風疹梅雨空南風

昨日はついにネタを拾えませんでした。書きやすいネタがなかったのが一つと、風疹問題に心が傾いてしまい他のネタを練るにも気が散ってしまったのもあります。厚労省の現在の方針と言うか対策の流れは、

  1. 風疹が流行してしまった
  2. ワクチン接種の助成が広まってしまった
  3. とりあえず平年の7倍ぐらいのワクチンを用意して準備万端と考えた
  4. それでも足りなくなる情勢が出現した
ここでなんですが、厚労省が用意したワクチンはあくまでも任意接種の希望者が増えても対応できるかどうかが基準であり、流行阻止・抑制のものでないのが根本です。たった250万本で流行阻止・抑制が出来ると考えていたのならアホウです。

あくまでも「たぶん」ですが、厚労省の予想は流行しても2000-2005年期程度であろうとし、過剰に用意して余る事への懸念が大きかったと見ています。2000-2005年期ではあんまり起こらなかった「ワクチン接種ブーム」にどう対応するかが課題で対策は考えられたと見ています。ところが2013年になってからの風疹流行の拡大は2000-2005年期の総発生数を1年で上回りそうな勢いになっています。

さらなる問題は2000-2005年期と違い、ネットと言うツールが情報拡散で大きな役割を占め、既製メディアを押さえ込んでも厚労省の予想を遥かに上回る接種者が年度明けから急増した点でしょうか。慌てた厚労省が6月時点で接種抑制の方針を打ち出していますが、これは「ワクチンが足りない」のアナウンス効果になり、これまたネットで情報が拡散される結果になったと見ています。不足するものは欲しくなるのは広告の基本です。


厚労省が打ち出している先天性風疹症候群(CRS)の防止に焦点を絞った接種方針は一見理にかなってはいます。ただ理のモトがかなり危うい気がしています。なぜなら、

    妊娠予定者は確実に妊娠を予想して生殖活動を行っている
そういう方も多いでしょうが、そうでない方も少なくないです。生殖活動は子作りのためにも行なわれますが、子作りに関係なく行われる側面もあります。子作りに関係なく行われた生殖活動から妊娠してしまう事はこれまた実に多いです。世の中皮肉なもので、子作りのための生殖活動では実を結ばずに、そのつもりがなかった生殖活動で妊娠してしまう話なんてゴマンと転がっています。

子作りを意識した生殖活動を行う者はまだしも風疹予防のための時間を作る事は可能です。しかしそうでない生殖活動を楽しむものは意識が低くなります。意識が低くなるだけでなく、妊娠の自覚さえ遅くなります。まあ、自覚に関係なく今どき妊娠したからといって、家に籠りきりになるわけではありません。産休に入るまでは普通に仕事を行います。仕事となれば通勤があり、とくに大都市圏なら満員電車による密室すし詰め状態を連日遭遇するわけです。

風疹流行下ではロシアンルーレットを毎日やっているようなもので、

  1. 妊婦とくに初産婦は自分に風疹の免疫があるかどうかは殆んどの方は不明
  2. 通勤から仕事場、ショッピング、家庭に至るまで風疹患者に接触するかどうかは運次第
風疹は発疹が出現する1〜2日前には他者への感染能力を有しており、発疹出現前の診断は不可能です。風疹が流行するとはそういう風疹患者のウロウロ率が高くなり、高くなるほどCRSのロシアンルーレットの弾数は増えます。まあ、引き金を引く回数も多いことですし。


もう一つの問題点は風疹ワクチンは国産品に限るの暗黙の大前提です。厚労省の風疹対策でよく非難されるのは2000-2005年の風疹流行を経験していたにも関らず、今に至るまで積極的に風疹撲滅に取り組まなかった点です。そこも非難ポイントではあるのですが、もう一つ大きな失策はあると思っています。アメリカのように風疹撲滅に進めなかったのは無理して置いてみても、流行時対策も放置していた点でしょう。

流行(アウトブレイク)が起こった時には、時間との競争になりますから必要なワクチンを確保する事がまず第一の仕事になります。ワクチン確保が厚労省の真っ先に行なう課題です。そのためには国産メーカーにそこまでの規模を持たせるは一つの考え方です。2005年からでも7年ありますからこれを怠っていたは指摘してもよかろうと思います。

ここで国産メーカーではそういう緊急対応が難しいと判断されたのなら、緊急輸入のための道筋を予め作っておく必要があったと私は思っています。たしかに今から緊急輸入を行うとなれば手続きに時間がかかるのは理解します。新型インフルエンザの時に「超特急」でやって8月に治験を急いで行うの方針決定を行い、実際に接種できたのは翌年の2月の半ばを過ぎてからです。つまりは約半年です。

アウトブレイク時に国産ワクチンが到底足りない事を厚労官僚が知らないわけがありません。知っていたにも関らず2005年から、いや2000年からでも良いかもしれませんが、ワクチン確保対策を棚上げ・先送りにしてきたツケが現在だと思っています。

前にも書きましたが麻疹の有効抗体価保有率は風疹より低くなっています。麻疹も2007-2008年にアウトブレイクを起しています。世論及び世論の鏡である政治が流行の無い時に動きたがらないのは悲しいですが現実です。そういう現実を変えるには、これまた悲しいですが流行と言う機会をとらえてアクションに出る必要があります。そのための準備を怠っていたの指摘は十分に許されるとかと存じます。


でもって風疹とまったく関係ないのですが明日は休載にさせて頂きます。