冗長性

どうも語感が悪いのですが元は「たぶん」ですが英語の

  • wordiness(不必要に言葉数が多いこと)
  • verbosity(くどくて冗漫なこと)
  • prolixity(散漫で長ったらしいこと)
この辺から出た訳語じゃないかと思っています。平たく言えば「無駄」とか「余分」とか「不要部分」てな意味合いが重くなると言うか、そのままです。だから冗長部分と言うのは見つけて削るのが正義に一般的にはつながります。ただ確認して見るとredundancyも冗長性と訳されます。これとて、
  1. 過剰,余分,余剰性;(言葉の)余分な反復,冗漫,冗長;人員余剰.
  2. よけいな物[部分];冗語;余剰人員
  3. 宇宙(装置の)重複性,代理機能性.
  4. コンピュータ冗長:それがなくても全情報の本質的な意味が変わらない情報.
こんな感じでwordinessや、verbosityや、prolixityとあんまり変わらないと言うか、使う時にどれを選択するのが適切か迷う程度の差しかない様にも思えます。ただ、ただなんですが
    宇宙(装置の)重複性,代理機能性
これになると意味合いはまったく異なってきます。辞書から引いたので「宇宙」に限定されていますが、もっと一般的なシステムの本質を表しているものだと考えています。システムの効率性から言えば100%の能力で100%の結果を上げるのが目標になるかと思います。これは目標にはなるでしょうが、現実に100%の能力でしか結果を上げられないシステムは非常に脆弱と見ます。

簡単に言えばシステムのどこか一つがダウンしただけで結果は100%に達しないからです。我ながらわかりにくい表現ですが、ここでの仮定は結果の100%は絶対に達成しなければならないものであり、これが達成できないのは失敗ぐらいに解釈してください。昨今なら電力事情がわかりやすいですが、需要の100%を満たせなければ大停電を引き起こす様なお話です。90%供給でOKではない事は理解してもらえるかと思います。

そのためにシステムは結果を上回る能力を内包している必要があります。話題になった「はやぶさ」を例に取ると、ミッションの途中であれこれとトラブルが発生します。これを乗り越えられたのはトラブルを代償できる冗長性があったからです。「はやぶさ」は実際にトラブルが発生し冗長性部分が脚光を浴びましたが、もしトラブルがなければ無駄な重量、無駄なシステムとしての予算としかならなかったのが冗長性です。

この冗長性をどれだけシステムに内包させておくかはバランスが難しいところがあります。あればあるほどシステムは堅牢になるのですが、その代わりにコストが発生します。とくに滅多に起こるとは予想できないものに手厚い代償機能(冗長性)を盛り込むのは一般的に躊躇されます。すべてはコストに反映されるので、過剰な冗長性(元の意味が過剰な余分に近いのは目を瞑ってて下さい)は「無駄」とか「コストダウン」のターゲットに曝されます。


ヒトは自分の目に見えない部分には無頓着なところがあります。自分の生活の基盤を支えているシステムは空気とか水のようなもので、「あって当然」ぐらいにしか思わないものです。内実までへの興味が実に薄いところがあります。表に見えているシステムの内部がどんなに綱渡り状態であっても殆んど興味を示さない事が多々あります。そういう綱渡り状態でも維持できれば、綱渡り状態には関心を示さず「万全」と安易に見なす人々もまた多数おられます。

そのためですが、ある時点の綱渡りが成功すればそれを絶対の基盤と考え、そこからのさらなるコストダウン、すなわち余剰と見なした部分の削減に励まれるわけです。中で必死に支えている人間にとっては目の眩むような所業ですが、かなり平然と行なわれるのがこの世の中です。


ジェンガ」と言うゲームがあります。ある種の積み木崩しゲームで、積み上げた積み木から順番に積み木を抜き取って行くわけです。積み木は抜き取られると不安定になっていき、いつかは崩れ落ちます。冗長性とは抜き取られる積み木です。抜き取られた積み木は無いより有る方がより安定するのですが、なくても取りあえず崩れません。完全に無駄な積み木もあるでしょうが、崩れはしませんが無いと安定性に重大な支障を来たす物もあると言う事です。

このゲームの広い意味のバリーエーションに、積み木を積み立てていくゲームもあります。名前は忘れましたが、様々な形のパーツを上に上に積み上げていくゲームです。これも限界点まで積み上げればバランスを崩して倒れます。業界によってはジェンガ式に基盤の積み木を抜き取りながら、一方でその上にタワーを積み上げてくところさえあります。8/28付朝日新聞より、

「急患たらい回し」削減へ 断らない病院100カ所整備

【辻外記子】厚生労働省は、急病や事故による救急患者の受け入れを断らない病院を全国に約100カ所、整備する方針を決めた。救急患者の「たらい回し」を防ぐのがねらいで、条件を満たせば、どんな状態でもいったん受け入れて対応することを目指す。来年度予算の概算要求に約20億円を盛り込み、スタッフやベッドの確保に必要な経費を補助する。

 対象となるのは、入院や手術を必要とする患者を受け入れる二次救急の施設。地域ごとに受け入れ条件として「30分以上待った」や「5カ所から断られた」などのルールを決め、対象の救急患者を受け入れ、入院させたり、手当てをした後に他の施設に転院させたりする。

 救急車を呼んでも、受け入れ病院が見つからず車内で待たされたり、救急隊がいくつもの病院に電話をしても断られたりするケースの減少につなげる。

そんな感想を抱きました。