都知事と天気予報

天気予報の今昔

私の子供の頃にも天気予報はありました。もちろん明治の昔からあるのですが、かつては当たらないものの代名詞みたいに揶揄された時代は確実にあります。私が覚えている代表的なジョークなら、

  • NHKニュースで唯一冗談を言ってる時間
  • 気象台には秘密の部屋があり、予報官がそこにある秘蔵の下駄を投げて決めている
実際にもよくハズレたのですが、天気予報とはそんなものだの常識があったと見ても良いかと思っています。当時の予報の精度が低かったのは情報不足と、情報の分析精度の限界はあったとされます。聞いた話ですが、気象の変動を予測するには膨大なデータの処理が必要であり、それだけの情報量もなく、これを分析するだけの計算能力もなかったぐらいで宜しいかと思います。

門外漢なのでサラっとしか言えませんが、数学的には複雑系と言われるジャンルに属し、小数点のかなり小さな数字の変動一つで、気象の変動の結果は大きく変わるとも聞いたことがあります。怪しい記憶なのでその程度の信用性で聞いといて欲しいのですが、小数点以下10桁程度の数値の変動でも、中長期予報となれば影響はかなり大きくなると読んだ事があります。

とは言え最近の予報精度の向上は目覚しいものがあります。これは情報量の増大と分析精度の向上への努力の賜物と思っています。それでもハズレる事はありますが、10年ドロッポ様が何度かコメントされたように、

    時々わざと外している
なんてかつての逆のジョークも出るぐらいです。


2時37分の一つ目のツイート

そうやってかつての「あたる事もある天気予報」から「ハズレる事もある天気予報」に確実に進歩して目出度い限りなのですが、これでも不満がテンコモリの都知事がいらっしゃいます。ツイッターより、

天気予報は科学なのに責任に対する心理に支配され歪んでいる。成人の日に外れたので過剰に積雪量を2度も見積もった。多めに先読みすれば責任逃れができるとする姿勢がもし3度目にあったら責任を追及します。狼少年は許さない。気象庁の自己保身のためにどれだけの組織、人が迷惑を与えられたか。

えらく天気予報が外れた事にお怒りのようです。都知事として、

    もし3度目にあったら責任を追及します
都知事気象庁に責任を追及するとなれば東京都が気象庁に損害賠償訴訟でも起されるぐらいでしょうか。文脈をあえて辿っておきますが、
    成人の日に外れたので過剰に積雪量を2度も見積もった
どうも「過剰」に見積もったのが都知事の怒りの原因のようですが、おそらく「過少」に見積もってもお怒りの事だと推測できます。気持ちはわからないでもありません。積雪による障害を予想してあれこれ準備していたのに無駄に終わったぐらいのところでしょうか。私なら予報のように積雪がなくて良かったぐらいにしか感じませんし、そうやって天気予報が時にハズレるのはなんとも思いません。

たぶんですが批判は積雪を予想して、間引き運転にしていた首都圏の鉄道の混乱の事を指しているのだとは思ってはいます。結果としてたいした雪でなかったので無用の混乱を引き起こしたぐらいでしょうか。ほいでも思うのですが、ある程度積雪があり、間引き運転が本当に必要であったら、この混乱は起こらなかったのでしょうか。それぐらいで「今日は雪で休み」なんて会社はどれだけあるだろうと言うところです。

とりあえず都知事の天気予報への認識は、

    100%当たって当然。ハズレたら損害賠償の責任を負って当たり前。
こう解釈させて頂いて宜しそうです。個人的に天気予報のハズレに毒づくのは御勝手(私もやらないとは言えない)ですが、都知事の立場として都がハズレに対して責任追及すると仰っているわけです。それとも東京都ではなくて、都知事個人の事かなぁ? どっちでも取れない事はありませんが、文章の勢い的には東京都が責任を追及すると読んでも曲解とは言えない気がします。理由も明示されていまして、
    天気予報は科学なのに
なるほど科学であれば100%以外は認めないという論拠のようです。そういえば、かつては成功したらラッキーぐらいのものが、関係者の努力により成功率が非常に高くなると、今度は失敗が責任問題になってしまい、成功して当たり前、成功しなければ許さないみたいな現象の一つみたいにも思えます。

それにしても責任追及をしても天気予報はハズレるときはハズレると私は思います。そうなるとハズレる気象庁よりも絶対当たる都立の気象予測センターでも作られるのでしょうか。まあ前知事は銀行まで作った実績がありますから、その程度はたいした投資にならないとは思いますが、責任者に任命されたら・・・やだろうなぁ。すまじきものは宮仕えてなところでしょうか。ハズレたら沖ノ鳥島まで飛ばされそうで怖い。



私が見聞した予測トラブルでこんなものがあります。たまたま小児科と外科で共同に治療するような形態になっていました。残念ながら治療成果ははかばかしくなく、コチコチのターミナル状態になってしまいます。そこで家族から出た質問が

    あとどれぐらい?
定番の質問ですが、医療者にとっても辛いし難しい質問です。ここで小児科側の主治医は「3日」と答え、外科側の主治医は「5日」と答えています。もちろん別々の時間帯に聞かれて、別々に答えています。状態としてはそこまで悪かったぐらいに御理解下さい。この医師の返答に対して家族は烈火のごとく怒られました。理由は、
    何故に2日も違う!
小児科側と外科側の部長が懸命に説明しましたが、なかなか怒りは収まらなかったのは覚えています。後から考えると予め意思統一をしておけば良かったになるのですが、そこまでの配慮に手が回らなかったぐらいです。でもって現実は「4日」でした。


こういうケースも都知事にかかれば医療も科学であり、予測ハズレは責任追及の問題になるかもしれません。意思統一をしていても、そんな予測が当たるかハズレるかは医師ならその時次第なのは良く知っています。つまりハズレる時はハズレるです。私はそう考えていますが、東京都では都知事が頑張っておられる限り、そんな甘い事は言えなくなるかもしれません。

これ以外にも、もっと身近な病気として、インフルエンザはいつ治るかとか、ノロ腸炎はいつ治るかなんての予測も要求されたら厳しいところになるかもしれません。治療予測の定番の「全治○ヶ月」なんてのも、当たるかどうかを厳しく責任追及されるかもしれません。これも東京都民がそこまで要求し責任追及するかどうかはわかりませんが、都知事医療機関を受診された時がチト恐怖です。

どうか都知事在任中は、都知事及びその親類縁者の方々の御健康を深く祈るばかりです。あっ、都知事を辞めてられても個人としての存在は一緒だ・・・できれば東京に住んでいて欲しいなぁ、そいでもって関西に来られた時に間違っても体調をお崩し遊ばされないように。


11時18分の二つ目のツイート

二つ目としましたが9時16分のツイートを一つ挟んでいますから正確には3つ目のツイートになります。

きのうは雪の影響でダイヤが乱れ、いつにも増して過密になった路線もありました。首都圏のサラリーマンはなぜ郊外から満員電車で通勤しなければならなくなったのか。『土地の神話』(小学館文庫)では「東京」の都市開発の起源を徹底的に調べ上げました。http://amzn.to/WuwcdA

「土地の神話」の発売日はアマゾンによると「発売日: 2013/2/6」でツイートの前日です。時間は9時間弱ほど一つ目のツイートより空いていますが、内容的には濃い関連性が感じられます。念を押さなくても良いかもしれませんが、

  1. 一つ目は天気予報のハズレによる交通機関の混乱を指摘したものと考えられる
  2. 二つ目はダイヤの乱れを枕にして満員電車の自著の宣伝
遺憾ながら都知事の新著は読んでおりませんが、
    首都圏のサラリーマンはなぜ郊外から満員電車で通勤
都知事気象庁の責任追及まで言及された交通の混乱の真の原因は、首都圏のサラリーマンが校外からの、しかも満員電車による通勤を日常的に余儀なくされている事は誰でもわかります。今回も「郊外」からはともかくとしても、「満員電車」が日常的でなければ混乱の規模は小さくなっていたはずだからです。もちろん「郊外」も解消できれば言う事はありません。

著書として郊外からの満員電車が出来上がっていった事を分析されたからには、その解消に努める意思表示と受け取って良いかと存じます。これが一介の作家であるとか、評論家であるとか、さらに副知事であればそこまでの権限はないので「懸念」で終らせても何の問題もありません。しっかし現在は正式の都知事です。本を書いて終わりだと思いたくないところです。

まっさか、著書で解消不能を力説され、対処策は

    絶対にハズレない天気予報しかない
な〜んて結論になっていないと思っているのですが・・・。