NHK記事のムック

8/28付NHKニュース(魚拓)より、

多くの患者の受け入れ 要請へ

新型インフルエンザの全国的な流行を受けて、厚生労働省は、今後、救急病院に患者が殺到すると地域の救急医療に混乱が生じかねないとして、各地の病院や診療所に対して、できるだけ多くの患者を受け入れるよう要請することになりました。

新型インフルエンザは国内で定点観測をしている医療機関1か所あたりの平均の患者数が1人を大幅に上回り、全国的な流行に入りました。特に、感染が急激に広がっている沖縄県では休日・夜間の救急外来に患者が集中して救急病院の負担が増加しているということです。厚生労働省は、今後、さらに感染が広がって救急病院に患者が殺到すると救急患者の受け入れができなくなるなど、地域の救急医療に混乱が生じかねないとして各地の病院や診療所に対して、できるだけ多くの患者を受け入れるよう要請することになりました。具体的には▽診療時間を夜間まで延長することや▽入院患者をできるだけ受け入れること、さらに▽満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備することなどで、厚生労働省は近く、都道府県や医師会を通じてこれらの内容を要請することにしています。

この記事への直接の論評は中間管理職様の「多くの患者の受け入れ 要請へ」をお読み下さればと思います。キッチリ書かれてますので、あんまり付け加える事がありません。実は私もネタにしようと思ったので、あれこれとググっていたのですが、やはり焦点は、

    満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備する
ここの意味合いは前後の文脈からして、中間管理職様もそう受け取られた様に、
    病院が新型インフルエンザ流行に備えて、自力で満床でも患者を受け入れられる様にする設備・人員を調達せよ
こう解釈せざるを得ない記事です。正直なところ「そうは言われても・・・」の厚生省の要請になります。天下のNHK記事ですが、本当に厚生労働省がそう説明したのかの疑問が生じざるを得ないところです。このNHK記事にもソースがあるはずで、とりあえず記事の情報分析なんですが、タイムスタンプが、

8月28日 4時49分

早朝の記事である事がわかります。ここでNHKの番組表を確認すると、4時15分から番組は始まっていますが、ニュースは4時30分の「おはよう日本」からです。「おはよう日本」は4時30分〜8時15分までの番組なんですが、NHKニュースサイトの「番組情報」には、

こうなっていますから、ニュース自体は8/27に放映された可能性を考えます。少なくとも厚労省の発表は8/27にあったとしても良いかと考えます。厚生労働省サイトを見ると一番可能性が高いのは、大臣記者会見の動画と思われます。NHK記事の主なポイントですが、

  1. 全国的な流行に入りました
  2. 沖縄では大流行しており、救急病院の負担が増えている
  3. 医療体制確保の対策
これが挙げられていますが、大臣記者会見では確かにこの事を説明しています。他にもワクチン関連の情報も話されています。ここでなんですが、NHK記事が「医療体制確保の対策」ですが、
  1. 診療時間を夜間まで延長することや
  2. 入院患者をできるだけ受け入れること、
  3. 満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備すること
これを列挙しています。この点についても舛添大臣は解説していますが、これは舛添大臣が使われたスライドが公表されているので引用します。

大規模な流行が生じた場合に備えた医療体制

罹患率や重症化率等を内容とする「新型インフルエンザの流行シナリオ」の提供や、医療提供体制の確保・取扱に関する情報提供を行い、都道府県の対応を支援し、近日中に、都道府県、関係団体等に対し、以下の点について要請。

<医療提供体制の確保>

  1. 流行、感染拡大状況の把握
      都道府県における状況把握、医療関係者への情報提供
  2. 医療体制確保のための対策の検討
      外来医療の確保(夜間診療時間の延長など)、入院医療の確保(一般病床等への入院や定員超過の取扱の明確化など)
  3. 医療機関、医療従事者等への情報提供
      院内感染対策の徹底、患者の症例集等の情報提供
  4. 住民普及啓発
      感染した場合の対応等を示した「自宅療養の手引き」の周知、基礎疾患を有する方等への情報提供

NHK記事が報じたのはこのうち「医療体制確保のための対策の検討」だと考えられます。舛添大臣が語った該当部分の内容を起すと

それから医療体制確保のための対策、あの〜外来医療の確保するために夜間診療時間の延長、それから入院医療の確保、これ病床の確保をしなければいけない。こういう事があります。

舛添大臣の説明には「満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備する」について補充説明はとくに行なわれていない事が確認できます。「医療提供体制の確保」に掲げられた項目は、読んでもらえればわかるように、厚生労働省が行う事と、国民や医療機関に要請することが混在する形で併記されています。

「医療体制確保のための対策の検討」は2つに分かれ、

  • 外来医療の確保


      夜間診療時間の延長


  • 入院医療の確保


    • 一般病床等への入院
    • 定員超過の取扱の明確化
NHK記事の「満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備する」は「定員超過の取扱の明確化」に該当するとしか考えられませんが、これが厚労省が対策することなのか、厚労省が要請することなのかは大臣記者会見からははっきりしません。つまり解釈として二つ成立するわけで、
  1. 病院が定員を超過する患者を受け入れたときの厚生労働省側の法制上の対応
  2. 病院が定員を超過して患者を受け入れられるような体制を作るように求めた、厚生労働省からの要請
厚生労働省側の法制上の対応とは、病院は定員超過で入院医療を行なったり、定員超過のため病床以外で入院治療を行なったときに、ペナルティが課せられます。それを新型インフルエンザ対策として臨時措置みたいなものを考慮するみたいなものとも受け取れるからです。

ここで問題はNHKの取材になります。ソースは大臣記者会見ですが、

    大臣記者会見 → 記者会見後に記者質問 → 記事作成
こういう流れがあったと考えられますが、記者質問は公開されておらず、ここで「定員超過の取扱の明確化」について記者質問があり、これに対してNHK記事のニュアンスで厚生労働省が返答した可能性を確認できないところです。ここの部分の裏付けになりそうな記事が8/28付CBニュースにあります。

「新型」超過入院の診療報酬上の取り扱いで事務連絡―厚労省

 厚生労働省は8月28日、新型インフルエンザの重症患者を感染症病床の定員を超えて入院させる場合の診療報酬や医療法上の取り扱いなどを示した事務連絡を各都道府県などの衛生主管部(局)に行った。

 まず、診療法上の考えとして、新型インフルエンザの患者が多数入院してきたため、病室に所定病床数を上回る患者を入院させることになった場合、入院基本料の減額措置の対象となるかについては、災害などやむを得ない場合は減額規定は適用しないことから、「入院基本料の減算とはならない」とした。

 また、入院基本料の算定に関して、廊下や処置室など病室以外に収容した場合の取り扱いについては、「入院基本料の算定はできない」とした上で、当該患者の処置などに対する診療報酬は、算定要件を満たせば算定できるとしている。

 さらに、新型インフルエンザの患者を入院させる病床を臨時的に確保したことで、看護要員の配置数や病床数が変動した場合、「既存病床に入院する患者について、7対1入院基本料を算定できるかどうか」については、留意事項通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」のただし書きに定めた通り、「暦月で1か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動」の範囲内なら算定できるとした。

 医療機関新型インフルエンザの重症患者を感染症病床の定員を超えて入院させる場合の医療法上の取り扱いについては、緊急時の対応として、患者を▽感染症病床の病室に定員を超過して入院させる▽一般病床、療養病床、精神病床もしくは結核病床の病室に入院させる▽廊下や処置室など病室以外の場所に入院させる―場合については、医療法施行規則10条に記載された臨時応急の場合に該当すると指摘。

 しかし、定員超過入院は「緊急時の一時的なものに限る」としており、常態化する場合は医療法上の感染症病床の増床手続きを行う必要があるとした。

この記事は明らかに「定員超過の取扱の明確化」に関連するものである事がわかります。内容については長くなるので簡略にしますが、従来の定員超過に対する規定を、

細かいところのツッコミは色々ありますが、発せられたという事務連絡は医療法施行規則10条の解釈に関するもので、該当部分を引用すれば、

病院、診療所又は助産所の管理者は、患者、妊婦、産婦又はじよく婦を入院させ、又は入所させるに当たり、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。ただし、第一号から第三号までに掲げる事項については、臨時応急のため入院させ、又は入所させるときは、この限りでない。

  1. 病室又は妊婦、産婦若しくはじよく婦を入所させる室(以下「入所室」という。)には定員を超えて患者、妊婦、産婦又はじよく婦を入院させ、又は入所させないこと。
  2. 病室又は入所室でない場所に患者、妊婦、産婦又はじよく婦を入院させ、又は入所させないこと。
  3. 精神病患者又は感染症患者をそれぞれ精神病室又は感染症病室でない病室に入院させないこと。

事務連絡が指し示しているのは、

    臨時応急のため入院させ、又は入所させるときは、この限りでない
これの新型インフルエンザ対策における解釈と考えればよい事になります。たしかに「定員超過の取扱の明確化」は事務連絡で行なわれております。そうなると問題はNHK記事に戻ります。「定員超過の取扱の明確化」を「満床でも臨時に患者が入院できる態勢を整備する」と言い換えた個所は、通常の国語力で読解する限り、
    病院が新型インフルエンザ流行に備えて、自力で満床でも患者を受け入れられる様にする設備・人員を調達せよ
こうとしか読めない事は上述しました。その上で他のソースを勘案して考えると、
  1. 大臣記者会見での記者質問でそういう趣旨の発言を舛添大臣ないしは厚労省が言明した
  2. 私の読解力が悪く、あくまでも法令解釈としての「定員超過の取扱の明確化」を単純に言い換えたものである
  3. NHK記者がどこかで誤解した
さ〜て、真相はどうなんでしょうか。まあ、真相がなんであっても明日の夜からしばらくは、総選挙の結果にマスコミは忙殺されるでしょうから、この程度の事はしばらく吹き飛ばされる事だけは誰にも分かります。舛添大臣ですら、いつまで大臣かは時間の問題みたいですしね。