これじゃスケープゴートでは・・・

何回かBlogに取り上げている医療費削減ですが、まず患者自己負担の大幅増は不可避となっています。これは値段が上がれば客が減るという経済原則と、公費負担率が下がれば国が出費する医療費が減ると言う理屈です。これについてはもう何回も書いたので今日はやめておきます。

医者の技術料であり、収入のすべての源泉である診療報酬も大幅なマイナスになることも確定的となりました。診療報酬改定については医師会が3%プラス、厚生労働省が2〜3%マイナス、経済諮問会議が5%マイナスの主張でしたが、医師会の意見は相手にもされず、厚生労働省と経済諮問会議の案の中間である4%マイナスで決着しそうだということです。医師会の力も地に落ちたものだと思います。

診療報酬という言葉の語感は医者の給料と言う響きはありますが、そうではなく定価表のようなものだとご理解ください。給与であれば4%マイナスは痛いですが、なんとか耐えられる範囲でしょうが、定価が4%マイナスとなれば総売上が4%マイナスとなります。4%マイナスであっても薄利多売でカバーするとか、人件費を始めとする生産コストの削減で補うのなら問題は少ないでしょうが、医療では人件費もその他経費も容易に4%も削減できる代物ではありません。

4%マイナスになった分をまさか従業員の給料にじかに反映させるわけには行きません。薬品等の仕入れ値を値切るのも事実上不可能です。どこにかかってくるかと言えば経営者の収入です。「医者は儲けているからそれぐらい」と言われそうですが、従業員の給与が変わらず、その他の経費も変わらないのなら、経営者の収入減は経営状態にもよりますが、ごく粗い試算で2割から3割、半減なんてところも出るかもしれません。アップアップのところでは根こそぎなくなる可能性もあります。さらに減った分を営業努力で増やそうにも、客(患者)もまた政策的に減らそうとしているのは、受診抑制という言葉から明らかで、客も減る、単価も下がるのダブルパンチでは、先ほどの粗い試算よりもっともっと収入が減るのは確実です。

それにしても診療報酬を減らすのにはそれなりの理屈がいるのでしょうが、「患者負担の引き上げが固まったことから、大幅な診療報酬引き下げがなければ国民の理解を得られないとの判断もある。」はかなり凄いものがあります。誤解されるのを恐れず書きますが、いったい患者負担の増加と診療報酬削減にどんな関連性があるというのでしょうか。「患者の負担は増えて不満もあるだろうが、医者の収入も減らしてやったから我慢せい」という理屈と言う事でしょうか。

医療費削減による負担増は患者一人一人にずっしりとかかります。当然不満が出ます。そのはけ口をすべて医者の収入に転嫁しようと言う政策にしか見えません。医療費への不満は医者の収益を下げさえすれば全員が納得しハッピーになるとしか思えません。様々な意見はあるでしょうが、誰も医療が滅んで欲しくないはずです。滅ぶどころかもし病気になったときには、高い水準の医療を平等に受けたいと考えているはずです。ところが収入を減らしすぎれば、医療機関はサバイバルするだけで精一杯となり、必要な出費である安全性確保のための出費や、医療機器の更新充実、患者のアメニティ向上のための費用はばっさり削られます。

とまあ血相変えてBlogに書きなぐっても何も変わらないでしょうが・・・。