姫路のつづき

姫路の「たらい回し」事件の余波と言うか津波です。この事件はまず「17病院たらい回し」の末、患者が死亡した事件です。この事件については良く御存知かと思いますが、出てきた情報からは「たらい回し」が無くとも患者の容態は厳しかったの見方が強く、さらに救急隊の搬送先探しに不手際もあった事が判明しています。

しかしマスコミは壮絶なバッシングを行ないました。バッシングの結果、行政は動き、行政の動きもまたマスコミが捻じ曲げて囃し立てる経過をたどっています。そのあたりは姫路宣言の真相を御参考にしてもらえればと思います。

すったもんだはあったのですが、この騒動に嫌気が差してか

    実際会議中に2、3の医療機関から輪番から撤退するという申し出もありました
この会議と言うのは市と医師会の「再発防止会議」だったのですが、この「申し出」がどうなったかの続報は無く、申し出だけで実行はされないんじゃないかと個人的には考えていました。姫路の二次救急輪番は、
  • 内科系:最盛時14病院 → 現在6病院
  • 外科系:最盛時16病院 → 現在7病院
見てのとおりで、最盛時に較べると1/2から1/3に減少し、負担はその分増えています。姫路の輪番システムはよく知りませんが、輪番が内科系・外科系1ヵ所ずつでも月に4〜5回、2ヶ所ずつならその倍になります。これ以上減ると輪番救急の維持は難しくなるので、なんらかの手立てを行政も行なって、輪番への繋ぎ止め工作ぐらいは行なうだろうと予想したからです。

ところが「申し出」は現実化しました。Web版にはまだ上っていないのですが、今朝の神戸新聞によると、

  • 内科系:現在6病院 → 5病院に
  • 外科系:現在7病院 → 4病院に
内科系が1病院、外科系に至っては3病院が撤退する事に決定したようです。昨今の医療情勢、救急対応へのバッシングの厳しさを考えると、十分な体制を提供できないと判断した病院が撤退する事は責められるものではありません。「受け入れ不能」と言っただけで「たらい回し」「診療拒否」みたいなマスコミ記事が全国的に躍り、病院名まで曝されるのならそんなリスキーな仕事をわざわざ引き受ける義理は無いという事です。そのうえ真面目にやれば救急は赤字になります。

またこの撤退の背景は行政サイドのその場しのぎの責任逃れに愛想を尽かした部分も大きいかと思います。姫路の「たらい回し」では現場の救急隊員の責任を必ずしも問うものではありませんが、実際には搬送できる病院があったにも関らず見逃しています。ヒューマンエラーですがミスはミスです。そのミスを行政サイドは隠蔽しようとしただけではなく、病院サイドの押しつけようと工作したと感じたと考えています。

「たらい回し」リストをマスコミに病院の実名入りで公表したり、協議会の方針を

    救急隊が搬送先を探す際に診療科を限定せずに判断
こう歪曲して報道したりです。この部分に関しての真相は、今回の救急隊のミスである、診療科だけを聞いて受け入れ打診を行なわなかった事への対策だったはずなんですが、マスコミ公表時には「姫路宣言」とまで揶揄される代物になってしまっています。もちろん行政サイドが本当にそうしたかどうかはわかりませんし、マスコミが勝手に歪曲したのかもしれません。それでも報道に対して訂正を要求する熱意の乏しさがはっきり見えるのは確かです。

脱退した病院は雰囲気として行政がどう言葉を飾ろうが、事が起これば次回も同工異曲の責任回避に走ると濃厚に察知したと考えています。やるだけで赤字で、職員の負担が大きく、「たらい回し」が起こればマスコミに袋叩きにあい、行政もマスコミサイドに加担するとなれば留まる方が常識的には異常な判断です。医療者としての良心を越えるところまで事態は悪化していると考えます。

しっかし厳しいですね。やせ細った輪番からさらに脱退したために、ついに空白日が誕生するようです。姫路では三次救急病院である姫路循環器センターが既に半身不随で救急としてはほとんど機能していません。二次輪番が維持できなくなると周辺に流出する事になるのですが、東側の加古川も機能麻痺が進行しています。西側の赤穂は健在ですが、姫路から押し寄せれば、時間の問題で疲弊するのは目に見えています。

他人事みたいに言わずに対処法を考えたらどうかと言われそうですが、な〜んにも対策が思い浮かびません。打つ手さえ見当たらないほど深刻と言うことです。いよいよどん詰まりの局面を迎えつつあるようです。