私は昨日も書いたとおり、橋下氏の政治手法に好感を持っていません。これは個人の感性であって、それ以上でもそれ以下でもありません。橋下氏は御存知の通り個性的な政治手法を用いますから、好悪が生じるのは仕方がないと思います。個性的であるが故に好き嫌いの振幅が大きくなるとも考えており、そのためシンパの人からアンチの人まで出てくるのだと見ています。
事は政治ですからシンパの人が支持し、アンチの人が批判するのはあって当然なのですが、アンチの人が繰り広げる手法が「どうにも」です。アンチと言ってもネットで呟く程度の「その他大勢」は玉石混交なのでまあ良いとしても、プロである商業メディアも目に余るぐらい「どうにも」です。たとえば週刊朝日の「救世主か衆愚の王か ハシシタ」か話題になっているようです。内容は・・・もう良いでしょう。週刊誌の広告だけ示してきます。
誹謗中傷を用いるネガキャンは嵌れば効果的です。個人的にはあまりに露骨なものは好みませんが、時に大きな効果が得られるのは否定しません。ただ時期によります。今回は橋下氏がターゲットですから、これを例にそのまま用いますが、何らかの大きな失政をやらかし、人気が傾きかけた時に「水に落ちた犬を叩く」式のものなら効果は期待できるかもしれません。
「水に落ちた犬を叩く」式は諺自体もあんまり好きじゃありませんが、やればトドメを刺す効果があるのは認めます。では今がそういう時期であるかです。橋下人気及び維新人気は今もって健在です。私は大阪府民ではありませんから実態は存じませんが、橋下府政(今もそうだと言って良いかと見ています)は、物議を醸す話題はあっても明らかに指摘できるほどの失政を冒したかと言えばあまり存じません。
喩えが少々外れるかもしれませんが、中田宏氏なら明瞭な失政と後始末さえしなかった汚点があります。では中田氏と橋下氏を同列に語れるかと言えば極めて疑問です。まだまだ上昇気流を橋下氏は乗っています。こういう時期にネガキャン、それもかなり程度の低い誹謗中傷系のネガキャンが効果があると判断する事自体が疑問です。
橋下氏はそのキャラから好悪の極端なグループが形成されやすと上記しました。それでも二色に完全に色分けされているわけではなく、中間派が当たり前ですが圧倒的多数です。橋下人気の真の原動力は中間派の漠然たる支持を集めている事です。ただしこの中間派の支持はシンパ的な支持とは違います。やや傾いている程度です。何かあれば支持は離れ易いです。
アンチとしてはこの中間層を親橋下から反橋下に引っ張るのが狙いになります。注意すべき点は橋下氏がまだ上昇気流に乗っている点で、そういう時に度の低い誹謗中傷系のネガキャンを打てば、シンパだけではなく中間層の反発を喰らいます。中間層のアンチに近い層まで顰蹙を買うです。そのうえ橋下氏の情報発信力は巧妙です。週刊朝日クラスであれば根こそぎ叩き返します。
まさかと思いますが、橋下氏のキャラが強いので、アンチもアクの強い戦術が有効であると考えているのなら少し笑います。私はそういう戦術の選択ミスのレベルではないような気がしています。もっと程度も質も低い発想から出ている気がしてならないのです。つまり、
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小うるさいガキだから一挙に捻り潰せ
あまりに安易なアンチの戦術に質の劣化を感じてしまいます。
これはある種の陰謀論に近いですが、質の低いネガキャンは、これをあえて行う事により橋下氏の注目度を高め利用する高等戦略ではないかの見方です。橋下氏が良い意味でも悪い意味でも注目度の高い人物であるのは周知の事です。さらに橋下氏の反応は激しくこれも注目度を嫌でも集めます。これだけ注目を集める存在を商売に利用しない手は無いです。
そこで
そんな事をして商業メディアになんのメリットがあるかですが、- 次期政権に橋下氏が絡むようなら、恩を売る事になる(これは密約があればです)
- 短期的には話題沸騰でとにかく売れる
橋下氏の利用価値は「今人気があること」だけで、その人気がそれなりに続いてくれた方が、商業メディア的には美味しいところが取れるです。質の低いネガキャンでまず儲け、それで橋下人気が高くなれば、次の質の低いネガキャンでまた儲けるです。ネガキャンで叩けば必ず橋下氏は猛反撃しますし、その猛反撃がまた儲けのタネになるです。考え様によっては美味しいところです。
そこまで計算尽くの高等戦略を商業メディアは行っているです。
橋下氏は最初から意図したものであったのか、それとも結果的にそうなったのかは知る由もありませんが、商業メディアを上手く利用されれています。高い緊張状態を作り、それ故の摩擦を結果として利用し尽くしているです。これは悪いとはまったく思いません。その成果は巨大で、瓢箪から駒があれば小選挙区の特性で大きく国政に足場を築く可能性まで出てきています。
ここまで成長した橋下氏ですが、これからも商業メディアの利用は必要です。いや必要と言うよりますます比重が高くなり、必要不可欠になっていると見ています。つうのも橋下氏は急成長したが故にやはり組織は脆弱です。橋下氏の組織の命運はすべからく橋下氏の人気にすべてかかっているです。総選挙はどんなに遅くとも来夏にありますが、それまでに前回総選挙で小沢氏が行ったドブ板戦術は取りたくとも取れないです。
これは組織の脆弱性もありますが、橋下氏が大阪市長と言う公職にいるのもあります。市長職そっちのけで全国行脚なんて到底無理です。さらに橋下氏の代行を務められる人材もまだいないと見ています。人材は集められていますが、今でも安心して自分の代行を任せられる人物は育っていないと考えています。強いて言えば大阪府知事ですが、これもまた府知事であるからです。
実際に総選挙になればなおさらで、候補者は当たり前ですが自分の選挙区に専念せざるを得ません。自分の選挙区を人任せにして他の候補者の応援に駆け回れるほど余裕のある候補者はほぼ皆無だと見ています。橋下氏が出馬をしないとしているのは、市長職の放り出し批判とは別に、いざ総選挙となれば全国を飛びまわれるフリーハンドを確保しておきたいもどこかにあるのかもしれません。
それぐらい橋下氏にかかる負担は大きいのですが、そのために橋下氏は常に全国区で耳目を集め続ける必要があります。週刊朝日のネガキャンも個人的には憤慨しているでしょうが、考え方を変えればアピールチャンスです。これでまた耳目を集められ、相手のネガキャンをポジティブ・アピールに変えて全国発信できます。見様によっては漫才のボケとツッコミみたいなものですが、こういう注目を浴びる事件を総選挙までに橋下氏は常に必要であると言う事です。
逆に言えば平穏になってしまうと少々困るです。ネガキャンでも何でも全国レベルで橋下氏の存在感をアピールする材料を常に欲していると思っています。大阪だけなら市長としてあれこれ仕掛けは可能でも、全国発信となると商業メディアに頼らざるを得ないです。
質の劣化であれ、高等戦略であれ、橋下氏にとってネガキャンはかなり有り難いものになっていると見ています。ネガキャンも本当に巧妙なものであれば困りますが、週刊朝日クラスの低次元のものであれば利用価値は美味し過ぎるぐらいあるです。商業メディアも橋下氏の話題は注目度が高いですから、橋下氏の反撃も含めて商売の種として利用価値はふんだんにあるです。
ある種の呉越同舟状態みたいに見えない事もありません。言うまでもないですが、海千山千の商業メディアを相手に呉越同舟状態でこれを利用できるのは、橋下氏の優れた手腕であるのは説明するまでもないところです。
橋下氏の人気におんぶに抱っこで総選挙に臨まざるを得ないのですから、橋下氏の人気を落とすのは誰でもすぐに判ります。であるなら、橋下氏の全国メディアへの露出を減らしてしまうのが実は最も有効と考えています。ネガキャンであれなんであれ、全国発信される報道はこれを橋下氏は巧妙に自分のポイントにするだけの手腕があります。
打てば響く反応は橋下氏の持ち味ですから、打たないです。打たれなければ橋下氏とて響くのに苦慮する事になるんじゃないかです。自分で叩いて全国に響かすには足許があまりにも脆弱と言う事です。商業メディアが橋下氏の行動や言動を伝える時に味も素っ気もないものになれば、橋下氏をもってしても全国に響かすのに困るです。
でもしないでしょうねぇ。質の劣化であれ、高等戦略であれ橋下氏の人気を商売に結び付けないのは商業メディアとして出来ないです。先の事はともかく、今の儲けを手にしたいでしょうし、自分のところがそうしても、他社が橋下氏の人気を利用しないとは言えないからです。出し抜かれたら、儲けを全部他社に持っていかれるからです。それぐらい橋下氏の存在は大きくなっているです。
観測として、今のような状態がしばらくは続きそうな気がしています。