夏休みが明けると恒例の宿題考査。
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「カズ坊待たんかい」
「ユッキー、いや、その」
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「あら、みいちゃん」
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「また手を抜きやがったやろ」
「ちゃんとやったって」
「ウチの目が節穴と思とるんか、体育祭の準備にあれだけ抜けやがって。お前なんかにこんな楽しいことを味合う権利はマイナスなんじゃ」
「マイナスってなんやねん」
「そんなんもわからんのか、お前はゼロすら遠いんじゃ」
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「アホンダラ」
「でも体育祭も大事だし」
「体育祭は大事や」
「そやろ、だから・・・」
「お前以外のクラス全員にとって大事や。お前は入っとらんわ」
「それは言い過ぎやろ、オレだってクラスの一員やんか」
「シャラップ」
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『ギシギシギシ』
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「ユッキー、そんなリヤカーどこから引っ張ってきたん。仮装行列にでも使うんか」
「シャラップ、クソみたいなお前のためじゃ」
「オレのためって、それ全部?」
「殺されたいんなら言うてくれ、いつでもぶち殺したる。そしたらラクなれるぞ。ついでにウチもラクになる」
楽しいイベントの掉尾を飾る体育祭が終わるとさしもの明文館も三年生は受験一色。進路相談もある。相談言うてもウチは短くて、
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「木村、港都大でエエんか」
「無理ですか」
「東大でも木村なら余裕なんだが」
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「港都大で結構です」
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「木村に睨まれるのもこれが最後かもしれんな」
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「予備校は決めたか」
「はい」
「じゃあ、頑張れよ」
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「ユッキー、二年間ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
「ユッキーにはだいぶ助けてもらったけど、今年は無理かもしれない」
「まだ時間があるし、最後まであきらめないで。ウチも応援するし」
「もちろん、最後まであきらめへんよ」
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「はい、クリスマス・プレゼント」
「うれしい、開けてもイイ」
「喜んでくれたら嬉しい」
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「カズ坊、高かったんやない」
「ちょっと。でも最後やない」
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「順調?」
「勉強は順調とは言えへんな」
「じゃなくて、みいちゃん」
「卒業してからが勝負かな」
「頑張ってね」
「ありがとう」
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「ユッキーも好きな人いるの」
「ウチも女やからいるよ」
「ユッキーも随分綺麗になったから、きっと叶うよ。応援してる」
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「じゃあ」
「うん」
でもね、カズ坊にはやっぱり感謝してる。もう普段でも普通に話せるようになったし、普通に表情も出せるようになったのよ。カズ坊がいなかったら、出来なかったと思う。明文館の最後のクリスマス。カズ坊こそ最後まで振り向いてくれへんかっけど、この学校にいる間にいっぱい、いっぱいのプレゼントをもらった気がする。
この先にまたカズ坊と巡り合えて、その時にカズ坊に彼女がいなかったら、今度こそ胸張って立候補する。もっと、もっとイイ女になってカズ坊のハートを射ぬいてやるんだ。そしてね、今日のクリスマスの続きをやりたい・・・次があったらこのユッキー様が逃がしたりするもんか。とっ捕まえて、縛り上げて、座敷牢に放り込んででもウチの男になってもらう。
儚な過ぎる夢やとわかってる。アカン、涙が止まらへんやんか。カズ坊よ、こんなイイ女を泣かせるぐらいお前はエエ男なんよ。今は誰も見えてないけど、ウチにはハッキリ見える。とりあえず、これじゃ、家に帰られへんやん。