厚労省の行動指針

厚生労働省のキャッチフレーズ及び行動指針の策定についてなるものが報道発表されています。それでもって前置きと言うか前文には、

 厚生労働省では、シンボルマークが一般公募を踏まえて策定されたことを踏まえ、厚生労働省発足後に入省した若手職員を中心に、全職員の意見を聞きつつ、「職員が一丸となり、国民にとってあるべき厚生労働行政を推進していくための支柱となるもの」として、キャッチフレーズを策定しました。

 また、キャッチフレーズの趣旨を実現するために職員が遵守すべきこととして、行動指針を以下のとおり策定しました。

 これらについては、シンボルマークとともに、封筒や職員の名刺への印刷等、様々な形で活用していく予定です。

この文中にある公募されたシンボルマークがどうやら、

注目(そういう人がいればですが)のキャッチフレーズですが、
どうでも良いことなのですが、このこの「ひと、くらし、みらいのために」は文字ではなくわざわざgifファイルになっています。つう事は、この書体で一種のロゴマークみたいになっているのかもしれません。何のためかはとりあえずよくわかりません。キャッチフレーズでは何をやりたいのか分からないのは仕方ないので、キャッチフレーズを具体化するためにあると考えられる「行動指針」を紹介します。

行動指針
 キャッチフレーズの趣旨である「現在だけでなく未来にわたって人や暮らしを守る」という役割を果たすため、私たちは、次の1から4に掲げる指針に基づき、行動します。
  1. 高い倫理観を持って公正・公平に職務を遂行します。
  2. 国民と時代の要請に応じた行政サービスを提供します。
  3. 国民一人ひとりの立場に立って考え、行動します。
  4. わかりやすい言葉で広く情報を提供し、開かれた行政を目指します。
 そして、以上の行動を実践するため、私たちは、日々、次に掲げることに心がけて職務に取り組み、活力溢れる組織となるよう努めます。
  • 誇りと使命感を持って職務に臨み、効率的かつ迅速に業務を遂行します。
  • 自ら進んで課題を見つけ、皆で協力しながら解決に向けて取り組みます。
  • 自己研鑽に励み、自らの向上心を高めます。

結構な人数の方が失笑されているような気がしないでもないですが、誠に御立派な行動指針です。ここに「(参考)策定の経緯について」が副えられています。これも趣の深い文章で、

  • シンボルマークの公募に併せ、省内に若手職員からなるミッション検討プロジェクトチームを設置。
  • 幅広い職員の思いを反映するべく、厚生労働省職員からキャッチフレーズを募集。

    (本省及びその地方支部局並びに外局の職員(非常勤職員を含む。)を対象とし、17日間で合計1,513件の応募を得る。)
  • プロジェクトチームでの検討を行い、広報委員会における精査を経て、職員に対し、13のキャッチフレーズ案を提示、投票を行う。

    併せて、行動指針案を提示し、意見を募集。
  • 投票、意見募集結果を踏まえ、キャッチフレーズ及び行動指針を策定。

これを読むと行動指針がいかに慎重に検討されたかが滲み出てきます。なんと言っても、

    幅広い職員の思いを反映するべく
なるほどと思うぐらい無難な行動指針が列挙されています。まるでと言っては失礼ですが、学級会のクラスの目標より遥かに抽象的かつ空虚な行動指針と感じます。いやまだクラスの目標の方がずっと具体的な内容としてよいでしょう。だって行動指針の成果の再検証なんて「絶対に不可能」な項目の列挙だからです。

ただなんですが、さすがに

    若手職員からなるミッション検討プロジェクトチーム
こういう連中が作っただけあって官僚的配慮がまだ不足している点が目に付きます。4つの指針が挙げられていますが、わざわざ厚労省が挙げるという事はこの4つの指針が出来ていないという指摘が生じる可能性です。そういう点では非常に迂闊なものかと思われます。こんな指針を立てなければならないという事は、指針が示す現在の仕事振りは、
  1. 大した倫理観も無く、ひたすら偏向した業務を行っている。
  2. 国民と時代の要請を無視した行政サービスをモットーとする。
  3. 厚労省の省益に立って考え、行動する。
  4. 難解な表現で韜晦しながら情報の提供を制限し、閉ざされた行政に邁進する。
こういう突っ込みに耐える必要性が生じるところが「若手」たる所以でしょうし、ベテラン職員ならこんな下手を打たないと考えられます。この辺はまだ完全に官僚たる意識が完成していない「若手」と、骨髄まで沁みこんで染め上がった「ベテラン」の世代間格差なのかもしれません。ただベテラン職員もそういう未熟な若手のfollowを決して忘れていません。

followと言うより「見切り」と言った方が適切かもしれません。私もネタがないから無理して取り上げましたが、読んでも実におもしろくない代物です。つまり報道資料として公開してもマスコミが飛びつかない見切りです。マスコミさえ飛びつかなければ、キャッチフレーズも行動指針も内輪のお話になります。厚労省の内輪のお話であればどんな事を立案し、それが画餅に終わろうが責任問題は一切生じません。そこまで見切っていれば若手の脇の甘さもベテランは笑って見守る余裕が生じるという言うことです。

たぶんミッション検討プロジェクトチームに参画した若手も10年、20年後には「あの頃は青かったな」と懐かしむぐらいに位置付けられるかと思います。もちろんその頃には骨の髄まで厚労官僚に染め上がっている寸法です。それにしてもロゴマーク、キャッチフレーズ、行動指針の作成に幾らかかったのかな・・・。