風疹ワクチン本数考2

前にやった風疹ワクチンの推測です。


厚労省6月時点シミュレーション
7月 8月 9月
月始在庫 688201 288600 -31749
任意接種数 350000 350000 350000 1050000
定期接種数 165000 165000 165000 495000
新規入荷数 115399 194651 528453 838503
月末在庫数 288600 -31749 -18296
厚労省7月時点シミュレーション
7月 8月 9月
月始在庫 664047 244553 44204
任意接種数 350000 350000 350000 1050000
定期接種数 165000 165000 165000 495000
新規入荷数 95506 314651 528453 938610
月末在庫数 244553 44204 57657

このシミュレーションで確実なのは7月頭の在庫数だけです。任意も定期も推測が入っており新規入荷もまた然りです。これが7月頭のデータからの推測なんですが、7/29付NHKニュースでは、

風疹の流行で、この夏にもワクチンが一時的に不足するおそれが出ていましたが、その後、生産の前倒しなどで全国のワクチンの在庫が80万本を超え、厚生労働省はワクチンが不足する可能性は少なくなったとしています。

ほぉ、35万本/月のペースなら月末には25万本弱になるはずの風疹ワクチン数が80万本になるとしています。理由は、

しかし、流行のピークを過ぎて予防接種を受ける人が減ったことや、ワクチンのメーカーが生産の前倒しなどを進めた結果、今月19日の時点の在庫は全国でおよそ82万本に上っているということです。

あえてピックアップしておくと、

  1. 任意接種者の減少
  2. メーカーの生産の前倒し
7月末を80万本としてシミュレーションを考えてみます。まず任意接種者の減少の推測ですが2つの手がかりらしいものがあります。
  • 7/19時点の在庫数が82万本
  • 7月末の在庫数が80万本
つまり7/20〜7/31の間の在庫数の減少が2万本程度と予想している事になります。実はこれは何の手がかりにもなりません。つうのも月間の定期接種を16万5000本と予想したら7/20〜7/31の間だけでも余裕で5万本を超えてしまうからです。わかるのは7/20〜7/31の間に大量の新規入荷がある予定の話にしかなりません。判るのは35万本/月より接種人数は減っているのだろうぐらいです。ではシミュレーションです。

7月頭

シミュレーション
7/19シミュレーション
7月 35万本 30万本 25万本 20万本 15万本
月始在庫 664047 664047 664047 664047 664047 664047
任意接種数 350000 350000 300000 250000 200000 150000
定期接種数 165000 165000 165000 165000 165000 165000
新規入荷数 95506 650953 600953 550953 500953 450953
月末在庫数 244553 800000 800000 800000 800000 800000

7月頭予測での新規入荷数は9.5万本ぐらいでした。これが「前倒し」により増えたのですが任意接種35万本/月の予想で新規入荷65万本、15万本/月で45万本です。えらい急に増えたものだと思います。気になるのはこれが前倒しである点です。つうのも7月頭のシミュレーションでは7〜9月の新規入荷数の予測は94万本ほどです。7月に任意接種15万本/月で45万本ですから残りは50万本ほどになります。さらなる「前倒し」が続くんでしょうか。 あくまでも「なんとなく」ですが厚労省の風疹対策は流行阻止ではなく徹頭徹尾「ワクチン本数確保」が主題であったように見えます。風疹流行は去年から起こっています。起こってはいますが厚労省が気にしたのは、
    風疹流行で起こりつつある接種ブームにどう対処するか
これは幸いな事に昨年度で終了となった定期接種の3期・4期分がタナボタの様に手に入り「万全」で臨んだのが年度始めだったです。なおかつ当初はそれで足りるかと言うより、「そんなに作ったら余らないか」の懸念の方が強かったのは明らかです。定期接種の3期・4期分も当初見込みでは全量でなく、70万本ほど減らしていたのがその傍証です。 これが急転したのは6月で任意の接種本数が30万本を越え、このペースでいくと在庫がなくなりワクチンパニックが起こるの予測です。そのために取られた対策が、
  1. 接種対象の絞込み
  2. 流行はピークを超えたのアピール
ピークを越えたの観測は統計上はある意味誤っていないと思いますが、ちょっとどうかと思うところがあります。国立感染症研究所の速報は28週まで行われていますが、直近の28週は追加分が必ず増えるので27週までのデータをグラフにして見ます。
ちょっと複雑な構成のグラフですが、全例報告が始まった2009-2011年は1年間の患者数で表しています。2012-2012年はアウトブレイクが始まっていますから週毎のデータで表しています。2013年の推移を見るとピーク時の半分程度に減っており「ピークを越えた」の見方は可能かと思います。そのピークを越えた数でも、
  1. 2009-2011年の年間数を1週間で上回っている
  2. 2012年のピーク時(週毎)の約4倍程度はある
今年のピーク時が非常に高かったので「減った」ないし「ピークを越えた」の印象があるだけで、まだまだ余裕のアウトブレイク中であるのは確実かと存じます。データはこれぐらいにして、個人的に興味深かったのはマスコミが非常に協力的だった点です。良いか悪いかの評価は別にして、非常に謙抑的で決して風疹パニックを煽る方向にお進み遊ばされなかったと言うところです。どこまでお考え遊ばされているかは不明ですが、厚労省の方針にピッタリお寄り添いされる姿勢に終始されておられます。まさかの憶測ですが、
    ワクチンを使わずとも自然終息する実績を作りたい
このために前向きの姿勢で善処されている気がなぜかしています。面白いものです。