ツーリング日和20(第35話)そして・・・

 その夜に告白されて結ばれた。と言ったら愛想がないけど感動と試練の一夜だった。告白があるのはどこかで予感してたけど、現実となると信じられないとしか言いようが無かったもの。

 瞬さんの想いはサヤカが推測した通りだった。マナミと逢えば逢うほど魅かれていったみたいなんだ。マナミの魅力はサヤカが分析してたけど、そんなところに重点を置いて相手を選ぶ人が本当にいるのは信じられない気分しかなかったもの。

 そりゃ、もう情熱的に口説き落とされてしまった。あんなイイ男にそこまでされてNOなんて出来るはずがないじゃないか。そりゃ、もう嬉しくて、嬉しくて状態になったよ。あれでならなきゃウソだろ。

 けどね、YESを出せば次がある。この歳だもの、これだけのシチュエーションで無い方が不誠実だ。それももちろん了解済みで武田尾まで来てる。こっちだってネンネじゃないしバツイチだ。

 とは言うものの大難産の手術以来なんだよね。あそこが使えるかどうかには不安しかなかったもの。ここばっかりは、事前に誰かに試すのは出来ないのよ。そんなもの医者相手だってお断りだ。もっともそんなテストをやる医者がいれば警察沙汰だけどね。

 マナミがもうちょっと、いやサヤカ並みの美人だったら一夜のアバンチュールぐらい出来ただろうが、そこはブサイクチビのアラフォーに縁があまりにも遠すぎた。でも、それについての後悔はない、男漁りは趣味じゃない。

 後悔はないけど後悔はある。ぶっつけ本番だもの。そりゃ、経験はたんまりある。元クソ夫は変態趣味の性欲マシーンだったから、トコトンやられまくったもの。それこそヒーヒー状態にまでされてたからね。だけどあの時のあそこじゃない。処女じゃないけど、初めてみたいなものじゃない。

 ここまで来れば女は度胸と開き直るしかなかった。まさかまさかのウルトラ巨根だったら突き破られての病院送りも覚悟した。そこまで考えると武田尾から病院まで遠そうだから失敗したかもしれないって頭を過ったもの。

 そしてついに始まった。何が起こるかの不安しかなかったな。ここがダメなら後ろもあるけど、そんなところを瞬さんが好きかどうかもわかんないもの。もう祈るような気持だった。まず体はスタンバイ状態になってくれた。

 そうなれば来る。入って来る感触はお久しぶりだったけど、問題は奥だ。瞬さんがグイって感じで入ってきた。そりゃそうするよね、相手は処女じゃなくバツイチ女だ。あっとは思った時には奥までズドンだった。

 でね、痛くなかったんだ。妙な違和感もなかったし、ちゃんと受け入れてる感触も変わっていない。そうだね、欲しくて、欲しくてたまらない愛おしいもので満たされる嬉しさも込み上げるぐらい。この時点でダメだったら話にならないけど、まずは最初の難関はクリアだ。だが本当の試練はここからだ。

 祈るような気持ちでそれは始まった。これもどうなるかなんて想像も付かないじゃない。なにか変な感触が起らないか全神経を張り詰めてた。そしたらね、かつての感覚が次々と蘇って来るのがわかった。ホッとしたなんてものじゃなかったよ。ちゃんと受け入れられて反応も出来てるんだもの。

 それで安心したのが悪かった、いや良かった、いや悪かった、いやムチャクチャ良かったけど、最悪の展開になってしまった。なにを言ってるかわかんないと思うけど、体が全開に突っ走っちゃったのよ。

 これはさすがに恥ずかしかった。だってまだ瞬さんとは初めてじゃない。そりゃ、処女じゃなくバツイチだから感じたってかまわないはずだけど、これはいくらなんでも拙すぎるって思ったんだよ。

 そこそこのところで終わってくれるように願ったのだけど、こういう時に限って、そうは問屋が卸してくれなかったんだよね。そりゃ、もう必死になって堪えたんだけど、結果的にあれも良くなかった、いやこの世で最高、そうじゃなくてトンデモない結果、う~んと、う~んと、究極の結果オーライみたいなものだ。

 女だってね、やるからにはイキたいのよ。あれは女にとって最高の感覚だし、一度覚えれば麻薬のようなものだ。中毒性だってあると思うし、何回イっても飽きたり慣れることもないもの。たぶん男だってそうのはずだ。

 感じれば高まり、高まり切ってイクじゃない。そのルートを驀進していたんだ。感じるところまでは良いとしても最初からイクのは避けたかったんだ。だってだって、まだ瞬さんとは一回目だ。そこまでの姿をいきなり見せたくないじゃない。

 ここまでになっても女にはプライドがある。プライドって言い方もちょっと違うから恥じらいかな。あれになっても感じちゃう姿を見せるのは本当に恥ずかしいのよ。ましてやイキ姿をさらすなんてだ。

 そりゃそれを見せないとイケないのだけど、いくらなんでも最初からイキ姿までさらしたくなかったんだ。だから耐えた、頑張った。歯を食いしばり、涙を飲んで悶えまくる姿までさらしたよ。

 悶える姿も本当は見せたくなかったんだけど、イキ姿よりマシだとあきらめた。つうかあきらめるもクソも、そうでもしないと堪えられるものじゃなかったもの。悶絶するってああなるのがわかったけど、もう一心不乱になって堪えに堪えたんだ。

 イク時って人によって違うだろうけど、マナミの場合は高まりからイクに自分で持ち込む感じが多かったんだ。だからそこを堪えれば凌げるはずって計算はあるにはあった。それだけをひたすら念じて、後少し、もう少しって踏ん張ってた。

 だけどさぁ、ふと気が付くと体がエライ事になっているのがわかったんだ。あれは高まりなんて代物じゃなくマグマだ。それが噴火に向かって物凄い勢いで噴き上がって来るのがわかったんだよ。もう、もうの状態で、あれこそどうしようもなかった。

 出来たのは絶叫することだけ。凄まじい大爆発に粉微塵にされてしまった。こんなもの経験したことなんかあるものか。イクは絶頂とも表現されるけど、そうだね、感じとして絶頂から大噴火して吹き飛ばされたって言えば良いかもしれない。

 凄まじすぎる衝撃は体中を貫いていった。こんな世界がこの世にあり、ここまで女って感じれるものかってボンヤリ思ったもの。そうだね、これを感じられるのなら死んだって後悔はないぐらいの感覚だった。そして意識が真っ白になった。

 気が付いたら朝だった。あのまま眠っていたんだ。昨夜の事を思い出すだけで顔が真っ赤になりそうだったよ。イキ姿をさらすなんてレベルじゃなく、マナミのすべてをさらしたようなものじゃない。でもね、瞬さんは、

「最高だった。愛してる、もう離さないよ」

 そういって抱きしめて熱いキスまでしてくれた。素直にその言葉を受け取れたし、生まれて来てこんなに嬉しいと思ったのは初めてだ。ああなってしまったマナミを瞬さんは喜んでくれたんだもの。

 瞬さんは逞しかった。巨根ではないと思うけど、元クソ夫よりはるかに逞しかった。けどね、マナミがあそこまで感じられたのは瞬さんの逞しさだけじゃない。短小は見たことも経験したこともなから置いとくけど、一般的に小さいより大きい方が良いとは言われてる。

 そういう女もいるのは知ってるけど、マナミは違うと思うんだ。女はそんな単純なものじゃないのよ。最高に良いのは入れて欲しい人に入れてもらうこと。女ならわかると思うのだけど、本当に欲しいものが入ってくれることなんだ、

 元クソ夫だって本当に欲しいものの時代はあったんだよ。だから感じたし、イクことも出来た。だけど瞬さんへの愛おしさは段違いとしか言いようがない。愛してたって意味では同じはずなのだけど、どう考えたって違うんだよ。

 それは瞬さんがイケメンだとか、お金持ちからじゃないと思う。そりゃ、イケメンでお金持ちなのは誰だって魅かれるだろうしマナミだって例外じゃない。でもそんなのじゃなくて、なんて言えば良いのか難しいけど、ついに見つけたって気がしてる。

 それこそ魂が本当に魅かれ合う相手をね。そこまでの相手だからあそこまで感じることが出来たはず。エラそうに言ってるけど今だって夢見心地なんだ。あの夜って本当にあったんだろうかって。


 お泊りツーリングから帰った後にサヤカにも報告した。だってどうなったかって、聞かせろ、聞かせろってウルサイんだもの。でさぁ、サヤカの奴は武田尾の夜に瞬さんからの告白を受け入れて結ばれたって聞いて

「前も使えて良かったねぇ」

 いきなりそこかよ。そりゃ、前がダメだったら後ろしかなくなるけど、後ろばっかりの関係はどう考えたって歪みすぎだろ。

「後ろはどうするの?」

 いくら女同士でもそこまで聞くか! そりゃ、求められたら拒否しないけど、出来たら避けたいな。元クソ夫には開いてしまったし、後ろだって感じるけど、

「やっぱり前だよね。後ろなんて変態行為の極致みたいなものだよ」

 そこまで言うか。無理やり聞き出しやがったのはサヤカだろうが。あの時はあの時でしょうがなかったんだから。場の空気とか、流れってものがあるでしょうが。

「それはともかく、そこまで感じれるのは羨ましいな」

 やるからにはそこまでになりたいのは女の本音だ。えへへへ、サヤカの知らない世界だろ。とにかく良いんだから。アラフォーでバージンしてたらカビが生えるぞ、

「ほっといてよ。相手がいないんだから」

 やっぱりか。どうもそうじゃないかと思ってたんだ。サヤカは耳年増ではあるけど、

「誰が耳でも年増なんだよ」

 同い年だから立派なアラフォー仲間だろうが。

「むむむむ」

 サヤカの話しぶりなんだけど、どうにも実戦の裏付けが乏しそうに感じてたんだ。それぐらい女だからわかるよ。つまりはまだネンネだ。ネンネなんかに男に感じる世界やましてやイク世界なんて実感をもって語れるものか。マナミだってね、ダテにバツイチになったんじゃないんだからね。

「ネンネ、ネンネってうるさいよ。覚えてろ」

 ああ覚えとくよ。サヤカがやっとこさ初体験出来たら、せいぜい慰めてやるからな。サヤカの歳で初めて突っ込まれたらさぞ痛いと思うぞ。だって使ったことないから歳相応に硬くなってるはずだもの。

「そんなことないもん」

 悔しかったら突っ込まれてみろ。話はそれからだ。あの世界を知るにはそれしか方法がないからな。そうだそうだ、イクとこまでになったら報告しろよな。どうなったかの大熱弁を聞いてやる。

「一発目でイってやる」

 そんなもの絶対に無理だって。出来るのは突っ込まれた衝撃で血を流しながら呆然とするだけだ。なんでもそうだけど積み重ねが必要なんだよ。ロストバージンでイクのはエロ小説の中だけ。

 男のあれって最初はグロテスクにしか見えないんだよ。それが経験を重ねることで愛おしい物になり、さらに入れて欲しくてたまらないものに変わっていくんだよ。そうなっていく中で感じれるようになれるし、感じた先にイクがあるってこと。

 とくに処女からならそうだ。すべての女は積み重ねた経験の末にあの世界にたどり着いてるんだ。それも誰しも行ける世界ですらない。行けない女もたくさんいるらしいからね。サヤカも行けるようには願っとくよ。もっともネンネには難しすぎる話か。

「うぐぐぐ、悔しい」

 そんな事はともかく問題はこの先だ。

「その先? 結婚しかないでしょ」

 そりゃ、したいけど瞬さんがそこまで考えているかはあるじゃない。

「マナミが逃げようとしても無駄だよ。相手を誰だと思ってるのよ。最初っからそれしか考えてなくて、着々と外堀も内堀も埋められてしまったのが今のマナミだよ。本丸の天守閣だって武田尾の夜に燃え上がってしまってるじゃない」

 た、たしかに大炎上してしまった。サヤカは微笑みながら、

「今度は絶対だよ。今度こそ思う存分、ラブラブ夫婦を満喫できる。最初からそうだったら良かったのにね」

 そりゃそうだけど過去は取り戻せないよ。すべては運命の糸車。出会いの巡り合わせの結果だもの。そうだよ、前の結婚だって全部が無駄じゃない。あの経験だって次の結婚に活かせる部分は必ずあるはず。

「前向きなのは良いことだ。わたしにもそんな男が現れてくれないかな」

 う~ん、やっぱり無理だと思うぞ。

「どうしてよ」

 そりゃ、誰が皇帝陛下の種馬になりたいものか。

「マナミでも言って良い事と悪いことがあるぞ。ブルキナファソに行きたいのか」

 そんなところになんか行くものか。瞬さんが守ってくれるよ。

「だろうね。秋野瞬なら命を懸けてもマナミを守ってくれるはず。ああ、羨ましいったらありゃしない。でもホントに良かった。今度こそ幸せになってね」

 サヤカにだっていつの日か現れよ。たぶん・・・だけどね。

「シエラレオネに新婚旅行に行きやがれ」

 それも良いかもね。

「それはさすがにお勧めしないな。日本の大使館さえない国だし、政情だって本当に不安定なんだよ。エボラ出血熱の流行こそ収まったけど、治安も衛生状態も良くないよ。だいぶ落ち着いては来てるらしいけど観光開発はまだまだらしいし」

 だからマジレスするなって。誰が新婚旅行でそんなディープなところに行くものか!