当地だけでなく全国的に流行中のようです。RSウイルス感染症と言っても成人にはピンと来ないと思いますが、小児科医にとっては厄介な感染症です。発熱も39℃とか40℃が当たり前のように出るのはまだしも、呼吸状態の悪化に手を焼きます。
ぶっちゃけすぐに気管支炎から肺炎を起こすのですが、これが痰がらみの湿性咳嗽が強いだけでなく、喘息様のものになります。そりゃ、聴診器で聞いても強烈なものです。音が強烈だけなら良いのですが、呼吸音の悪化は呼吸の悪化に連動します。
あれこれ外来で手を尽くしても入院治療が必要な患児がどうしても発生します。診療所なので紹介入院で仕事は終わると言えばそれまでですが、神戸でも先週から紹介先病院が満床状態になっています。そりゃ、うちだけじゃないですから、あれだけ入院させればそうなります。
ひたすら重症化して入院が必要にならないように祈る気持ちで外来をやっています。とにかく呼吸に関わる症状なので、切羽詰まると様子を見るなんて余裕がないからです。
こうなってしまった要因はあれこれありますが、紹介先病院の医師の意見に納得すると言うか、震え上がる思いになっています。どんな意見かと言えば、
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去年のツケ
世間では『風邪』の一言で片づけられてしまう市中感染症が見たことも無いほど激減しています。おかげでうちの診療所も閑古鳥状態でした。インフルエンザが一人も出てこない冬なんて初めてです。もう二度とないのじゃないかと思っています。
それは悪いことではないですが、小児の市中感染症は成人と違い、必要悪として罹患して免疫を付けておかないと仕方がないものが多々あります。これが1年間休止状態になれば、どこかでツケが出るって事です。
今はRSウイルスが噴出していますが、その他の待機している感染症がずらっと待っていることになります。RSだって一度に大流行しなければ、入院病床に困るほどのことはないのですが、短期間に集中すれば速やかにパンクします。それが今です。
小児病床なんてどこの病院でも経営的には目の仇で集約化が進んでいますが、集約化された病床数は平年通りの入院患者に必要な分しかありません。これは成人のコロナ対応病床の逼迫でわかってもらえると思います。
アクシデント的に入院必要患者が増えれば速やかにパンクするのは必然です。そりゃ、現在の医療において余裕とか、余力とか、冗長性みたいなものは親の仇みたいにガシガシ削られまくっているからです。
コロナ対応病床の確保にも苦心惨憺がありましたが、小児病床も需要が増えたからと言って急には増えません。つうか増やしたところで、波が過ぎれば余剰病床化するのが目に見えているからです。もちろん小児に対応できるスタッフもすぐには増えません。
これは当地だけの事情かもしれませんが、なんとなくマイコプラズマが増えている感触があります。さてどうやって対応していくかは・・・でたとこ勝負しかないのが町医者のお仕事ですよね。