一つ目は1/23付産経新聞より、
救急車迷い、到着5分遅れ 搬送の男性が死亡
秋田県由利本荘市の杉林で20日、男性が倒れているのが見つかり、119番を受けて出動した救急車が道に迷って現場到着が約5分遅れていたことが23日、分かった。男性は救急車の到着時に自発呼吸していたが搬送途中に心肺停止状態となり、21日に病院で死亡した。
同市消防本部は「通常なら15分で着くところを20分かかった」と到着の遅れを認め、家族に謝罪した。
市消防本部によると、20日午後4時半ごろ、杉林で近くに住む農業、三浦悦朗さん(73)が倒れているのを近くの住民が発見。三浦さん宅に運びながら約1時間後に119番した。救急車は約5分後に本荘消防署岩城分署から出動したが、途中で隊員が右折の目印を勘違いして手前で右折し、住民の誘導で約20分後に到着した。
由利本荘署によると、三浦さんの死因は外傷性ショック死で、斜面を転落した可能性が高いという。
事件はシンプルで、杉林の中で患者が見つかり発見者から救急依頼を受けたが道に迷って「5分遅れた」と言うことです。不手際であったのは認めなければならないでしょうし、こういう事を無くす努力は必要でしょうが、一定の確率で起こりうることです。救急隊は可能な限り早く現場に到着するように期待はされていますが、救急隊とは言え管轄範囲の地域の道にすべて精通しているとは言い難いと考えます。どうしてもよく行くところと、そうでないところで精通度の差があり、時に迷う事が生じるのは避け難いと考えます。
救急隊は早く現場に到着するように期待され、その期待に応えるように努力はされていますが、時に「必ずしも」は当然出てきます。怠慢と言うより努力の限界です。こういう事態に対し消防隊の内部的に「無くそう、減らそう」の努力目標にするのは当然ですが、「新聞沙汰」にされて叩かれるのなら誰が救急業務に従事するかの不安が出てきます。全国で年間何十万件の救急搬送があるわけで、道に少し迷うたびに新聞沙汰では堪らないのが本音と思ってしまいます。
2つ目はその翌日の1/24付読売新聞(Yahoo版)より、
119番で搬送…人違いでした!本当の患者は置き去り
大阪府熊取町消防本部が、119番を受けて出動した先で、通報者の男性(40)とは無関係の女性を誤って救急搬送していたことがわかった。男性は腹痛で命に別条はなかったが、同消防本部は「確認が不十分だった」と男性に謝罪した。
同本部によると、男性は15日午前4時40分頃、町内の病院の駐車場に止めた車から、「胃のあたりが痛い」と119番した。10分後、救急隊員3人が病院前に着くと、別の中年男性が手招きし、近くの車内にいた女性を運ぶよう頼んだ。隊員は、この男性を通報者と思いこみ、薬物中毒を起こしていた女性を搬送した。
しかし、数分後に通報者の男性から電話があり、人違いが発覚。男性も女性も病院で「治療できる当直医がいない」として受け入れを断られており、隊員に手招きした男性は「たまたま救急車が来たので搬送を頼んだ」と話したという。
救急隊員には通信指令室から通報者の名前や性別、症状が伝えられたが、女性の症状が重篤で搬送を急いだため、現場での確認が不十分になったという。
同本部は、再発防止の検討会を設置。古井和平・町消防長は「救急隊員としてあってはならないこと。通報者確認のマニュアル化などを検討する」としている。
事件の経過はちょっと複雑で、
- 病院に2人(男性と女性)が救急受診したが断られた
- 男性が救急要請
- 救急隊が病院に到着したところ手招きする人物がおり、薬物中毒(なんだろう?)の救急依頼していなかった女性を搬送
- 再び男性から救急要請があり間違っていた事が判明
-
搬送要請者の確認不十分
-
現場にもう1人搬送必要患者がいる事を確認し、搬送手配を行う
救急隊員には通信指令室から通報者の名前や性別、症状が伝えられた
こうあったとしても、現場に搬送必要な患者は1人と思い込んでいるでしょうから、「手招き」されて見た患者が重症そうなら「情報の錯綜」ぐらいと判断してもおかしくないと思います。不手際と言えば不手際ですが、こういう事は救急隊サイドの「珍しい事例」として蓄積されて今後の参考にすれば良いだけだと思いますし、ましてやわざわざ「新聞沙汰」にすべきものかは個人的に疑問です。
3つ目はさらにその翌日の1/25付読売新聞にも、
東京消防庁の救急隊が搬送ミス、病院間違え到着10分遅れ
東京消防庁の救急隊が今月10日、東京都足立区から急病の女性(66)を搬送した際、搬送すべき病院を間違え、病院到着が約10分遅れていたことがわかった。
女性は搬送後に死亡が確認され、同庁や都で死亡との因果関係を調査している。
同庁によると、10日午後9時23分、足立区東和の路上で女性が倒れているのを通行人が発見、119番した。救急隊員が同庁総合指令室の指示で千葉県の松戸市立病院に搬送するはずだったが、午後10時5分、約2キロ離れた同市内の新東京病院へ搬送。同病院の指摘で松戸市立病院へ搬送し直して同10時19分に到着した。この時点で女性の心肺は停止しており、その後、死亡が確認された。死因は心不全とみられる。同庁は「誠に申し訳ない。今後は救急隊員への教育、指導を徹底したい」としている。
これは連絡ミスのようです。短い記事なんですが、
午後9時23分、足立区東和の路上で女性が倒れているのを通行人が発見
東京都内で救急要請が発生しています。ところが見つかった搬送先は、
千葉県の松戸市立病院
ここで分かることは東京都内に搬送先が見つからなかった事です。現在の東京の搬送先探しのシステムがわからないのですが、
同庁総合指令室の指示
一般的には救急隊がまず探し、手間取りそうなら司令室がこれに取って代わるじゃ無いかと思われます。都外への搬送先探しになると出先の救急隊では対応できないと考えるのが妥当です。ここでどんな連絡ミスがあったかが想像できないのですが、
午後10時5分、約2キロ離れた同市内の新東京病院へ搬送
9:23に救急要請があったわけですから、救急隊の現場到着は9:30頃かと考えられます。そこから2km先の新東京病院までは10分もかからないかと思われますので、30分程度搬送先探しが行われていた事になります。「新東京病院」と「松戸市立病院」では聞き違えるのが難しいと思うのですが、現実には間違ったとなっています。
考えられるのは、救急隊と司令室の2本立てで探す混乱が起こったのか、最初に救急隊が依頼した病院に新東京病院があり、最初は受け入れが難しいとしていましたが、院内体制を整えて後からOKを出したかです。ただ新東京病院は搬送を受け入れていませんから、実際に運び込まれて見ると「手に負えない」としたか、救急隊が新東京病院の丁重な「お断り」を誤解したか、患者の容体の変化を心配して強行突破を図ったかです。
3つの中で事件がよく見えないのはこれだけと思います。
3つ目の件はとりあえず保留としておきますが、それでも3日続けて救急隊の不手際を報道したのには何か意図があると考えるのが妥当でしょう。ちょっと日時を整理すると、
- 1/23報道分:1/20発生
- 1/24報道分:1/15発生
- 1/25報道分:1/10発生