これは「おごり」かな

強度偽装マンション関連の発言で、武部幹事長の発言が問題となっています。内容は

    「悪者捜しに終始すると、マンション業界はつぶれ、景気がおかしくなる」
でほぼ間違いないようです。サラッと読んでもなんとなく引っかかる文章ですが、よく読むと背筋が寒くなる事をここまで堂々と発言したものだと驚きを通り越える思いです。

強度偽装マンション事件は建築界の信用を根こそぎ揺らすほどの大事件です。問題の本質は姉歯設計事務所イーホームズが引き起こした特異例とは誰も感じておらず、他の設計事務所や審査機関も似たり寄ったりの事を「きっと」やっていると誰しも不安をもっていることです。信用が揺らいだと言っても、日本中の建築を中止するわけにも行かないし、外国の設計事務所工務店に頼むわけにもいかないので、なんとかして信用回復を行なわなければなりません。

信用回復の第一歩は今回の事件のカラクリの全貌、業界全体にはびこっている「エエ加減さ」の洗い出し、それを明らかにした上で、今後に再発を起こす事のないようにする新たなチェック機構の設置が必要である事は、誰が考えても自明の事です。少なくとも現在のシステムがどれだけ穴だらけであることだけは余りにも明らかなので、早急に対処する必要があります。国民の生命、財産に直結する身近な事なので、どれだけ厳しくやっても業界関係者以外から苦情が出るとは思えません。

ところが武部幹事長の発言の要旨は、「事件はなるべく矮小化して終息させるのが最善であると」と断言して憚りがありません。業界の不正構造の徹底究明なんて事になると「景気の足をひっぱる」とも明言しています。景気の回復は政治的には重要な事です。しかし景気回復の葵の印籠の前では、強度偽装マンション如きは放置しておいて構わないし、今後もハリボテのようなマンション群が乱造されても問題なしとする姿勢は大問題と言わざるを得ないでしょう。それも強権を振るえる与党幹事長の要職にあるものの発言であるだけに驚愕します。

この幹事長は自らのスタンスが業界よりである事を隠そうともしないことで有名です。BSE騒ぎの時にも直接の監督官庁である農林水産大臣の席にありましたが、「全頭検査なんて不要だ」、「BSEに感染するのは宝くじに当たるより可能性は低い」としばしば公言し、大顰蹙を買った経歴があります。今回もまた同じようなスタンスからの発言で、どうやらこの幹事長は食肉、畜産業界だけではなく、建築業界にもテンコモリの恩を売りつけられているようです。

たしかあの幹事長はBSE騒ぎの時には牛肉をパクパク食べるパフォーマンスをやったはずです。であるならば今度は強度偽装マンションに一族郎党で住み込んで、「住んでいても安全だし快適だ」のパフォーマンスをなぜやらないのでしょうね。いずれにしても与党にしろ政府にしろ今回の事件に対する基本姿勢だけははっきり見せました。見せたからには300議席の力でそう決着させてしまうのでしょうか。