今年の手足口病

あんまり臨床の話は書かないのですが、たまには町医者らしい話題を。

地域性があるので一概には言えませんが、今年の手足口病はチト手強い気がしています。手強いのは治療でなく診断です。治療は診断さえ付けば自然治癒を待つだけなんですが、その診断がかなり手強い感じです。まずあくまでも印象ですがどうも発熱率が高い感じがしています。例年はもう少し無熱例が多い感じなんですが、今年は多い印象です。

発熱の有無は診断にはそれほど影響しないはずなのですが、発疹の出現がかなり遅れるパターンが例年より多い気がしています。つまり発熱を主訴に受診した時点では殆んど手足の発疹が確認できないケースがいくつか出てきています。ゼロの場合もありますし、あっても1〜2個程度で、それも手足口病にしては淡目の発赤疹で、「これは手足口病ではない」としたら、翌日なり翌々日に「こんなん出ましたけど」でギャフンです。今は注意してムンテラしています。

それと発疹の出現分布が例年とチト違う感じです。例年なら手掌・手背もしくは足蹠・足背から躯幹部に広がる事が多いのですが、むしろ肘部・膝部に集簇性気味に多く出る印象が強いところがあります。その延長線上で肘部・膝部にあっても掌蹠部に殆んど見られないケースも少なからずあります。発疹の分布については毎年微妙に違うので「今年はこのパターン」ぐらいで良いのは良いのですが、個人的に発疹の形状に驚かされました。神戸市感染症発生動向調査情報に

手足口病は水痘との鑑別に注意が必要な大きな水疱を呈している

こうは記載されていたのですが、いくらなんでも手足口病と水痘を見間違えるのは大げさじゃないかと思っていました。そんなゴッツイのがあるのなら

    「是非、お目にかかりたいものだ」
こう嘯いていたら、言うんじゃなかった、その手の凄いのが実際に受診しました。恥ずかしながら医師になって初めてあんな物凄いのを見ました。発疹の分布が明らかに水痘と違い、手足口病的であるのは判りましたが正直な話、
    これを手足口病と診断して良いのだろうか?
なにか他の疾患じゃなかろうかの疑惑が頭に渦巻いたのは白状しておきます。幸い受診から3日ほどで見る見る枯れてくれたので安堵しましたが、受診時期によっては水痘との鑑別が難しくなる可能性はあると素直に思いました。私だって水痘との誤診はやらかさないと言えません。そうそう、その物凄い症例ですが「入院」も頭をよぎりましたが、幸か不幸か皮疹が物凄い割には口内炎は視認できないほどで「食べられた」から外来で見れたと言うところです。

あんまり口内炎にならないのは今年の一つの特徴なのかなぁ? それともたまたまそういう症例だったのかなぁ? あの皮疹の勢いで口内炎が広がっていたら絶対入院だと思っています。食事どころか水さえ喉を通るとは思えません。ただ入院になっても点滴取るのは大変そうだと思った次第です。だって手背も足背も物凄い状態でしたし・・・あんなんがポコポコ受診されたら正直なところ少々大変だなってところです。

べつにオチはありません。当ブログ的には珍しいですが小児科開業医らしい事もたまには書かないと、本当に小児科医かと疑われそうなので、こんな日もあると言う事でヨロシク。