三重遭難で亡くなられた方々の御冥福を謹んでお祈りします。そうそう「三重」と言っても「みえ」ではなく「さんじゅう」ですから読み方に御注意下さい。
それにしてもえらい惨事になったもので、まずハイカーが遭難し、それを救助に向ったヘリが墜落し、それを取材に向った記者とカメラマンがさらに遭難です。なんとも言い様が無いのですが、最初の二つの遭難はとりあえず置いておきます。関心は最後の三重目です。どうやらマスコミ情報では、
- かなり軽装で現地へ
- カメラマンは山岳経験者、記者は現地記者
- ガイド付だったが途中で一旦引き返す
- ガイド無しで再挑戦して遭難
ただ引き返す途中に頭に浮かんだのは何だろうになります。考えられるのは、
- これだけ険しいから他社も到着しないだろう
- もしかしたら他社は別ルートから到着しているかもしれない
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特ダネ・・・自社だけ到着する
特オチ・・・自社だけ到着しない
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全社が現場に到着しない
- このまま引き返し、他社も現場に到着しない事をひたすら願う
- 再挑戦し、特ダネの可能性を求めるのと、特オチの危険性を回避する
あえて醒めて考えれば、事故現場の写真なり映像がそんなに大事だったかになります。そりゃ、TVニュースの彩りとして現場の映像があった方が望ましいのは確かですが、命を懸けてまでになると疑問は疑問です。もっとも疑問と感じてしまうのは、後出しジャンケンで論評しているからだけで、現場の取材班にしてみれば「もうちょっと行けば見えるはずだ」と思っていたでしょうし、ルートの険しさも「ここを越えれば、後は・・・」であったとは思われます。
そんな事を考えると、この事故を未然に防ぐ手段はなかったかもしれません。あえて防げる要因を探せば、県警が取材自粛を求めていたようですから、これに素直に応じていた場合のみです。ここも実はかなり無理そうで、今回の件ではっきり確認された事ですが、県警の取材自粛要請程度はさしてマスコミは気にしていません。だから、こうやって現実に取材に出かけ遭難しています。
どうもマスコミ的には県警の取材自粛要請に従って、特ダネを逃したり、ましてや特オチになろうものなら社内的には失態になるのが感覚だとも考えられます。仮に自粛要請に応じて、他社が「抜いたら」、後で思想闘争会が開かれる状況を想定します。つまり現実的には県警の自粛要請は歯止めにならない可能性が強いと推測されます。
そうなると今回の悲劇を防ぎえた可能性は、天候の悪化ぐらいしか考えられません。土砂降りの雨でも降って、「こりゃ、誰も(マスコミは)近づけない」と取材班(含む本社も)が判断した場合のみです。それも1日ぐらいでは難しく、日数が経って、事故現場の映像を取材する価値がなくなるまでです。そうならない限り険路への挑戦は続けられる事になります。
それ以外のシチュエーションでは、県警の自粛要請は無視されますし、現地に行けば特ダネは欲しいし、特オチは避けたいの心理が強力に働き、遭難に向かって驀進してしまいます。やはり起こるべくして起こった事故と考えるのが妥当のようです。さらに悲劇的なのは同様のシチュエーションがあれば必ず同じ状況に陥り、同じ事故が起こります。どこかのフレーズの出来の悪いもじりですが、
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その名を記者魂! 地上に蠢く幾多のマスコミの下、一社スッパ抜きの特ダネを巡って悲劇は繰り返される