新型インフルエンザ第二段階の対策

今朝から爆心地になり来週から爆心地医療をやらないといけないのですが、H.19.3.26付の医療体制に関するガイドラインに準じて行なわれると考えます。ただし5/14付け神戸市医師会新型インフルエンザ対策本部より、

この度の新型インフルエンザが当初想定されていた高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)由来のものよりも病原性が弱いと判断されるため、従来の国のガイドラインを厳密に運用するのではなく少し要件を緩和することが検討されている

確かに厚労省筋からそういう情報はチラホラ聞こえます。問題はどの程度緩和されるかなのですが、これは今ごろ厚労省で会議されているはずだと思っています。とっとと出してくれないと現場は動きにくくて仕方ありません。そうそう日本での発生段階ですが、厚労省新型インフルエンザ対策関連情報を見ればはっきりと、

日本の状況
第二段階(国内発生早期)

こうなっているのが確認できます。そうなれば神戸だけの話ではないのですが、神戸の話は目の前なのでガイドラインを再確認してみます。第二段階の定義は、

第二段階:当該都道府県内に新型インフルエンザ患者が発生し、入院勧告措置に基づいて感染症指定医療機関等で医療が行なわれる段階

こうなっています。もう少し具体的には、

 感染症病床等の数は、先述のとおり都道府県等の試算により決定される。「第二段階」は、疫学調査により患者の感染経路が追跡できなくなり、入院勧告による感染拡大防止及び抑制する効果が得られなくなるまで、又は都道府県の感染症病床等が満床になるまでの段階とみなされるので、当該時期は各都道府県により異なる。

どうも第二段階は都道府県ごとに行なわれるようなので、兵庫県以外の皆様はまだ大丈夫かもしれません。ここで

これがどれぐらいかですが、第一種及び第二種の感染症病床ですから、兵庫県には46床あります。そうなれば入院必要患者が47人になった時点までの措置になります。けっこう次の段階までのハードルは低そうです。なぜなら、

感染症指定医療機関等は、新型インフルエンザと診断され、感染症法19条に基づく入院勧告を受けた患者に対し、症状の程度にかかわらず入院診療を行う。

見つかれば第二段階では全員ですから、47人は微妙な数です。今日の三宮の人手も非常に多かったそうですから、感染の蔓延を危惧しておきます。対応はいろいろ書いてあるのですが、うちは診療所なので「一般病院及び診療所等の対応」を読み直します。まず原則ですが、

新型インフルエンザが疑われる患者は、発熱相談センターを介して感染症指定医療機関等を受診することが期待されるが、直接患者が感染症指定医療機関等以外の病院、及び診療所(以下、受診医療機関)を受診した場合、以下の対応をとる。

これは今日明日のマスコミ報道がどれだけ冷静に「事実」を伝えてくれるかが大きな鍵になると考えられます。患者の高校生の身元の洗い出しより重要な事ですが、期待は・・・一応しておきます。全部で6項目あるのですが順番に読んでいきます。

受診医療機関は、患者が「要観察例」に該当すると判断した場合、直ちに最寄りの保健所に連絡する。

別に変な事は書いてないのですが、気になるのは

    「要観察例」
どんな状態が「要観察例」であるかです。これについての記載を探してみると、

新型インフルエンザの診断・治療は、実際にヒトーヒト感染が発生した段階で新たに症例定義(「要観察例」「疑似症患者」「患者(確定例)」)を設け

なるほど、なるほど、新型は必ずしも従来型と同様の経過をたどると決まっていませんから、実際に感染が起こってから素早く情報を収集して症例定義を行なう方針のようです。ヒト−ヒト感染が確認されたのは日本では少ないですが、北米で数千例が記録されていますから、新たに症例定義されているかと思うのですが、私の探し方が悪いのか見当たりません。まさかと思うのですが、

これでない事を祈っておきます。こんな症例定義じゃ、小児科の発熱患者の大部分が該当してしまいます。疑うも何も「疑えない」証拠を提示するのが無理だからです。どこかで消化器症状を呈する症例もあると聞きましたから、下痢だから腸炎とも言い切れなくなります。そう言えば今週は嘔吐下痢がかなり多かったですし、発熱している患者も少なくありませんでした。誰か「要観察例」の症例定義を御存知の方がおられれば情報下さい。

受診医療機関は、患者に新型インフルエンザ検査を実施することができる感染症指定医療機関等への転送について、保健所に相談する。

前に国立感染症研究所の指針を読んだ時に

    速やかに「都道府県が定める発熱外来あるいは感染症指定医療機関」に搬送できるよう最大限の援助を行う
これってどうやるんだろうと思っていましたが、第二段階では保健所が乗り出してくれるようです。

受診医療機関は、新型インフルエンザ検査が検査機関において約半日以上かかることから、あらかじめ患者に対し、感染症指定医療機関への任意入院(新型インフルエンザの検査結果が出るまでは、任意の扱いとなる)を勧奨する。その場合、病院の他の病室等へ新型インフルエンザウイルスが流出しないような構造設備を持つ病床を使用する

ここが少々謎の多い文章なのですが、「要観察例」段階で保健所に連絡するとなっていますし、連絡した後は「感染症指定医療機関等への転送」するともなっています。にも関らず受診医療機関で隔離する事が書いてあります。これはおそらくですが、感染症指定医療機関が満杯で受付けられない状態を想定していると考えます。ただし「病院の他の病室等へ新型インフルエンザウイルスが流出しないような構造設備を持つ病床を使用する」みたいな設備は診療所レベルで備えているところは稀です。

うちでは到底無理なのですが、「そうしてくれ」と言われたらどうしましょうか。これは困ったな、もしそうなったら保健所と談判するしかありません。

受診医療機関は、保健所を通じて感染症指定医療機関が満床と確認した場合、結核病床をもつ医療機関など、「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき都道府県等が病床の確保を要請した医療機関(協力医療機関)への任意入院を勧奨する。その場合、陰圧制御が可能な病室や、1フロア、1病棟を新型インフルエンザ専用として使用するなど、病院の他の病室等へ新型インフルエンザウイルスが流出しないよう配慮する。

えっと、ちょっとなんですが、感染症指定医療機関が満床の場合は自力で受け入れ先を探さなければならないようです。これは難儀な事です。とりあえずのところ、

これは兵庫県では発表されていないはずなので、どうなるのでしょうか。これも保健所との談判になるんでしょうか。

受診医療機関は、感染症法15条の調査に協力する努力義務があることから、当業務を迅速に実施させるため、「待合室」等で患者と接触したと思われる一般来院者について連絡先等の情報を整理した名簿を作成しておくことが望ましい。

これは受付担当の職員にチェックしてもらっておきましょう。ただこの場合、患者だけでなく付き添いの祖父母の住所の把握も必要になりそうですから、一悶着ないように注意しないといけません。

受診医療機関は、都道府県等からの感染症法第15条に基づく調査の求めに応じて、連絡名簿を保健所に提出する。(保健所における対応は「積極的疫学調査ガイドライン」を参照)

要請されれば提出しますが、個人情報保護法との絡みは大丈夫ですよね。後から絡まれると少々嫌です。


第二段階の対応はざっとこんな感じです。後はこれがどれぐらいの緩和条件で運用されるかです。たぶん会議中とおもうのですが、週明けまでに連絡が欲しいところです。