5分の代償

「5分ルール」の詳細情報を入手しました。

診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について

保医発第0 3 0 5 0 0 1 号

平成2 0 年3 月5 日

地方社会保険事務局長
都道府県民生主管部(局)
国民健康保険主管課(部)長
都道府県老人医療主管部(局)
高齢者医療主管課(部)長    殿
                                厚生労働省保険局医療課長
                                厚生労働省保険局歯科医療管理官

(4) 外来管理加算

ア外来管理加算は、処置、リハビリテーション等を行わずに計画的な医学管理を行った場合に算定できるものである。

イ外来管理加算を算定するに当たっては、医師は丁寧な問診と詳細な身体診察(視診、聴診、打診及び触診等)を行い、それらの結果を踏まえて、患者に対して症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消するため次の取組を行う。

[提供される診療内容の事例]

1 問診し、患者の訴えを総括する。

「今日伺ったお話では、『前回処方した薬を飲んで、熱は下がったけれど、咳が続き、痰の切れが悪い。』ということですね。」

2 身体診察によって得られた所見及びその所見に基づく医学的判断等の説明を行う。

「診察した結果、頸のリンパ節やのどの腫れは良くなっていますし、胸の音も問題ありません。前回に比べて、ずいぶん良くなっていますね。」

3 これまでの治療経過を踏まえた、療養上の注意等の説明・指導を行う。

「先日の発熱と咳や痰は、ウイルスによる風邪の症状だと考えられますが、○○さんはタバコを吸っているために、のどの粘膜が過敏で、ちょっとした刺激で咳が出やすく、痰がなかなか切れなくなっているようです。症状が落ち着くまで、しばらくの間はタバコを控えて、部屋を十分に加湿し、外出するときにはマスクをした方が良いですよ。」

4 患者の潜在的な疑問や不安等を汲み取る取組を行う。

「他に分からないことや、気になること、ご心配なことはありませんか。」

ウ イに規定する診察に要する時間として、医師が実際に概ね5分を超えて直接診察を行っている場合に算定できる。この場合において、診察を行っている時間とは、患者が診察室に入室した時点を診察開始時間、退室した時点を診察終了時間とし、その間一貫して医師が患者に対して問診、身体診察、療養上の指導を行っている場合の時間に限る。また、患者からの聴取事項や診察所見の要点を診療録に記載する。併せて、外来管理加算の時間要件に該当する旨の記載をする。

エ外来管理加算は、標榜する診療科に関係なく算定できる。ただし、複数科を標榜する保険医療機関において、外来患者が2以上の傷病で複数科を受診し、一方の科で処置又は手術等を行った場合は、他科においては外来管理加算は算定できない。

5分ルールの要点は、

  1. 患者が診察室に入室した時点を診察開始時間、退室した時点を診察終了時間
  2. 一貫して医師が患者に対して問診、身体診察、療養上の指導を行っている場合の時間
  3. 患者からの聴取事項や診察所見の要点を診療録に記載する。併せて、外来管理加算の時間要件に該当する旨の記載をする
ここでなぜ「5分」なのかの必然性については、医療維新のインタビューで厚労省保険局医療課長・原徳壽氏が滔々と解説された通り、

丁寧な診察をして、患者さんが納得する診療をしてもらいたいということです。「3時間待ちで3分診療」がよく問題視されています。だから「3分診療」ではだめなのです。

厚労省保険局医療課長・原徳壽氏のインタビューを是非皆様記憶していてもらいたいと思います。

    「3時間待ちで3分診療」がよく問題視されています。だから「3分診療」ではだめなのです。
「3時間待ちの3分診療」はたしかに問題はあります。これには2つの問題が含まれています。
  1. 3時間も待たされること
  2. 3分しか診療されないこと
どちらも問題であり解消されなければならない課題です。どちらがより切実な問題であるかは患者の感性によっても異なるでしょうが、個人的には、
    待ち時間の長さ > 診察時間の短さ
こう感じてられる方のほうが多いように思います。もちろん逆の方もおられるでしょうが、多数派の意見としては待ち時間を何とかして欲しいと感じている人の方が多いと考えます。

医療機関を受診する目的は病気の治療のためです。病気も様々ありますが、基本的な療養方針として「安静」があります。病気の治療全体として考えると、できるだけ早く受診を済ませ、帰宅して安静に努める事が治療にとって好ましいのは間違っていないかと考えます。

「3時間待ちの3分診療」が発生する原因は受診患者数の多さです。「3分」でも「3時間待ち」が発生するわけですから、これは待ち時間を減らすための医師の究極の努力の結果とも言えます。「3分診療」を行うためには熟練と、長時間、多数の患者を相手に高い緊張感と細心の注意の持続が必要です。医師にとっても過酷な状況ですが、これを行う事によりなんとか「3時間待ち」で待ち時間を押し止めているのです。

ところがこれが5分となると待ち時間は必然的に長くなります。「3分診療」の1時間の診察人数は20人です。「3時間待ち」とは自分の順番の前に60人並んでいるという事になります。これまでは「3分」でしたが、これが「5分」になるとどうなるかですが、

    60(人) × 5分 = 300分
「5分ルール」になると300分すなわち5時間の待ち時間が必要となります。何が起こるかは明瞭ですが、
    5時間待ちの5分診療
厚労省は「3分診療」を改善するために患者の「5時間待ち」をしろと言っている事になります。「3時間待ち」が「5時間待ち」になるより「3分診療」が「5分診療」になる方が患者にとって喜ばれるから断行するとしています。この点について厚労省保険局医療課長・原徳壽氏は、
    丁寧な診察をして、患者さんが納得する診療をしてもらいたいということです。
明らかに「3分」が「5分」になることで、待ち時間が「3時間」から「5時間」になるデメリットを打ち消すとしています。それがより「患者を納得させる」有効な政策であるとしています。

決定されたからには医師はこの政策に従わざるを得ません。これまで「3時間待ち」の苦痛を耐え忍んでいた患者の皆様は4月から「5時間待ち」を耐えてください。厚労省は待ち時間がたった「2時間延長」されるだけで夢の「5分診療」の実現を約束しました。これは「患者のため」の政策ですので、長くなった待ち時間は喜んでもらわないといけません。医師もまた診察時間が長時間化するのに一緒に耐えていますから。

最後に「5分診療」が夢の診療になる理由を厚労省保険局医療課長・原徳壽氏はこう語っています。

    なぜ「5分」にこだわっているか。一つには、財源の問題があります。改定時には、外来管理加算がどのくらい算定されるかを計算していますから、「5分」は崩せません。