「30分ルール」からのJBM

「30分ルール」だけでも十分すぎるほどのJBMなんですが、「30分ルール」に基づくさらなるJBMがあるようです。

私レベルで医療訴訟に「30分ルール」が適用されたのを初めて知ったのは神奈川帝王切開賠償訴訟です。しかし医療訴訟での「30分ルール」はもっと以前から確立していたとの情報があります。有力関係者筋からの情報ですが、この訴訟でも一審段階で患者側が「30分ルール」を持ち出した時点で病院側は白旗ムードで、控訴はしましたが形作りだけだったとされています。二審で子宮内感染の意見書を出したものの実質審理無しで結審し、完敗必至と観念していたとの事です。ところが子宮内感染症で4割も削減され、損害保険枠内で賠償が済み、小躍りして祝宴が行なわれたとの話を聞いています。

そんな話を聞いて「へぇ〜!」と思うしかなかったのですが、「30分ルール」が平成9年当時からあった事を裏付けるコメントを実は、、様から頂きました。

この裁判のウラの教訓はもう一つありまして、、、。
例えば、緊急C/Sを決定した時点で他科(例えば整形外科が交通事故の患者を緊急オペ中)がオペ中で物理的余裕が無ければ、緊急C/Sのために、そのオペを中断させるか、執刀直前ならそのまま待機させなければ裁判に負けるというものです。
夜間当直帯でオペが一列しかできないなら他科の患者も排除しつつ緊急C/Sを捻じ込まなければならんというものです。この裁判開始当初頃?同じ県内で若手だった自分は口うるさく上司に言われたものです。この裁判のウラの教訓として、、、。
『こっちは1分1秒単位で命がかかっている。死ぬぞ!裁判負けるぞ!こちらは何度も提言したがオペ室が断ったんだからね!裁判!裁判!!』

はっきり言って身の毛もよだつ内容です。産科医の方々にはもう常識なのかもしれませんが、10年以上も遅れて知った者としてはまさにビックリ仰天です。本音で言うとこのコメントだけならネタの可能性も考えなければなりませんが、別筋から当時でも訴訟では「30分ルール」が確立していたとの裏付け情報があり信用できる情報と判断しました。

内容は読んでの通りですが、あえてエッセンスを取り出せば、

    「30分ルール」のためには他の診療科の手術でも中断するのが注意責任義務である
私もそれなりの年数を医師として働き、小児科医ではありますが勤務医経験も少なからずあります。小児科医ですから手術室と言っても自分の患者の手術見学に行ったり、帝王切開手術での分娩に立ち会う程度ですが、医師の常識として一度始まった手術を他の手術のために中断するなんて話は聞いたことがありません。余ほどの緊急事態で、行なっている手術を中断するリスクを帳消しにするほどなら絶対無いとは言えないでしょうが、個人的には見たことも聞いたこともありません。

現在行なっている手術を中止すると言うのは、単に手技を中断するだけではありません。物理的に手術室を空けなければなりませんから、手術中の患者を手術室から運び出し、どこかで管理しなければなりません。手術中ですから清潔操作の問題は元より、必然的に手術時間・麻酔時間の延長は避けられませんし、今どきの事ですから家族への説明も必要です。家族によっては容易に納得してくれない方も当然おられると思います。当然ですが手術中にガラガラと院内を移動させられる患者に発生する不測の事態も考えられます。

もちろんどんな手術であってもと言うわけではないでしょうが、

    例えば整形外科が交通事故の患者を緊急オペ中
この程度では直ちに手術を中断しなければならないようです。整形の手術は外科手術でも清潔操作にとくにウルサイ診療科の一つのはずですが、その程度ではおそらく「医療慣行に過ぎない」と退けられるのだと思います。

JBM史上でもトビキリのランクかと思いますが、この話の元になる判決はあるのでしょうか。かなり具体的な内容なので、根も葉もない都市伝説とは思えません。10年前なら今より医師の訴訟に対する感覚は鈍い時代ですから、そういう感覚でも震え上がらせるほどの判決が産科医に、とくに神奈川県であったと考えるのが妥当です。

誰か御存知の方がおられれば補足情報下さい。