子育て支援策

小児科医にとって関心が深い少子化対策ですが、年初の騒ぎとは裏腹に既に過去の話題と化しつつあるようです。一応年初の話題でしたので少子化担当大臣なるものが設けられましたが、新人議員でこれに専従の省庁も無い状態でどれほどの政治力を発揮するかと思っていましたが、今回打ち出された少子化社会対策推進会議の報告にその成果が現れています。5/16付の毎日新聞から少し引用します。

<地域・家族の子育て支援

  • 子育てマネジャーの育成
  • 地域子育て拠点の拡大
  • 学生の家族支援ボランティアの導入
<働き方に関する施策><経済的支援>
  • 出産育児一時金の前倒し支給
  • 乳幼児期の負担軽減
  • 妊娠中の検診費用の負担軽減
  • 子育て世帯への税制優遇

以上が主な内容だそうです。字面だけを見てみるとまず第一歩としてなら、素晴らしいまでは言い過ぎとして、それなりに頑張った内容と受け取れそうな気がします。大きく三分類されていますが、素直に関心が向くのは経済的支援です。4項目が挙げられていますが、たしか育児手当も話題になっていたはずなのですが、とりあえずすっぽり抜けています。

さらに各紙の解説を読むと、税制優遇も検討するだけのようです。検診費用の負担軽減も同様だそうです。乳幼児期の負担軽減もまた同様だそうで、実行する見込みがあるのは出産一時金の前倒し支給だけだそうです。前倒しになる事は悪いとは言いませんが、構想段階では出産にかかる費用の無料化まで打ち上げていた事を思うと、えらく後退した印象を受けます。

結局のところ少子化対策には現在のところ財源的裏づけが事実上ゼロに等しく、金のかかる積極策はどれも実行するのが難しいと言う事だそうです。言われてみれば出産一時金の前倒し支給は後か先にに支給時期が変わるだけで、支出額そのものには変わりがあるわけでなく、財源的裏づけはほぼ不要ですから、実行できるのはこれぐらいと言うのは妙に納得できます。

ところで従来の出産一時金はどれぐらいの時期にもらえたのでしょうか。これまでは出産後に請求用紙を提出し、それから最も早くてその場で手渡し、遅くなると2ヶ月ぐらい経ってから振込みで支給されるそうです。前倒しとなると、どれぐらいの時期を想定しているかに興味はあります。普通に考えれば陣痛が始まってからでしょうが、陣痛が始まって出産まではそんなに長いわけではなく、妊婦さんはフーフー言っているわけですから、請求用紙を持って走り回らなければならないのは旦那さんと言う事になります。

走り回るのも平日の昼間であれば可能ですが、週末や長期連休中であっても、いつでも24時間対応してくれる体制を考えているのでしょうか。そうでなければ出産前にもらおうと思っても結局出産後になります。なんと言っても役所は週休二日制ですから年に100日以上のお休みがありますから、どうなるのでしょうか。また医学的に言えば切迫流産なんてものもありますから、それへの対応なんかもどうするのか、この前倒しにすると言うだけでは対応は???です。

今朝の神戸新聞では前倒しにする事を1面で伝えていましたが、時期とタイミングが難しい前倒しよりも、出産後速やかに支給する体制の方が合理的なような気がしないでもありません。出産後申請したら、即日支給ぐらいの対応にすれば、前倒しにしたことを大成果と宣伝するより現実的なような気はします。いずれにしろ辛うじて実行される可能性がある前倒し案も詳細不明ですから、論評はこの程度です。

どっちにしても財源でしょうね。素人が考える順序はまず必要な施策を検討し、その施策にそって必要な財源を確保するなんでしょうが、現実の政治はまず少子化対策財源をドカンと出し、それの分捕り合戦にしないと進まないのを如実に表しています。

私は少子化問題を国家的緊急最重要課題と考えていますが、実際そう考えている人はあまり多くなさそうだぐらいを、この報告書に感じてしまいました。