日本では個人の身分証明書があるわけではなく、通常よく用いられるものとして運転免許証があります。免許所有率は高いですが、持っていない人もいます。そうなれば次善として用いられるものとして健康保険証となります。運転免許証は写真や住所、本籍地まで記載されていますが、保険証となると写真も無く本籍地の記載もありません。単に所持しているからという理由が本人証明となります。ここで赤の他人が保険証を持って「私が再従姉妹である」と主張されたらこれを覆すのは容易ではありません。

戸籍謄本を集めて回るだけでも場合によっては相当大変そうですが、それを病院がしてなかった事を怠慢は言いすぎでしょう。臓器移植法でも医療機関に本人確認義務は無く、患者からの自己申請をある程度信用せざるを得ません。また戸籍上のつながりが無くとも親族であるという場合もあります。例えは悪いですが、外国で恋に落ちて子供が出来たものの、戸籍には入っていないというケースもありえます。もっと言えば姻族3親等ですから偽装国際結婚で親族関係を作る事もありえます。相手は外国人ですから、「この人は3親等以内の親戚だ」と言われれば確認するのは容易ではありません。

例のごとく確認を怠ったとして医療機関を叩いて喜んでいるマスコミが多いようですが、親族証明はどう考えても患者がするべきことであり、それを法で謳っていないのは法の不備と考える方が妥当かと思います。それを医療機関の怠慢であるとするのは筋違いのような気がしてなりません。そんな捜査まがいの事は医療機関では不可能だという事です。

今回の事件で医療機関はどう考えても単なる被害者です。法律用語には詳しくありませんが、いわゆる善意の第3者であり、騙された医療機関が「騙された事を怠慢だ」と断じるマスコミ報道に違和感を感じてなりません。