11/5付け神戸新聞より
県、行革で歳出7630億円圧縮 計画素案発表
危機的な財政状況打開に向け兵庫県は五日、二〇一八年度までの行財政構造改革計画のたたき台となる企画部会案を発表した。定員の三割削減などで一般行政、教育、警察各部門の職員計三千二百三十人を減らし、県民局など出先機関の統合再編、建設事業費の削減、事務事業の見直し、補助金カットなどが主な柱。すべて実施した場合、一般財源ベースで計七千六百三十億円の歳出削減効果を見込んでいる。
同部会は新たに設置された行革のための組織。行革をしなければ一八年度までに一兆千二百十億円の大幅な累積収支不足になると試算。部会案では、施設跡地の売却など五百九十億円の歳入増効果に加え、行革を前提にした県債発行などの財源対策と合わせて収支不足を解消。三百億円の新規事業財源が確保できるとしている。
職員定員は、一般行政=二千七百人▽教育=四百二十人▽警察=百十人を減らす。職員給与は単年度平均で本給の約6%相当分をカットする。特別職は知事20%(現行10%)、副知事15%(同7%)など給与カット幅を拡大。これらの見直しで人件費を計二千七百億円削減する。
十県民局体制は〇九年度、丹波県民局を廃止するなど五県民局と一県民センターに見直す。教育事務所も再編する。外郭団体を一部統廃合し、県の支出を15%減らす。
全国の水準を大幅に上回っている建設事業費は、補助、県単独事業とも数年で現在の全国平均レベルに合わせる。事業費総額は、補助事業で単年度千二百億円(〇七年度比79%)、県単独事業で同七百億円(同55%)まで削減する。施設整備は本年度を基準とし、計画段階は一四年度以降に着手延期▽設計段階は三年凍結▽工事着手済みは計画通り実施-とした。
事務事業では、老人医療費や乳幼児医療費などの一部自己負担増▽私立学校経常費補助単価の段階的カット▽大学洋上セミナーの廃止-などを挙げ、市町との負担割合も見直す。庁舎や学校などの施設維持費については、〇八年度予算で前年度比85%に抑制する。民間団体への補助金は、人件費分は5%、事業費分は10%、運営費分は20%をそれぞれ削減する。
部会案は、計画の大枠と〇八年度に実施する具体的中身を軸にした「第一次案」。県は市町や県議会などの意見を聞いて修正のうえ〇八年度実施分を決定し、来年十月までに最終的な行革計画を策定する方針。
昨日773様が久しぶりにコメント欄に帰ってこられたのに神戸新聞の引用をするのは気が引けるのですが、記事自体は無味なので御容赦願うことにします。
記事の趣旨は兵庫県の財政が危機的状態なので緊縮予算を組むと言うお話です。兵庫県は他の府県と同様の構造的赤字に加えて、阪神大震災の復興事業が被さり、喘ぎ続けている状況です。とは言え地震は12年前の事であり、財政が苦しいのは昨日今日のことでは無いと思うのですが、さらなる緊縮計画を打ち出したと言う事のようです。
この話の伏線は、今年度の歳入見積もりが大幅に下回り、予算執行が不可能になった事に端を発しています。たしか6000億円ぐらい不足していたと記憶しています。歳入不足の話を聞いた時に、財政危機県なのにえらく甘い見積もりで予算を組んだものだと嘆息しましたし、まさかと思いますが歳出に合わせて歳入を甘く見積もったなんて事はなかろうかと考えたものです。もちろんそこら辺りの財政事情の舞台裏は私にはわかりません。
とにもかくにもお金が無いから節約政策が列挙されています。
パッと見てまず感じたのは、県職員の定員を3割も減らす余地があったんだということです。3割といえば物凄い数で、3人に1人をクビにする事です。施策として大胆であるのは評価しますが、これまでそれだけの余剰人員を抱えていた裏返しとも取れます。3割すべてが余剰人員と言う気はないですが、どう甘く見積もっても1割は余剰人員と見なされても不思議は無く、だったら5年前からでも、10年前からでも削減しておいたらよかったのにと外野は思います。事務事業の削減を見てみると
- 老人医療費や乳幼児医療費などの一部自己負担増
- 私立学校経常費補助単価の段階的カット
- 大学洋上セミナーの廃止
もうひとつ建設事業費の削減ですが、
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全国の水準を大幅に上回っている建設事業費は、補助、県単独事業とも数年で現在の全国平均レベルに合わせる
無駄なものを作っているとは言いませんが、財政難の中で本当に選別して予算を投じているのかの質問をしたくなります。緊急を要する事業でないのは確かで、人員削減の話ではないですが、中止出来る程度のものであるなら、不急の建設事業費が散漫に投じられていたのではないかの検証が必要な様な気がします。
ここで対比しておきたいのは、
- 老人医療費や乳幼児医療費などの一部自己負担増
- 建設事業費の削減
数年以内という表現が曲者で、仮に来年度の歳入が今年と逆に好転するような事があれば、ただちにこの話は雲霧消散するということです。さすがに来年度は原油高の影響で削減されるでしょうが、再来年度以降についてはその時の状況次第でいくらでも変わる余地があるということです。さらに削減する限界点まで明示してあり、
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全国平均レベルに合わせる
医療費の削減については計画案がほぼ原案通り進められる公算が高い上に、再来年度以降についても「見直し」はいくらでも起こりうる余地があります。もちろん医療費削減についても限界点はあり、国の保険制度以上には減らせませんが、ここにもカラクリが見えます。後期高齢者医療制度です。後期高齢者医療制度についてはかなり骨格が見えてきていますが、一つの特徴として財源の調節を保険組合、あからさまに言えば表裏一体の自治体が介入できる点です。さて、どうなるのでしょうか。
あくまでも医師としての私の感想ですが、建設事業費を全国平均以下にしても、県民の健康を守るために医療費を確保するの発想があっても良い様な気がします。もちろん建設事業費を投じる事で、雇用の確保を図るという経済効果の得失まで本当は論じなければならないのでしょうが、そこまでは私の手に余ります。
ただ感想として、同じ削減するにしても、建設事業費より医療費の方が削減する優先順位が確実に高そうな計画であると感じます。