研修マッチ者の充足率

3/14付読売新聞より、

医師確保にドクターバンク

 大学卒業後の医学生臨床研修先と受け入れ病院を組み合わせる「マッチング」で充足率が低い県内の医師不足対策として、県は今夏にも地域医療支援センターを新たに設置し、県内勤務を希望する医師に病院を紹介する「ドクターバンク事業」など医師確保策に乗り出す。

 県内の医師数は2010年12月現在2445人。人口10万人あたり223・6人で全国平均の219・0人を上回るが、診療科に偏りがあり小児科や産婦人科医師不足が目立つ。臨床研修医の確保は今春、県内12病院の募集人員101人に対し48人にとどまり、充足率47・5%で全国45位と低迷している。

 同センターの設置は、医師の不足や地域偏在などを解消するため、厚生労働省が2011年度に始めた補助事業。若手医師の研修の充実や指導医の配置、へき地勤務の支援などで医師確保や定着を図る。

 県は同センターを庁内に設け、新たにドクターバンクをスタートさせる予定で、県内勤務を希望する県外の医師に病院を紹介するなど橋渡しを行う。県医師会や富山大などの関係機関と調整して、医師不足地域への派遣なども検討していく。

もうドクターバンク事業については論評は不要かと存じます。それと富山県の医師数とかマッチ者数は直接関係ありません。気になったのは、

    臨床研修医の確保は今春、県内12病院の募集人員101人に対し48人にとどまり、充足率47・5%で全国45位と低迷している。
マッチ率を低迷の指標にされている点です。指標にしても問題は一見なさそうですが、指標にするからにはマッチ定員が都道府県毎にある程度公平に分配されている前提が必要です。現在のところ医師が余ってどこかの都道府県に売り飛ばしたいところは無いと判断しています。全国一の東京だって「足りない」としているぐらいです。

そこでこれまた問題は残る指標かもしれませんが人口比で考えて見たいと思います。まあ、この辺は2012年度の定員であってもマッチ者の25%増しですから、そんなには問題にならないと推測しました。手法は単純で2012年度の総マッチ定員数10519人を人口比で各都道府県に割り振り、これに対する実際のマッチ者比率を割り出してみます。結果です。

順位 現行 人口配分比修正
都道府県 マッチ率 都道府県 マッチ率
1 京都 96.5 沖縄 129.2
2 沖縄 94.3 京都 126.0
3 大阪 89.0 東京 121.1
4 兵庫 88.6 石川 108.9
5 東京 88.2 岡山 106.7
6 神奈川 87.8 和歌山 100.6
7 愛知 86.2 福岡 99.0
8 福岡 85.6 福井 92.3
9 和歌山 84.7 佐賀 91.1
10 奈良 83.5 長崎 81.6
11 岡山 83.0 大阪 81.5
12 熊本 80.7 島根 81.3
13 栃木 74.9 高知 79.4
14 千葉 74.6 神奈川 76.7
15 広島 74.3 愛知 76.3
16 山口 73.9 栃木 75.9
17 茨城 73.6 徳島 75.7
18 群馬 73.4 奈良 74.4
19 岐阜 72.9 兵庫 72.6
20 滋賀 72.5 山口 71.3
21 三重 71.5 山梨 69.5
22 静岡 71.2 香川 69.4
23 佐賀 70.3 鳥取 68.0
24 長野 67.1 青森 67.0
25 北海道 65.5 愛媛 66.1
26 宮城 65.4 秋田 66.0
27 山梨 65.3 山形 64.3
28 長崎 64.9 熊本 63.8
29 愛媛 63.9 滋賀 63.7
30 宮崎 62.4 岐阜 61.8
31 福井 62.2 鹿児島 61.6
32 石川 59.3 三重 61.4
33 青森 58.5 宮城 60.6
34 香川 56.4 北海道 60.3
35 埼玉 56.2 長野 60.1
36 島根 55.2 大分 59.8
37 大分 54.6 広島 59.0
38 高知 53.2 千葉 57.3
39 鹿児島 52.7 宮崎 56.4
40 山形 52.1 群馬 55.5
41 徳島 51.6 静岡 54.6
42 新潟 51.4 岩手 54.1
43 福島 50.0 茨城 53.8
44 岩手 47.6 富山 53.5
45 富山 47.5 新潟 48.0
46 秋田 47.2 福島 46.0
47 鳥取 44.0 埼玉 35.9

案外興味深い結果で、もう一度言いますがマッチ定員はマッチ者の25%増しです。人口配分比にしてもやはり25%増しになります。そいでもって25%増しでも定員を振り切る都道府県があります。見ればそのままですが、沖縄、京都、東京、石川、岡山、和歌山です。もちろんマッチ定員は研修病院毎の積算ですから、県内に有力な研修病院がどれだけあるかで左右されますが、個人的に石川県と和歌山県はちょっと意外な感じがしました。 それと定員あたりの研修医配分は75.2%が全国平均ですから、表で言うと徳島、奈良あたりが境目になります。いちおう記事の富山にも触れておくと現行は45位ですが修正計算すると44位に繰り上がっています。富山は苦戦しているのは間違いありません。順位が現行と人口配分比でかなり入れ替わるのですが、ちょっと見難いですがマップにしてみました。
あくまでも感触ですが、人口配分の比の方が現状に近い気がします。とりあえず現行のマッチ定員に対する充足率を医師不足の指標にするのは、あんまり良くない気がします。もっとも記事になった富山の場合は間違いではありませんでした。もう一つ表を作って見ました。マッチ者定員の現行と人口比配分との差の一覧表です。
増加 減少
東京 400.2 埼玉 -214.3
石川 80.5 千葉 -118.4
京都 66.1 神奈川 -94.8
福岡 66.0 兵庫 -82.9
岡山 45.8 静岡 -72.0
沖縄 42.9 愛知 -69.4
秋田 35.6 茨城 -65.3
福井 31.9 大阪 -61.2
高知 31.1 広島 -48.4
長崎 30.4 群馬 -39.9
徳島 30.3 北海道 -35.8
島根 28.0 熊本 -31.5
鳥取 26.5 岐阜 -25.8
鹿児島 23.9 三重 -21.4
山形 22.6 長野 -18.3
佐賀 20.7 滋賀 -14.2
香川 18.9 宮城 -14.0
青森 16.6 福島 -13.1
和歌山 15.5 新潟 -13.0
岩手 14.9 奈良 -12.6
富山 11.2 宮崎 -9.0
大分 9.4 山口 -4.3
山梨 4.5
愛媛 4.0
栃木 2.4

色んな見方はあるとは思いますが、増加都府県はそれだけ研修医を迎え入れるキャパシティがあるとも言えそうです。各都道府県のマッチ定員は上でも書きましたがあくまでも、研修病院の受け入れ数の積算です。受け入れる余力の大きいところほど研修医の選択に副う研修病院が存在する確率が高くなるとは言えます。逆に少ないところは、もともと選択枝が乏しいとも言えます。な〜んか、定番の都県が上位にいるように感じるのは気のせいかな?