ツーリング日和20(第32話)突っ込んだ話

 そこから瞬さんの話になったんだけど、次のツーリングを悩んでるって相談したんだ。次は武田尾ツーリングなんだけど、瞬さんは泊りにするって言うのよ。この話を聞いた頃は、瞬さんの気持ちがライクだと見切ったつもりだったからホイホイ受けたのだけど、サヤカの話を聞いてラブの可能性もあるんじゃないかって思い始めてるんだ。

「あのね、イイ歳した女と男の温泉旅行だよ。そんなものラブ以外にあるわけない」

 そうなるんだよな。問題はそのラブの持つ意味だ。男ならズバリ突っ込みたい女で良いはずだ。突っ込みたいからラブになり、ラブの目的は突っ込むことだ。だってだよ、突っ込みたくない女にどうやってラブ出来るんだよ。

 だったら女のラブはどうかだ。男の逆だから突っ込まれたいになるかと言われたら男ほど単純じゃない。とくに経験が少ない女、処女なんかなおさらだろう。とはいえ突っ込まれたくないとも言えない。結果として突っ込まれてるからね。あれはラブのある男なら突っ込ませても良いぐらいだろう。この辺は経験の差が大きいから、

「マナミなら、どうか突っ込んで下さいよね」

 そこまで言うか。マナミだってためらいとか、恥じらいはあるんだぞ、それもまあ良い。ラブすれば男は突っ込むし、女は突っ込まれるのは間違いないからな。その点はバツイチのアラフォーだから当然ぐらいに思ってるけど、次なる問題は突っ込まれた後だ。

 ここでもラブの意味が変わってくる。高校生ぐらいなら、とくに男子は突っ込んだ後のことは何も考えていないで良いだろう。せいぜいまた突っ込みたいぐらいだ。この辺は女子も大差ないかもしれない。

 だが大人になれば変わってくる。何が変わるってか、そんなもの結婚だ。そこまで視野に入れてのラブなのかそうでないかで意味が変わってくる。そっちのラブであれば終着駅はズバリ結婚だ。

 もう一つは性欲解消のためのラブだ。やりたいぐらいのラブはあるけど、あくまでもやりたいだけで、こっちの終着駅はセフレぐらいだ。楽しくお付き合いして、夜はベッドで燃え上がる関係ぐらいかな。

「そんなもの答えは簡単よ。マナミ相手にセフレはありえない」

 えらい断言するな。

「当たり前じゃない。セフレにマナミを選ぶはずないじゃないの」

 どういう意味だよ?

「誰がセフレにブサイクチビのアラフォーのバツイチなんか選ぶものか」

 自覚はあるけどサヤカに言われると腹が立つ。釘バットで滅多打ちにしてやろうか。

「あのね、セフレにしたいのなら見た目九割に決まってるじゃないの。そういう女だから、性欲が湧くのでしょうが。どうしても相手がいなくてブサイクチビのアラフォーのバツイチを選ぶのもいるかもしれないけど、秋野瞬が女に不自由なんかするはずないだろうが」

 サヤカのやつ、またブサイクチビのアラフォーのバツイチって言いやがった。いつかダイナマイトで吹っ飛ばして粉微塵にしてやる。でも一理ある。瞬さんがその気なら、

「いくらでもセフレぐらい作れるに決まってる」

 だよね。あれだけイイ男だしカネだって持ってる。それだけでいくらでも女は群がるはずだ。そんな瞬さんがわざわざブサイクチビのバツイチのアラフォー女をセフレにするはずがないのはサヤカの意見に一理ある。でも怖いんだよ。

「それはわかるよ。でもお医者さんは出来るって言ってるのでしょ」

 そうなんだけど、これも元クソ夫とレスになった理由の一つでもある。あの難産は最終的に子宮全摘になってしまった。つまり、二度と子どもを産めないってこと。

「それは問題ないよ。秋野瞬だって種無しだ。子宮があろうがなかろうが、子どもは出来ないのは同じ」

 それはそうなんだけど、やっぱり怖いんだよ。子宮全摘になった人の経験談を調べてみたのだけど、やっぱり色々だった。問題なく出来るって人もいたけど、そうでないって人も多かったもの。そりゃあそこの奥は子宮だ。それを切り取られて影響が出ないはずがない。

「そんなものやって試してみないとわからないじゃない。それとも秋野瞬はウルトラ巨根で子宮までぶち抜くぐらいなの」

 そんなものを知ってる訳がないでしょうが。あんなものベッドに行って初めてわかるものだし、そんなもの見せびらかして女を口説く男なんかいるものか。そんなものにウットリして口説かれて落ちる女だっているはずないじゃないか。

 でも巨根問題はあるかもしれない。ここは、元クソ夫しか経験ないから大きなことを言えないけど、子宮までぶち抜くようなウルトラ巨根なんて実在するのかな。そりゃ、隣と言うか続きにはあるけど。

「いるのはいるらしいけど、そこまで行けばある種の奇形だろ。少なくとも秋野瞬の前妻はやれたはずだからだいじょうぶだと思うけど」

 壊されてた可能性まで言えばキリないものね。巨根問題は置いといても、やっぱりダメの可能性はどうしても残るじゃない。もしダメだったら、

「マナミには必殺技があるじゃない」

 スペシウム光線も波動砲もカメハメ波も使えないぞ。ついでに魔貫光殺砲もだ。

「前がダメなら後ろよ」

 そっちか。そりゃ、開いてしまったし、開発までされてしまってるけど、

「どっちでも突っ込んだ結果に変わりはない」

 あのな、同じにするな。男からすれば突っ込めるところって意味で同じかもしれないし、フィニッシュが目的なら妊娠さえ目指さなければ似てる部分はあるかもしれないよ。

「ほら、同じだ」

 違う、断じて違う。そりゃ、前がダメなら後ろでラブするしかないかもしれないけど、後ろだけでラブするカップルなんていないだろうが。

「ゲイなら普通だよ」

 マナミは女だ。女なのに後ろしか使えないっておかしいだろうが、ゲイは後ろしか使えないから普通かもしれないが、女は前が使えるんだ。元クソ夫の後ろへの執着は物凄かったけど、マナミの後ろが開かれても前もちゃんと使ってたから妊娠もしてるだろうが。

 だいたいだよ、瞬さんがそんな変態女にラブするものか。それこそセフレ止まりが関の山だ。というかさ、後ろしか使えない女に熱中する男の方が気色悪すぎだ。そしたらサヤカは大きなため息を吐きながら、

「マナミの価値はそこじゃない」

 じゃあどこに価値があるって言うんだよ。

「マナミのような女は世界中探しまわったってそうは見つからない。秋野瞬だって単に再婚したいだけなら、いくらでも相手はいるわよ。だけどね、何があっても手に入れたいのはマナミのような女なのよ。たとえ後ろしかダメでも喜んで受け入れるに決まってるじゃない」

 じゃあレスでも。

「ああそうだよ。夫婦ってね、国家公認でやり放題みたいなものだけど、やることだけが夫婦の仕事じゃない。だいたいだよ、歳取ったらどんな夫婦でもレスになる。それが早いか遅いかだけ」

 でも最初っからレスは、

「やってみなさいよ。そりゃ、ダメになってる女がいるのはマナミの調べた通りだと思う。でもさぁ、ちゃんとやれてる女だっているんだろ。どっちなのかはやってみないとわからないじゃないの」

 そう言われても・・・ダメだったら後ろオンリーのラブは嫌だよ。