退屈しのぎの検証レベルですが、前に新研修医制度は本当に医師偏在を助長しているかをやった時に
- そもそもね、6年前の医学部合格者の出身地別人数を示して、「鮭は川に戻ったかどうか、」、とか考察したほうがいいかと思いますね
- 対比するなら都会vs地方ではなくて、元々大学研修医がその地域でどれくらいの割合を占めていたかが問題になるのでは
-
新研修医制度で研修医が大都市部の病院に流出して偏在を加速させている
統計処理としてはごく単純に標準偏差を用います。比較するのは新研修医制度の2年前の平成14年と新研修医制度5年目の平成20年です。
年度 | 平成14年 | 平成20年 |
47都道府県の標準偏差 | 34.7 | 35.6 |
確かに0.9ポイントほど数値が大きくはなっていますが、これは47都道府県全体としては変わっていないと言っても良いと考えます。標準偏差は全体のバラツキを見ただけですから、新研修医制度による研修医数の変動が各都道府県の医師数にどれほどの影響を与えたかを見てみます。全体の標準偏差は変わらなくとも、都道府県毎の影響は別だからです。
ここで指標としたのは人口10万人対の医師数と研修医数の増加率です。研修医数の増加率の計算の前提は
- 新研修医制度前の平成15年をまず基準とする。
- 研修医数の変動があるので、平成15年基準で補正する
- 平成15年時の各都道府県の研修医数が6年続いた時と、実際の研修医数の増減率を比較する
10万人対医師数全国平均増加率 8.7% | |||||
平均以上 | 平均以下 | ||||
都道府県 | 医師数増加率 | 研修医増加率 | 都道府県 | 医師数増加率 | 研修医増加率 |
沖縄 | 21.7 | 58.1 | 兵庫 | 8.6 | 0.0 |
埼玉 | 14.9 | 85.9 | 滋賀 | 8.4 | 0.0 |
千葉 | 13.5 | 9.3 | 鹿児島 | 8.4 | -9.6 |
茨城 | 12.5 | 38.7 | 長崎 | 8.4 | -16.6 |
佐賀 | 12.0 | -5.0 | 福岡 | 8.3 | -12.2 |
福井 | 11.8 | -6.8 | 大阪 | 8.3 | -7.1 |
神奈川 | 11.8 | 48.2 | 京都 | 8.3 | -28.1 |
和歌山 | 11.5 | -1.3 | 北海道 | 7.9 | 11.5 |
宮城 | 11.5 | 29.2 | 宮崎 | 7.8 | -13.5 |
長野 | 11.3 | 9.9 | 栃木 | 7.8 | 4.1 |
奈良 | 10.3 | -22.7 | 島根 | 7.7 | 70.9 |
秋田 | 10.3 | 19.3 | 山口 | 7.7 | -25.9 |
岐阜 | 10.0 | -12.1 | 岡山 | 7.6 | 5.6 |
東京 | 9.3 | -16.6 | 福島 | 7.5 | 5.1 |
山梨 | 8.7 | -11.4 | 徳島 | 7.3 | -26.1 |
* | * | * | 岩手 | 7.3 | 85.7 |
* | * | * | 静岡 | 7.0 | 57.3 |
* | * | * | 鳥取 | 6.9 | -26.3 |
* | * | * | 富山 | 6.3 | -3.6 |
* | * | * | 愛知 | 6.1 | 15.0 |
* | * | * | 青森 | 5.8 | 6.3 |
* | * | * | 香川 | 5.8 | 16.1 |
* | * | * | 愛媛 | 5.5 | 9.6 |
* | * | * | 新潟 | 5.4 | 2.2 |
* | * | * | 三重 | 5.1 | -2.0 |
* | * | * | 高知 | 5.1 | -9.5 |
* | * | * | 群馬 | 4.9 | -21.4 |
* | * | * | 大分 | 4.5 | -3.8 |
* | * | * | 熊本 | 3.9 | -5.1 |
* | * | * | 石川 | 3.4 | -13.8 |
* | * | * | 広島 | 1.9 | -18.8 |
とりあえずのところ全国平均以上に医師数が増えているのが16都道府県です。ではそれらの都道府県が研修医獲得の勝ち組かと言えば、9都道府県が勝ち組で、7都道府県は負け組になります。よく話題になる奈良も医師数増加では勝ち組ですが、一方で研修医獲得では惨敗組に入っています。一方で平均以下の医師数増加の負け組グループの下位は研修医獲得でも負け組の傾向が見れない事もありませんが、全国2位の研修医獲得勝ち組である岩手は医師数増加では負け組に入っています。静岡や島根も似たような傾向にあります。
なんとも言えない所はありますが、研修医獲得の勝ち組が必ずしも医師数増加の勝ち組になっていないと判断しても良さそうです。それと医師数増加都道府県は良くみると首都圏に多い事がわかります。16しかない勝ち組のうちで、埼玉、千葉、茨城、神奈川、東京、ついでに山梨も入っています。
もうちょっとだけ詳しく見てみると、平成14年時点で医師数は23の都道府県が平均以上になっています。ここで医師数増加率平均以上16都道府県が「もともと」は平均以上であったか、そうでなかったかを表にすると。
都道府県 | H.14医師数 | H.20医師数 | ||
医師数 | 順位 | 医師数 | 順位 | |
沖縄 | 179.5 | 32 | 218.5 | 22 |
埼玉 | 121.8 | 47 | 139.9 | 47 |
千葉 | 141.9 | 45 | 161.0 | 45 |
茨城 | 136.6 | 46 | 153.7 | 46 |
佐賀 | 214.0 | 19 | 239.6 | 15 |
福井 | 193.6 | 24 | 216.5 | 24 |
神奈川 | 162.2 | 43 | 181.3 | 39 |
和歌山 | 230.5 | 13 | 257.0 | 9 |
宮城 | 183.5 | 30 | 204.6 | 28 |
長野 | 176.5 | 35 | 196.4 | 33 |
奈良 | 187.7 | 27 | 207.1 | 27 |
秋田 | 178.4 | 34 | 196.8 | 32 |
岐阜 | 161.7 | 44 | 177.8 | 41 |
東京 | 253.7 | 4 | 277.4 | 3 |
山梨 | 187.4 | 28 | 203.7 | 29 |
全国 | 195.8 | * | 212.9 | * |
平成14年時点で平均以上増加16都道府県のうち13都道府県が「もともと」は平均以下になっています。またこの増加により2県が平均以上になっています。これは素直に見て、新研修医制度による是正効果と見れない事はありません。とくに医師数下位御三家である千葉、茨城、埼玉にピンポイントの様に効果があったのはなかなかのものとも評価できます。
本当は勤務医数でやるべきだったのですが、後の祭りになったので後日のお楽しみにして、研修医も医師数も増加している県でも「医師不足」は唱えられています。なぜには今日は解説は控えます。今日はそちらより研修医獲得数が医師数増加に必ずしもつながっていない理由の方を考えたいと思います。原因は色々あるでしょうが、至極単純には前期研修終了後の異動があるとして良いと思います。
前期研修地に選んだからといって、後期研修からさらに常勤医なりに定着するかと言えば、そうでもないと言う事でしょう。この辺は開業で抜ける要因もあるので断言は出来ないのですが、
研修医獲得 | 医師数増加 | 解釈 |
勝ち組 | 勝ち組 | 獲得した前期研修医が順調に定着 |
負け組 | 勝ち組 | 前期研修医は少なくとも、それ以降に流入している |
勝ち組 | 負け組 | 獲得した研修医数以上に医師が流出 |
負け組 | 負け組 | 研修医の獲得も負け、流出も多い |
わざとらしい色分けですが、これに従ってマップを作ってみます。