上様は御乱心

ツイッターより

Time Tweets
2012年12月22日 - 17:04 毎日新聞の一面記事。知人の記者から何本か電話あり。大体、妥当な判断だ。「個別の治療の有効性、安全性の問題と制度論をごっちゃにしている。厚労省が規制をかけたいのでしょうね。そのまま記事にしたんでしょう」とのこと。
2012年12月22日 - 17:07 医療の主体は患者。十分な情報に基づき、自らが決めた判断は尊重しなければならない。多くの自費診療は安全だが、効果が疑わしいもの。それに幾ら払うかは、一人一人の判断だ。パターナリズムを振りかざした医師が「まともな治療じゃない」というが、余計な御世話だろう。
2012年12月23日 - 15:42 毎日新聞 一面トップ。今日も飛ばしています。「幹細胞培養・使用を規制」 再生医療新法 罰則検討。 論拠は「国の認可した民間療法以外は受けてはいけない」、「韓国で規制をしているから、日本も規制すべきだ」。何のための規制がいるか、全く国民視点を欠いています。
幹細胞治療。 まいどお馴染みの再生医療の専門家がでてきて「安全性が担保されていない治療はダメだ」という。ほんとかな?骨髄移植は副作用で30%程度が死亡する。でも承認されている。問題は「患者が納得しているか」「情報開示は適切か」だ。患者は危険な治療を受ける権利がある。
再生医療。 インチキ治療を減らすには色んな方法がある。世論、専門家のピアレビュー、民事訴訟などなど。国の規制は様々な弊害を生む。こんなバカみたいな議論で、先人たちが築き上げたリベラルな日本を失って良いのだろうか?
再生医療の議論で痛感するのは、医師たちの「お上意識」の強さ。普段は厚労省文科省の悪口を言っているのに、インチキな治療があれば、「規制しろ」の大合唱。当事者意識がないのだろう。これが我が国の臨床医療が遅れた原因だと思う。インチキは治療は専門家が淘汰すべき。国を巻き込むべきでない
「お上頼み」の思考停止。困ったら「国の責任だ」を丸投げ。それを煽り部数を増やすメディア。太平洋戦争も、こんな感じだったんだろう。日本の知性の危機を感じる。


この一連のツイートはどう考えてもモトがあります。上様が世に躍り出たのはあの福島大野事件です。この時の上様の活躍は当時を知る者なら誰でも高い評価を与えるものとしても良いと今でも思っています。私もまたそうです。医療界に新たな指導者が出てきた感覚さえ抱かせたとしても過言ではないと思っています。当然ですがその後の活躍を多いに期待したと言うところです。

そんな上様が次に取り組んだ大きな課題が東大医科研治験問題です。白状しておきますが、この時には私もあの上様が不当と主張するのなら、きっと不当に違いないと素直に思い込んだものです。ところが事実関係は非常に複雑と言うか、町医者には殆んど縁のないGCPに関する解釈問題であり、調べてみても非常に難解な代物でした。

いや、難解と言うだけでなく「どうも」上様がMRICに展開する「我は一点の曇りもなく正当」の主張には、かなり無理があると判断せざるを得ない問題であるとの結論になりました。確かに書きたてた朝日の主張にも無理はあるにせよ、上様の主張を鵜呑みにするのも無理が多すぎるです。多くの者がこの時に「上様は大丈夫か」の疑念を抱いています。


東大医科研治験問題は訴訟に至ります。さらにこの訴訟は現在も継続中です。訴訟の争点が実際にはどう展開しているか知る由もありませんが、ごく常識的に考えてGCPに関する解釈問題が出てきていても不思議ありません。むしろ触れない方が不自然です。GCPがどんなものかを簡潔に説明するのは非常に難しいのですが一面としては、

    治験に関する国際協約
世界各国でバラバラであった新薬承認の治験過程を統一したものにし、どの国の治験であっても他国の新薬承認につながるようにしようとするものです。「ただし」が後に延々と続くのですが、それについては長くなるので省略します。私の理解もかなり怪しいからです。色々と問題はあるにせよ、非常に厳格かつカネのかかる代物であるぐらいにはしておいても宜しいかと思っています。

良い方だけ言えば、厳格な治験審査を経て、患者に効果を保障できる治療薬を提供を目指すものです。本音は様々にあるにせよ、建前はそうなっています。もう一つのポイントは、問題はあるにせよ既にグローバル・スタンダードになってしまっているです。少なくとも国内問題レベルでは既にないとして良いでしょう。

GCPの影の部分は今日はあえて置いておくとして、正当な医療を目指すものはEBMを尊重するのは常識です。ここもまたEBMがすべてと言うと話がまた煩雑になるのですが、原則はEBM遵守です。EBMを遵守といえばたいそうな表現ですが、根拠なき効果の怪しい治療は避けるのが原則ぐらいの言い方でも良いと思います。その程度は医師なら誰でも意識以前に心得ています。


患者は医師に自分の疾病に対し効果のある治療を求めます。誰も無効な治療を求めに来ていません。疾病によっては選択枝は一つではなく複数の選択枝がある事もあります。さらに選択の優劣が微妙な事も重篤な疾病ほどありえます。この時には十分な説明の上で選択枝を選んでもらう事になります。この時に医師が提供する選択枝は優劣があるにせよ、どれもそれなりのメリット・デメリットが根拠としてあるものにします。

間違ってもニセ医療、トンデモ医療を同じ線上に並べません。極端な話をすれば、新生児のビタミンK欠乏症の出血による治療の選択枝に対し、ビタミンK投与とホメパチのレメディを選択枝として提供しないです。そういう行為を行う医師が存在しないとまで言いませんが、そういう医師にはそれなりの処遇を与えられます。

では患者が強くニセ医療、トンデモ医療を望めばどう対応するかです。可能な限りの熱意をもってこれを阻止しようと努力します。もう少し言えば、患者がどう希望しようと同意はせず、ひたすら「ノー」の返答しか行わないです。つまり自分の手では決して行わないとするのが良心とするのが医師と私は考えています。幸か不幸かそういうニセ医療、トンデモ医療を行なう医療機関はこの世に確実に存在しますから、そこに自己責任で流れていくのを待つみたいな感じでしょうか。

医師は医療を求めるものには最善の医療を提供するように努めますが、自分に医療を求めなくなれば、それ以上の関与は原則的に行わなくなるからです。もちろんニセ医療、トンデモ医療の蔓延もまた問題なのですが、これは別次元での対応になります。


患者への十分な説明と言っても、情報の非対称性が存在します。私も医師ですがすべての分野の医学に精通しているかと言われれば、裸足で逃げ出します。小児科分野に於てさえそうで、すべての小児科分野に精通しているかと言われれば、これもまた裸足で逃げ出します。判らない事、知らない事、ましてや最先端の医療の動きなど知らない事はテンコモリあります。

私もいつ重病になるかは判りません。その時に最新の治療の選択枝を示され、これについて説明を受けたとしても、これを十分に咀嚼・理解出来るかと言われれば、正直なところ自信がありません。せいぜいおぼろげに理解するのが精一杯かと思っています。これを患者にすべて自己責任として求めるのは机上の空論に近いところがあります。たとえパターナリズムと言われ様とそう思っています。


少し話が脇道に逸れましたが、東大医科研問題では治験に対する同意問題とその手続きが訴訟前には問題となっていました。それにそった医科研のMRICによる主張が繰り返されていたと記憶しています。つまり根本に患者の同意があるから基本的に無問題であるです。どうもなんですが、朝日との訴訟ではこの点について、さらに発展した主張を展開させていると推測します。これも上様のツイートですが、

週刊文春の記事は面白かった。コメントしているのが国立がんセンター関係者なのは笑えた。患者は「自分に効く治療を受ける。自己責任だ」と言っているのに、「臨床試験が大切です。エビデンスがない治療を奨めるのはいけません」っていうんだから。こう言い続けると研究費というなの血税が流れ込む

つまりは訴訟の展開上、患者さえ説得して同意させればいかなる治療を行うのも「患者の権利」に副ったものであるぐらいのものです。その治療の質は冒頭で示したツイートにあるように、

    多くの自費診療は安全だが、効果が疑わしいもの
効果が疑わしいと知っていながら、これをすべて患者の自己責任で話を終らせる様にしか聞こえません。さらにですが、
    インチキ治療を減らすには色んな方法がある。世論、専門家のピアレビュー、民事訴訟などなど
それの実効性を述べよです。別に難しい事は求めません。ラジオニクス理論とソマチッド理論ぐらいをとりあえず粉砕してみてください。それぐらいを朝飯前に出来てこその主張です。「世論、専門家のピアレビュー、民事訴訟」程度ではラジオニクス理論の派生治療であるホメパチ一つどうしようもないのが現実です。

訴訟の局地戦のために、グレーゾーンをシロに仕立てる必要が生じているぐらいは理解しないでもありませんが、上様の主張は既にクロをシロと言いくるめるレベルに達していると私は見えます。訴訟の当事者、もしくは濃厚な関係者として発言する自由はあるでしょうが、一般論として誤解されそうな発言を繰り返されるのはかなり迷惑に感じています。そこでですが、

    上様はカミサマである
今後はこういう扱いにさせて頂きたいと存じます。カミサマとは八百万の神々です。”Top of us”の主張であるから迷惑なのであり、"one of us”であれば雑多な主張の一つですから被害が軽減できるぐらいのところでしょうか。