次回作の紹介

 まず紹介文ですが、

 高校生になった小林エミには両親に疑問がありました。夫婦仲はエミから見ても照れ臭くなるほど良いのですが、娘のエミから見ても釣り合いが悪すぎる点です。母は今でこそ小太りの肝っ玉母さんですが、かつては夢見る人と言われるほど美人で、教養だってどうみても大卒、さらに礼儀作法も心得ています。
 一方で父は高校中退の小男で母より背が低い。顔もわが父ながら胴長短足の醜男で、結婚した頃も貧乏で、結婚してからもずっと貧乏。接点さえ無さそうな二人なのに大恋愛の末に駆け落ちし、母の実家とは完全に縁が切られている状態です。さらにエミは母親に似て学校ではリボンのシンデレラと呼ばれる程の美人ですが、どこをどう見ても父親の面影がないというより無さすぎるのです。
そんな小林家が忌み嫌う人物に甲陵倶楽部馬術会長の黒田がいます。父の子どもの頃からの喧嘩相手だったとの事ですが、とにかく両親が嫌うものでエミも黒田は不倶戴天の仇敵みたいに思っています。
 ある嵐の日にエミは母と親子喧嘩をします。その挙句に告げられたのが、エミは黒田の娘であるだったのです。母は黒田と付き合っていましたが、妊娠した途端に捨てられ、飛び降り自殺をしようとした時に父に抱き止められて結婚したと言うのです。
 父は母を黒田の子ども付きで受け入れ結婚しただけでなく、エミは難産で母はその時に子どもを産めない体になってしまっています。それでも父は母を愛し、エミを実の娘以上に愛しています。出生の秘密を知ったエミは父の愛の深さを知ることになります。
 そんな時に父の乗馬クラブと、黒田のクラブが果し合いのような馬術試合の団体戦を行うことが決まります。実力差は大人と子供ほどの差がありますが、母は何がなんでも勝つと意気込みます。一方でエミは叔父の広次郎夫妻から両親のさらなる結婚秘話を教えられます。
 馬術試合に勝つには大障害を飛べる騎手が必要です。それが飛べるのはクラブでコトリ、シノブ、ユッキーしかいません。シノブは失恋のショックで引きこもり状態で、コトリは馬で競技とは言え戦う事に気乗りがしません。でもユッキーは願いを受け入れ、三人は馬術試合に参加を決めます。
 対戦相手ははアジア大会代表を含む強豪ぞろい。貸与馬戦ですから馬のハンデは無いとはいえ厳しすぎる試合に臨むことになります。エミは馬術試合の勝利を心から願いました。父が苦労惨憺の末に作り上げた乗馬クラブを守り、母の黒田への妄執が解き放たれるようにです。エミの願いは果たして叶うのか。

 シノブの恋のサイド・ストーリーで、なおかつセレネリアン・ミステリーの前に書いた作品です。ですから天使と女神シリーズ番号が前後しています。今から思えば外伝シリーズに入れた方が良さそうで、そのうち修正しようと思っています。

 それと紹介文が今までに比べて異常に長いのですが、これは某懸賞サイトの規定が千字程度になっており、それに合わせたものです。とはいえ、これで作品の半分ぐらいの紹介で、後半部分は二つほどまだヤマを残しています。

 前半部分はシノブの恋の馬術試合部分を小林家サイドから見たもの。エミが父親の子でない設定はシノブの恋で使っていますが、これを膨らませたものです。娘から見ても不釣り合いの両親の馴れ初めの秘密をムックを話の軸に据え、さらにエミの叔父の話を加えて厚みを加えたつもりです。

 後半部分はボツ作品のリサイクル。なかなか一つのヤマでは1冊書きあがりませんから、詰め合わせにしてみたぐらいです。それだけじゃなく、続編からさらにサイドストーリーを展開させて、四部作(シノブの恋から数えれば五部作)にしています。

 後半部分に関しては、続編を書いた時にこの作品の終盤部分をゴッソリ移植する必要が生じ、その穴埋めに苦慮した部分があります。シリーズを書いていると、我ながら良く書けたと思う作品も出てくるのですが、続編がそうで、ほぼ独立した作品にするための改造が必要だったぐらいです。

 とにかくユッキー・コトリを主役として使うのに煮詰まり感があり、新たなヒロインを軸に据えたらスルスルと世界が広がったぐらいです。続編の話は先々のお楽しみにして頂いて、まずは新たな世界への扉の世界をお楽しみ下さい。

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