今さらの not quallity paper の証

11/20付朝日新聞「天声人語」より、

髪形をいじるのは心機一転の表れでもある。日本維新の会橋下徹氏が、おでこを出す正統「保守型」に変えた。この勝負髪で衆院選に挑むという。37歳上の石原慎太郎氏を新代表に迎え、しおらしく従う覚悟らしい▼合流は第三極の受け皿を広げ、既存政党や官僚支配への不満をさらう狙いとみえる。両氏の合意文書には「強くてしたたかな日本をつくる」と表題がついた。「弱くてお人よしの日本」は耐えがたいと▼片や石原氏に気を使い、「原発ゼロ」の語は消えた。政策より大同団結、小異は捨てたというが、コーヒーと紅茶を混ぜたようなドタバタ感が漂う。色が似ていればいいというものではない▼なるほど、コーヒー党、紅茶党の独自色より、候補者の調整が先に立つのが小選挙区制だ。野合との批判に、石原氏は「民主党自民党が人のことを言えるのか」と反発、橋下氏も「趣味嗜好(しこう)まで同じなら北朝鮮」と開き直る▼とはいえ、地方分権や行政効率に重きを置く橋下氏の現実主義と、米中なにするものぞの石原流がどう混じり合うのか。みんなの党減税日本とも組むとなれば、昔の民主党顔負けの「選挙互助会」だ▼石原氏がほれたと公言する橋下氏は、政界でいう「じじごろし」に違いない。新代表を最強のリーダーと持ち上げ、ヘアスタイルを変えた。「何が目的か分からない年の差婚をした、したたかな女のよう」。きのうの東京紙面にあった、山本貴代さんの見立てに納得した。その縁の吉凶は知らない。

維新の会と太陽の党の合併とか、第三極同士の選挙協力については私もあんまり好意的な目で見ていない事は先に書いておきます。選挙とは主義主張の是非を問うものであり、シロかクロかの立場は重要だからです。シロが自らの信念であればシロを主張すべきであり、クロであっても同様です。これが民意を集めての投票につながり、当選するかどうかが選挙の側面(本当は正面)と思っています。

政治のための選挙ですから、主義主張が根本であり、数合わせのために妥協に妥協を重ねる姿勢が好ましいかと言われれば、あんまり好ましくないとは思っています。もちろん合併なり、野合をしても良いのですが、今回の維新と太陽の合併劇は芸が余りに乏しかったと考えています。時間がなかったせいと言われればそれまでですが、天声人語が言う「選挙互助会」の批判は的外れとは言えないぐらいにはしても良いとは思っています。


だから批判するところまではヨシとしても、正直なところあまりに表現が非常に下品です。確かに橋下氏は石原氏と手を結んではいますが、それをもって、

    じじごろし
これは表現として汚すぎると言わざるを得ません。年長者と協力する事をそこまで小汚く酷評するのは、朝日の論説委員の品性が下劣だと素直に感じます。客観的に見て橋下氏が東京方面での集票力を石原氏に期待しての合併とは言えますし、その点の野合批判は許容範囲かもしれません。しかし年齢差を批判のタネにするのは少々筋も品も悪すぎます。高齢者と協力するのがそこまで悪いのかと言う事です。

もう一つ「じじ」ですが、これは誰がどう読んでも石原氏を指し、後に続く「ころし」も含めて好意的な表現と受け取るのが非常に困難です。でもって論説委員は何歳になれば他人を「じじ」と罵る権利が発生するとお考えなんでしょうか。たしかに石原氏は80歳になられており、政治家として高齢批判は避けられないところですが、今回は政治家としての高齢批判だけとは素直に受け取り難いと存じます。

医療界にも100歳を超える現役高齢医師がおられますが、この論説委員にかかれば「じじ」どころか「死にぞこない」ぐらいの罵声が平然と行われそうで怖い気がします。


ヘアスタイル批判も実に筋悪です。髪型やファッションも選挙では一つの要素でありますが、

    新代表を最強のリーダーと持ち上げ、ヘアスタイルを変えた
来月に迫った総選挙に備えて少し髪型を変えたのを、そこまで言うかです。ごく普通に考えて、石原氏の歓心を呼ぶためにだけに髪形を変えたと言うより、選挙でのイメージアップを図ったと取る方が自然でしょう。それが是とするか非とするかは批判の範囲なのかもしれませんが、お昼のワイドショーでもあるまいにです。それでもまだここはまだ良いかもしれません。次が余りにも強烈だからです。
    何が目的か分からない年の差婚をした、したたかな女のよう
いちおう山本貴代氏なる人物の評価の受け売りとしていますが、その言葉を自分の責任で引用したのは論説委員です。ここもおかしな表現で、「したたか女」は決して「何が目的か分からない年の差婚」なぞしません。明瞭な目的と打算をもって結婚します。「何が目的か分からない年の差婚」をするのは「したたか女」ではなく、あえて天声人語流に表現すれば「脳内お花畑勘違い女」でしょう。

「したたか女」は橋下氏の事を指しているのは余りにも明瞭ですが、論説委員の意図とは異なり、したたかな政治計算を橋下氏は行っていると見る方が妥当でしょう。それが吉と出るか凶と出るかは選挙結果が示しますが、急造の政治勢力ではこれぐらいのリスクを背負ってバクチを打つ度胸は求められると私は存じます。


まあ、なんちゅうか、第三極批判を行いたい意図はわかるとしても、表現が品性下劣であるだけでなく、表現の使い方さえ怪しい文章になっています。ここで同じ朝日新聞社団藤保晴氏の評価を添えておきます。

さらに言えば、論説は密室で議論して勝手に書いていらっしゃるので、一線記者からすると不思議な社説がしばしば現れます。

社説も天声人語も書いているのは論説委員ですから同じ穴のムジナと言うところです。これがかつて(今は存じません)大学入試のために読んでおくものとまでされた天声人語の末路のようです。論説委員に問いたいのは、朝日の天声人語とは「じじころし」とか「したたか女」みたいな表現を是とされているのでしょうか。反吐が出そうな自称「quallity paper」です。もっとも「今さら」ですから驚くに値しないは「ごもっとも」とさせて頂きます。


批判をやってみる その1

う〜ん、どうも寝覚めが悪い気がしています。何度でも書きますが私は橋下氏の政治手法は肌が合いません。ですから橋下批判派を自負しているのですが、とくにマスコミ系の橋下批判は筋も質も品も悪すぎです。それが耐えられないので批判をするのですが、そんな事をやっていると隠れ橋下派と見られそうでとっても嫌です。そこで軽いのを11/20付読売新聞より、

橋下氏と松井氏、兼務可能になれば参院選出馬も

 日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は20日、「(首長の国会議員)兼職禁止規定が外れれば、次の参院選へ挑戦する」と述べた。

 代表代行の橋下徹大阪市長も同日、「やるとすれば(松井幹事長と)1セットです」と語り、現在認められていない首長と国会議員との兼務が可能になった場合、橋下、松井両氏が来夏の参院選に出馬する意向を示した。ともに大阪市内で記者団に話した。

 公職選挙法は、首長が現職のまま、国政選やほかの首長選などに立候補することを禁じており、首長と国会議員の兼務には法改正が必要だ。松井幹事長は「参院衆院カーボンコピーになっている現状では、何も決まらない」としたうえで、「現職首長が国政で議決権を持てるのはいいことだ。やれることすべてに挑戦したい」と話した。

 橋下代表代行も19日、大阪府高槻市内での街頭演説で、「市長のまま国会議員になれるなら、挑戦したい」と語っていた。

国によっては自治体の首長が国会議員を兼務するところはあったかと思います。では日本でもこれが物理的に可能であるかどうかです。国会議員であれば国会への出席は神聖な義務かと存じます。出席至上主義と言われると辛いところもありますが、メインのお仕事は日本で一番重要である国会での審議であるからです。とにもかくにも会議は出席しないと話にならないかと存じます。国会は3つに分けられます。

では実際にどれほどの会期が行われているかです。前回の総選挙の年度から今回の解散までの間の実績です。

年度 特別国会 臨時国会 通常国会
平成21年度 4 40 198 242
平成22年度 0 72 150 222
平成23年 0 69 220 289
平成24年 0 19 229 248


あえて平均を出せば約250日です。では大阪市会はどれほど開かれるかです。大阪市総合コールセンターにこういう回答があります。

市会には、定例的に招集される定例会と、会議を開く必要が生じた場合に招集される臨時会があります。

いずれの場合にも、招集するのは市長の権限ですが、例外として、議会運営委員会の議決を得て議長から、あるいは議員定数の4分の1以上の議員から臨時会の招集の請求があった場合には、市長は臨時会を招集しなければなりません。

大阪市会では、年4回の定例会や臨時会の会期を会議規則で定めています。

  • 通常予算及び決算審議の定例会 : 30日間
  • その他の定例会 : 7日間
  • 臨時会 : 5日間

これを単純計算すれば132日間です。大阪府会はもう少しアバウトなようで、大阪府議会ホームページに定例会の回数だけが掲載されていますが、

 会期の総日数を現行より大幅に増やすことにより、議案の審議期間を十分に確保し、機動的かつ弾力的な議会運営が可能となるよう、定例会の回数を年4回から年3回に変更しました。

定例会の会期は概ね次のとおりとします。

第1回定例会 2月下旬から3月下旬まで

第2回定例会 5月中旬から6月上旬まで

第3回定例会 9月中旬から12月中旬まで

これ以外に臨時会もあります。市会も府会も首長が欠席するのは基本的に問題でしょう。さらに国も自治体ももっとも重要な会議は来年度予算の審議になるかと私は考えますが、これは国も自治体も時期が重複します。ごくごく素朴に

    どうやって兼務するんだ?
まさか橋下氏も松井氏も国会議員としては議決の日だけ顔を出して、後は市会なり府会に出席されるんでしょうか。それとも市会や府会は副市長とか副知事に任せ、市会や府会の議決の日だけ顔を見せられるのでしょうか。どちらにしても
    そんなんでまともに職務が遂行出来るのか?
この疑問は出てきます。詳しくは存じませんが市長であれ府知事であれお仕事は市会なり府会に出席するのがお仕事のすべてではないと存じます。議会出席以外にも日常業務はタンマリあるとも存じます。うちの区医師会の会長クラスでも本業が大丈夫なのかと思うほど種々の業務があります。ましてや大阪市大阪府となるともっと凄いだろうです。

それでも兼務が出来るのであれば、現在の市長なり府知事のお仕事は「とってもラク(ないしヒマ)」の評価が出てきます。ラクならば給与も減らせるにつながります。私は安易に首長なり議員の給与を減らせと言うつもりはありません。それだけの職務に対する正当な報酬は必要と考えるからです。ただ国会議員と兼務できるほど現状がおヒマであると公言されるのなら、

    そんなにヒマなら今すぐ給料減らせ!
これは言い過ぎかもしれませんが、個人的には市長であれ、府知事であれ到底片手間でこなせるお仕事ではないと素朴に信じ込んでいました。しかし大阪市大阪府はそうではないようです。ちょっとビックリしました。


批判をやってみる その2

勢いだからもう一つ。11/19付時事通信(Yahoo !版)より、

 橋下氏の街頭演説は、維新と太陽の党の合流後初めて。橋下氏は「市長も知事も経験のない議員が日本国家を運営できるわけない」と首長経験をアピールした。

この言葉の是非はあえて問うまいと思います。この発言を踏まえて、11/21付デイリースポーツ(Yahoo !版)より、

日本維新の会」元グラドル候補 1歳サバ読み認める

 石原慎太郎東京都知事率いる「日本維新の会」は21日、12月の総選挙に向けた第3次公認候補者を発表し、東京21区に元タレントの佐々木理江氏を擁立した。

 佐々木氏は「佐々木梨絵」の名前でグラビアアイドルやニュースキャスターとしての経歴を持ち、タレント時代の公式プロフィルには1983年生まれとしていた。しかし、本当は82年生まれ。1歳さばを読んで活動していたことについて「覚悟していました。ごめんなさい」と認め、謝罪した。

 また、以前、週刊誌でボートレーサーとの熱愛が報じられたことについても「いいお付き合いをしています」と現在進行形であることを認めた。最終学歴は島根大学。これについては「ちゃんと卒業証書があります。大丈夫です」と自信を持って答えた。

 グラドルとして過去にはかなりきわどいセクシーショットも披露したこともある佐々木氏。こちらは「私の中ではOKでも、アングルによっては…。でも、私が歩んできた道ですから」と胸を張った。

ここも元グラドルが立候補する事自体はなんら問題視しません。問題視するのは橋下氏が議員に求めた条件です。

    市長も知事も経験のない議員が日本国家を運営できるわけない
佐々木氏は調べる限り市長や知事は愚か、地方議員の経験もありません。ここも佐々木氏自体がそういう経験もなく立候補を目指される事は問題ありませんが、そういう候補を公認する点です。言葉をそのままに受け取ると佐々木氏が仮に当選しても、
    日本国家を運営できるわけない
こうなります。まあ、当選しても1期目の新人議員であれば国家の運営は無理かもしれませんが、これも仮に当選を幾ら重ねようとも永久に「国家を運営できるわけない」になります。「国家を運営」するためには一度議員を辞職し、どこかの市長や知事を経験し、それから再び国会議員になるまで無理と言う事になります。ちなみに現在の維新所属の国会議員ですが、

氏名 所属 当選回数 首長経験
平沼赳夫 衆議院 10 ×
松野頼久 衆議院 4 ×
石関貴史 衆議院 2 ×
園田博之 衆議院 8 ×
小沢鋭仁 衆議院 6 ×
阪口直人 衆議院 1 ×
松浪健太 衆議院 3 ×
谷畑孝 衆議院 5(参1) ×
今井雅人 衆議院 1 ×
水戸将史 参議院 1 ×
中山恭子 参議院 1 ×
藤井孝男 参議院 4 ×
小熊慎司 参議院 1 ×
上野宏史 参議院 1 ×
桜内文城 参議院 1 ×
片山虎之助 参議院 4 ×


衆議院議員は正確には「前職」ですが、とにかく現役の維新国会議員の中に日本国家を運営できる人は独りもいないわけです。国家の運営となると狭義には首相になりますが、そもそも議員である事が国家の運営の一翼のはずです。これをもう少し狭くして、政務三役クラスや、各種の国会の委員長クラスぐらいまでは含まれても良いかと存じます。最低限大臣は国家の運営に入るでしょう。

そういう役職に相応しからぬ人材だと明言されている事になります。維新が総選挙によりどれほどの議席獲得するかはわかりませんが、そういう議員も2通りに選別がなされる事にもなります。

    A資格・・・首長経験者
    B資格・・・首長経験のない者
この差は巨大で、B資格では、
    日本国家を運営できるわけない
こういう扱いしか維新内部では受けないのですから、同じ維新候補でもどちらの資格の候補者であるかは十分に注意しておく必要がありそうです。


あえての感想

私の批判がqualityが高いとは口が裂けても言いません。程度の低い単なる揚げ足取りです。それでも狙いはあります。政治家とは政治信念を言葉で語り、実績を見せ付けるのが仕事だと考えています。言葉も政略的な表現があるにしろ、言行一致が基本的に求められます。政治家の誠実さとは、口にした言葉を常に守る点だと思うからです。悪いですが政治家が公衆の面前で語るとはそういう事だと思っています。

どうしても主張を変えざるを得ないときには、それを納得させる説明が必要です。これが不十分なら「うそつき」「変節漢」程度の罵倒は甘受せざるを得なくなるのもまた政治家の宿命だと思っています。かわいそうですが、そういう職業であるとしか言い様がありません。

橋下氏は府知事時代は様々に批評はあるにせよ、外野から見てもある方向に突き進んでいくのは感じられました。はっきりした政治信念があり、それに基づいての発言があり、それを現実化させるための施策を行なっていたかと思っています。是非は置いときますし、手法もあえて置いておきます。そういう言葉にした事を確率高く政治業績に反映させた事が現在の人気につながっていると見ています。

しかし国政進出を目指しだしてから、これが著しく不透明になっていると感じています。府知事時代は「つべこべ抜かすな、結果を見よ」の鮮烈さがありましたが、国政進出を目指し始めてから、狭い局面と言うか、その場、その場の人気取りに汲々としている印象が濃厚です。国家のリーダーになった時に、一体全体どんな政治を行うつもりなのかが、他の既製の国会議員同様に曖昧模糊、カメレオンになったとすれば良いでしょうか。

橋下氏もツイッターをやっていますから、ネットの便利さと怖さを十分承知のはずです。ネットは手軽に影響力を行使できる点では従来メディアの比ではありません。マスコミバイアス抜きでストレートに自分の主張を発言でき、それを読者にダイレクトに発信できます。一方でネット発言は延々と記録として残り、政治家なら過去の発言との整合性をいつでも問われる状況にも置かれるです。

とにもかくにも来月は総選挙であり、結果は議席として反映されます。どうなるかは楽しみにして待っている事にします。