自分がやっていない事の情報を集めるのがこんなに難しいとは思いませんでした。泥縄式に調べていくと、現在の在宅治療の主流は
リンク先は施設基準ですが、とりあえず確認できなかった情報は、-
在宅支援診療所は週に18時間以上の一般外来が必要
-
訪問診療は月2回以上で良いから
在宅医療の用語として計画的に行ったものは訪問診療、そうでないものは往診とするそうですが、今日は
-
訪問・・・定期
往診・・・臨時
-
定期・・・担当人数によるbase診療回数
臨時・・・不定期に発生した診療回数
前にも書きましたが、在宅診療の時間は単純化すると、
- 在宅時間・・・患家に到着し診療を行い患家を出るまで
- 移動時間・・・患家を出て次の患家に到着するまで
- 1時間で3人など到底無理
- 順調なら2時間で5人ぐらいは可能
- 週に40人程度が目一杯の話がある(午後のみ想定)
- 1人5分ぐらいで余裕
- 10〜15分ぐらい
- 早ければ5分で済む
- 計算したら8分ぐらいかな
-
在宅時間:15分
移動時間:15分
これもまた集めたデータがバラバラで結論を出し難いのですが、とりあえず全診療回数の5%ぐらいとしてみます。たとえば1週間に40診療回やれば38回が定期で2回が臨時です。5%が高いか低いかも異論は多いでしょうが、後の話のためにあえてこの水準にしています。それと5%は全臨時往診回数の事を指すのではなく、あくまでも定時(13時〜17時)の4時間の間に発生するものです。
現在の採算ラインは40人程度がラインで60人ぐらいで相当余裕になると聞いたことがあります。これも外来診察数との兼ね合いがありますが、在宅専従に近い、つまり外来収入を殆んど期待しなくとも40人で採算ラインと仮定します。まあ経営的には50人ぐらいは欲しいと言ったところでしょうか。おおよそこんなぐらいが現在の採算ラインとします。
これが恒例の梯子外しが始まると、どこまで採算ラインが上るかです。これについては極北で100人説があるのは先日紹介しました。100人と言われても門外漢には想像し難いので、上記で推測したデータでどれぐらいのものになるかのシミュレーションをやってみます。
2時間に1人モデルでは週に40診療回、2週間で80診療回となります。このうち5%の臨時を引くと76人が担当できるとりあえずの上限になります。この辺を表にすると(2週間モデルです)、
診療時間 | 移動時間 | 診療回数 | 担当患者数 |
15 | 5 | 120 | 114 |
10 | 96 | 91 | |
15 | 80 | 76 | |
20 | 69 | 65 | |
25 | 60 | 57 | |
30 | 53 | 51 |
まあこんな感じです。診療時間の短縮は難しいですが、移動時間が30分でも経営的には採算ラインを越える事は机上では可能です。ここで外来18時間要件が無いと仮定し、午前午後に3時間ずつの6時間を在宅診療時間にあてたらどうなるかです。
診療時間 | 移動時間 | 診療回数 | 担当患者数 |
15 | 5 | 180 | 171 |
10 | 144 | 137 | |
15 | 120 | 114 | |
20 | 103 | 98 | |
25 | 90 | 86 | |
30 | 80 | 76 |
もちろん余裕でクリアします。
4時間モデル | ||||
移動時間 | 上限 | 90% | 80% | 70% |
5 | 114 | 103 | 91 | 80 |
10 | 91 | 82 | 73 | 64 |
15 | 76 | 68 | 61 | 53 |
20 | 65 | 59 | 52 | 46 |
25 | 57 | 51 | 46 | 40 |
30 | 51 | 46 | 41 | 36 |
6時間モデル | ||||
移動時間 | 上限 | 90% | 80% | 70% |
5 | 171 | 154 | 137 | 120 |
10 | 137 | 123 | 110 | 96 |
15 | 114 | 103 | 91 | 80 |
20 | 98 | 88 | 78 | 69 |
25 | 86 | 77 | 69 | 60 |
30 | 76 | 68 | 61 | 53 |
さて梯子が外されて採算ラインが上った時です。これもちょっとしたシミュレーションですが、某巨大掲示板由来の用語を使って表現して見ます。表の単位は担当患者数にしています。
採算ライン | フツクリ | ウハクリ |
40 | 50 | 60 |
50 | 63 | 75 |
60 | 75 | 90 |
70 | 88 | 105 |
80 | 100 | 120 |
90 | 113 | 135 |
100 | 125 | 150 |
梯子が外されるとは単価も下がるので、フツクリ・ライン、ウハクリ・ラインの人数も採算ラインの増加以上に増えます。先日100人説を出しましたが、ここまでになると4時間モデルで移動時間5分で90%以上の稼働率が必要になります。こうなるとたぶん経営として成立しなくなると考えられます。6時間モデルでもきつくて、移動時間15分で稼働率90%以上からでやっと成立です。 100人はいくらなんでも極北なので、せめて採算ライン80人で考えても、4時間モデルでは移動時間10分の稼働率90%以上ですから、これも殆んど成立するところは無い気がします。6時間モデルなら これも標準回モデルなら経営は成立しそうですが、移動時間は医療機関なり医師の努力でどうにかなるものではなく、地理的条件に縛られますから、成立不可能のところは多々生れてきそうな感じがします。
あえて私が実感できるものに在宅の診療回を置き換えると、2週間の診療回数は、普通の外来のみの診療所の1日の診療人数の感覚にやや近いかもしれません。小児科診療所ならそんな感じです。立地条件によっても変わりますが、40人ぐらい来れば何とか採算ラインに乗り、50人ぐらいになれば一息つけます。逆に連日100人になってくると体がもたない感じです。
在宅診療がそんな感じなのかどうかは存じませんが、いつの時点でどこまで梯子が外されるかで上記のシミュレーションは変わってくると思っています。甚だ粗っぽいシミュレーションで異論・反論も多い事かと存じますが、標準モデル的にどれほどの受け持ちが可能かの理論武装を在宅に従事される方はこれから必要と思っています。もちろんこんな雑な推測に依るものではなくです。
梯子の外され方の一つの指標と言うか目安になるのは施設医療のコストです。在宅推進の大きな要因の一つに終末期の濃厚治療による医療費の高騰の抑制があります。これが施設医療のままでは抑制の手立てが難しいので在宅にシフトさせているはあると見ています。現在の採算ラインも施設の治療に較べるとこれでも「安い」ぐらいの感覚でしょうか。
この施設のコストもDPCにより抑制傾向が進んでいるの情報もあります。在宅コストは施設より安くなければ医療政策として意味がなくなりますから、施設コストが下がれば相対的に在宅のコストも下げられるだろうです。これが今後どういう速度で展開されるかは・・・私には予想できませんが、いずれそうなるだろうぐらいは予想可能と思っています。
まあ外来だけの診療所の扱いも似たようなものになっていく可能性もまた十分にありますから、他人事ではありません。これから10年後、いや東京五輪が開催される頃にはどうなっているかなんて・・・あんまり先の事は心配しないようにしておきます。したところでどうにもならない訳で、「その時に考える」以上のものはできないですし・・・
てな訳でもありませんが、今週は在宅連載になりましたがこれで一応の打ち止め。明日は休載にさせて頂きます。情報提供に御協力頂いた方々に感謝します。