ハトの軽口

2/15付ZAKZAKより、

首相、医療改革も“宇宙人流”瞑想、催眠療法に保険適用!?

 鳩山由起夫首相のツルの一声で、厚生労働省は瞑想や催眠療法といった民間医療に加え、チベット医学、ホメオパシーなど世界各国の伝統医学の保険適用や資格制度化をマジメに考え始めた。考え方が宇宙人的といわれる首相が推進する医療改革は「歯科医院での首相の実体験が影響している」(関係者)らしい。

 厚労省は今月5日、統合医療プロジェクトチーム(PT)を発足させた。「統合医療」とは、従来の医療に伝統医学や民間医療といった保険適用が少ないジャンルを統合させて治療を行うこと。「医療費抑制の効果があるものの、必然的に医薬品の投与量が減るので、製薬業界と関係の深い厚生官僚はこれまで見向きもしなかった」(医療ジャーナリスト)

 風向きが一転したのは首相の言葉。「鳩山首相は先月29日の所信表明演説で『統合医療の積極的な推進の検討』を明言した。さすがに総理の言葉は重いので、バタバタでPTを立ち上げた。今月26日までに要望書の集約や研究実績などの情報を収集する。その後、各療法の有効性を検証していく方針」(厚労省幹部)という。

 そもそも鳩山首相は、政権交代前から超党派の推進議連副会長や民主党内の推進議連会長を務めるなど、統合医療に熱をあげてきた。関係者によると、そのきっかけは歯科治療。「歯科を受診した際、歯科医が統合医療を取り入れていた。歯の痛みを足つぼマッサージで抑えたそうで、その実体験が大きいのではないか」という。

 PTはとりあえず統合医療の研究がさかんな米・国立衛生研究所のジャンル分けを引用して、国内での実態把握を始める。伝統医学としては、中国医学やインドの教え「アーユルベーダ」、イスラムの医学「ユナニ」。さらに、断食療法や瞑想、磁気療法、オゾン療法、気功など「長妻昭厚労相の意向もあり、範囲はなるべく広めにした」(厚労省幹部)。

 元横綱朝青龍がモンゴルで重宝していた温泉療法も検討の対象となる。「私には主治医でなく主治湯があり、22年間、温泉に入るだけで健康を維持してきた」という札幌国際大学観光学部の松田忠徳教授(温泉文化論)は「戦前までは病気を治すためにあった温泉が、戦後になって『酒を飲む場所』に変わってしまった。病が起きてから対処するのが西洋医学東洋医学は免疫力を上げて病気にかかりにくい体にする。湯治も6−7割が予防医学で、ようやく世界的な流れとなる」と喜ぶ。

 また長年、統合医療の推進を訴えてきた日本統合医療学会も「『玉石混合』といわれるが、その中から本当に効果があるものを1日も早く実証することが患者本位の医療につながる。今回のPT発足はその大きな第一歩」と高く評価する。

 国民の「いのち」を守ると明言した“宇宙人首相”の発想は奏功するか−。

本音は「後は皆さんでよろしく」にしたいのですが、引用したからには、それなりの量の論評をしておかないと著作権法の問題が生じますから、埋め草として頑張ってみます。正直なところ物凄く苦痛です。

この話を聞いてまず思い浮かべるのは事業仕分けで話題になった漢方薬を保険適用外にするです。あれも驚天動地の政策でしたが、どうなっているのでしょうか。当然の様に医療現場や漢方薬メーカー、もちろん患者も含めて保険適用除外を阻止する運動が行なわれていましたが、申し訳ありませんが最終的にどうなったかを存じません。

ここでは漢方薬の保険適用から外すの問題も大きいですが、今回の鳩山発言に関連する意味では、漢方薬を政府の方針として保険適用から外す方針とした一方で、その他の療法を逆に積極的に保険適用にしようとしている点です。つまりと言うほどではありませんが、

    漢方薬 << 「中国医学やインドの教え「アーユルベーダ」、イスラムの医学「ユナニ」。さらに、断食療法や瞑想、磁気療法、オゾン療法、気功など」
漢方薬より保険適用の優先度が高いと判断された事になります。これは優先順位の考え方がチト逆立ちしている様に感じるのですが、民主党政治の特徴として党のやる事、政府のやる事、省庁のやる事、鳩山総理の発言に必ずしも整合性がありませんから、鳩山総理の頭の中ではキチンと仕分けされているのかもしれません。どんな仕分けかの説明は聞かないほうが無難かもしれません。

まだ短いですねぇ。

伝統療法を推進されている方は今回の鳩山発言に勇み立っているご様子が窺えます。まあ関係者にすればそうでしょうが、保険適用になると言うのが必ずしもバラ色かどうかを考えてみられても良いような気がします。保険請求の実際をどれほどご存知なのか老婆心までに心配するのですが、私も行なっている現行医療の評価は、

    技術料 << 検査・薬剤料
こういう方程式が成立します。一番評価されないのは患者と話をする事です。5分で終わろうが、2時間話そうが料金の評価は同じです。精神科的な配分になれば話は変りますが、患者を診察し、話をする事の評価は極端に低いと言う事です。再診料は今回の改訂で話題になりましたが、何時間話しても690円です。これはどんなにエライ先生であっても均一料金です。

技術料の評価も異常に細かいか、おそろしく大雑把です。たとえば細かい方では、

    シャクティパット1発につき2点、ただし1回の診察に付き5発まで算定できるとする。なお1ヶ月につき最大2回までの算定とする。
あくまでも喩えですので誤解無いようにお願いしたのですが、こういう表現での診療報酬はシャクティパット1発で2点、2発で4点と増えてはいきますが、5発で10点で1回の診療の上限になります。6発打っても構わない事が多いですが、そこは保険診療であってもタダです。1回の上限はそれだけですが、1ヶ月に2回までとは、3回目の治療が必要になったときにはシャクティパットはタダと言う解釈をします。

大雑把な方になると、

    伝統療法(厚生労働大臣布告○○号にて認められたものに限る)施術1回につき50点を算定できるものとする。なお施術により下記の如く1ヶ月の上限回数を定める・・・。
これは治療を一体のものとして解釈するものです。どれだけ時間をかけて、何をしようが1回50点と解釈します。1ヶ月の上限回数の解釈については上記した通りで、制限回数を越えた分の治療を行なっても違反とはされない事もありますが、保険報酬は無く、治療内容によってはタダでも行うだけでよろしくないの指導が入ることがあります。

こういうすべからく明朗会計のお値段が表示される事になります。値段は現在の実勢価格より高くなる可能性は極限まで低く、なおかつ現在の医療情勢では理解不能なぐらい低く抑えられても医療関係者なら誰も不思議には思いません。また導入時に多少良くとも、梯子はすぐに外されると言う事も知っておられた方が良いと思います。

値段交渉については業界団体の力も重要ですが、日医程度では十分とは言えません。せめて柔道整復師ぐらいの力が求められます。

伝統療法の方も薬剤を用いる事がありますが、これも保険適用となるとすべて薬事法を通す必要があります。当然の様にすべての成分が分析され公表されるだけではなく、その成分に基いた後発品の製造も行なわれます。まともにやって承認されるかどうかは置いとくとしても、成分の公表とそれに基いた後発品の販売は奨励されているのが今の医療です。

それと混合診療の問題が出てきます。保険適用となれば、保険適用治療とその他の自費治療の併用は原則として認められません。保険適用部分のみ伝統療法を用い、その他の自費治療の併用を行なえばすべて自費治療になります。料金も今回の改定で打ち出された様に非常に細かい明細書を必要とします。上述した秘薬を自費で処方すると混合診療になり保険適用されません。

それと開業にて伝統療法を行なうとなれば、レセプトオンラインの問題が出てきます。除外規定もありますが、新規開業ならレセコンを購入する必要があります。メーカーは対応してくれるでしょうが、価格はどれぐらいでしょうか、250万は下らないと思います。医師会員では無いのでORCAは使えませんからねぇ。いや、使えるのかな?

長々と字数だけ稼ぎましたが、保険適用内の治療は相当窮屈ですから、伝統療法で活躍されている方の中には今より治療法も、収入も不自由する可能性は無いとは言えません。それと一旦保険収載されましたら、自費であってもその値段に収斂する可能性が高くなります。保険で出来るのにわざわざ自費で高い料金を払う方が減る傾向が出ると考えられるからです。

まだ短いですね・・・

伝統療法が保険適用されたら、患者サイドからも不満が出るかもしれません。とくに歯科分野です。歯科治療で保険適用を望まれている分野はあります。当然の様にそちらを先に保険収載せよの声が出てきても不思議ありません。これはかなり多数の方が望まれると予測されますから、政治としては無視しにくい声になるかもしれません。


さてと、この記事は2月15日付ですが、この鳩山総理の

    ツルの一声
いつまで続くのかはある意味見ものです。鳩山総理の周知となった特質は、発言が容易に翻る事です。翻るだけでなくいとも簡単に二転、三転します。かの総理はその場、その場において相手に対して迎合して喜ばせる発言をするのは得意ですが、発言の一貫性については極めて無頓着です。注目度の落ちる野党党首時代はまだ目立ちませんでしたが、一挙手一投足が注目される首相になって露呈しきっています。

そんな総理の「ツルの一声」に反応して、真面目に検討に入ろうとしているらしい厚生労働省に今度ばかりは同情します。今週中に発言が迷走しても今や誰も不思議とは思わないんじゃないでしょうか。それとも、もう忘れているかもしれません。お忙しいでしょうからねぇ。

これぐらい書けば引用条件は満たしたかと思います。論評部分は著作権法のための埋め草ですから、その程度でよろしくお願いします。