謎レポート(第5話)襲撃

 夜が明けた。このまま銀行をやるぜ。近所に銀行があったからそこで良いだろう。九時に家を出て、その足で乗り込んで行った。

「大人しくしろ。カネを出せ」

 銀行襲撃は適当過ぎた。頭の中は銀行に行きさえすればカネが手に入るしかなかったぐらいだ。昨夜からハジキが手に入り、久しぶりに女とやって、試し撃ちで家族を撃ち殺して頭に血が昇り過ぎてたのはあるだろうな。だが銀行の方も対策があった。あれこれやり取りしているうちに、

「ボス、サツですぜ」

 気が付いたら包囲されていた。そこからお決まりの、

「君たちは完全に包囲されている。大人しく武器を捨てて出て来なさい」

 サツの言う完全に包囲はダテじゃないだろうが、笑わせるな誰が大人しくするものか。

「こいつら人質にする。女は部屋に閉じ込めろ。男は縛り上げとけ」

 その時に支店長だと思うが、

「お客さんと女性は解放してくれないか」

 なるほどと思ったぜ。人質も多すぎると見張るだけでも手間がかかる。だったら減らせば良いじゃないか。

「男とババアは不要だ。タマがもったいないからナイフで始末しろ」

 オレがまず支店長を刺し殺してやった。なんとか逃げようとする者がいたが撃ち殺してやった。始末が終わると残った女を呼び出した。すごい悲鳴があがったが、威嚇射撃で静かになった。

「裸になれ」

 オレも観念はしていた。こうなったら逃げられない。ならばやりたい事をやるだけだ。仲間と交代で外の様子を見張りながら、やりまくってやった。サツの定番の、

「大人しく出て来なさい。家族も悲しんでるぞ」

 あのお袋が悲しむものか。だから言い返してやった。

「今すぐ包囲を解け、さもないと人質を順番に殺していく」

 やったよ。女もブスは不要だ。素っ裸のまま玄関から押し出し背後から撃ち殺してやった。効果はあったな。サツどもは見える範囲から後退しやがった。だが包囲を解くはずなんかない。こっちから見えないところにいるだけだ。

 女どもは震えあがって股を開いた。そりゃそうするよな。ちょっとでもオレたちの機嫌を損ねたら、殺されるのを目の前で見せられているからな。オレも仲間も見張りを交代したら、ひたすらやりまくっていた。

 サツが動くまでには時間があった。どうするかの最終決定に時間がかかったのだろう。その時間を目いっぱい有効活用させてもらったよ。だがついに来やがった。窓をぶち破って催涙弾を撃ち込んで来やがったんだ。それと同時に乗り込んできた。

 サツの野郎どもは射殺許可も下りてたようだ、仲間たちも猟銃で応戦したが、多勢に無勢だ。こっちは催涙ガスでゲホゲホ状態だし、あいつらガスマスクにヘルメット、防弾チョッキまで着込んでやがる。次々に仲間は射殺され、オレもタマを喰らって意識が無くなった。


 警察と言うか、国は不思議なものだと思ったぜ。瀕死の重傷だったのに、なんとだよ治療して助けてしまったんだよな。医者どもも、ご苦労さんだ。あいつらの言い分は生きてちゃんと刑を受けてもらうのだそうだ。メンドクサイ連中だよ。

 六か月の治療で退院できたオレは即収監された。そう監視付きの病室から拘置所に直行だ。オレのような者にも弁護士が付いたが、とりあえずの罪状は強盗殺人、婦女暴行がメインで、後は多すぎて忘れた。いわゆる余罪ってやつだ。

 言うまでもないが前科もある。こういう状況で裁判になると死刑になるかならないかだろうが、殺人でも死刑の基準があるそうだ。三人以上なら死刑になる可能性が高まるらしい。オレは両手を余裕で超えてるから、

「厳しい判断を覚悟してください」

 お手上げってことだろう。取り調べでも適当に出来上がった供述書にもサインした。裁判では生き残った人質の証言もあったが全部認めた。細かいことを言えば、オレじゃなくて仲間が殺した分もあったが、それこそ誤差の内、主犯であるのも誤魔化しようがない。

 弁護士は、ここまで残虐な犯行を行うからには精神の異常をきたしているはずだと主張したんだよな。せめてもの抵抗だったと思うが精神鑑定なるものをされて、

『責任能力あり』

 せめてヤクでもやってれば事態が変わる可能性があったそうだ。あの時の死んだ仲間にはヤクやってる奴もいたが、オレはやってなかったからな。判決は裁判やるまでもなく決まってたようなもので、

「死刑」

 どう思ったかって。そりゃ、そうなると思ったぐらいだ。これだけやって無期懲役なら、誰が死刑になるかぐらいだ。死にたくはなかったが、逃げようにも逃げられない。と言うか逃げれるならとっくに逃げてる。

 まあ、もうちょっと銀行でやっとけば良かったぐらいは頭をかすめたが、あの状況であれ以上は無理か。せめてサツの突入がもう少し遅ければな。まだ死刑になってないが、女はこれで打ち止めだな。

 弁護士はそれでも控訴まではしてくれたが、あえなく却下となった。ゴチゴチの現行犯逮捕だから再審理の余地なしだろう。粘るだけなら特別抗告で最高裁に訴えるのもあるそうだが、これは断った。控訴以上に無駄なのは丸わかりだ。