学会を作ろう

医療事故に対する公平な専門家による第3者審査機関の設立法をいろいろ考えていたのですが、なかなか難しいですね。好むと好まざるに関わらず医者と患者の間には深い溝があり、患者代表が入ると感情論爆発となり、審査機関の構図が医者対患者の対立模様になってしまうのは避けがたいからです。とはいえ医者だけで公式機関を作ると「隠蔽組織だ」と袋叩きになります。

公式なものの設立はとりあえずあきらめて、非公式ないし準公式的なものでまず考える事にしました。最初に注目したのは福島事件で医者が団結するキッカケにもなったWEBです。匿名ではありますが、医者の本音を噴出するBBSにはパワーを感じました。今まで言いたかった事、言えなかった事があれだけはっきり出てくる力を利用しない手は無いと考えたのです。

しかしWEBは匿名であるが故に極論、暴論に走りやすいのが難点です。2chはもともとそう言う所ですから仕方が無いにしろ、ある程度期待して読んでみたm3.comも、2ch的雰囲気が滔々と押し寄せており、冷静な医学的議論の場として発展を期待するにはかなり難しいかなという印象です。ああいう所はあれで必要なところであり、またそういう役割があるのであって、そこに第3者審査機関的な役割を担わすにはそもそも無理があると言うところです。

福島の事件でキッカケとなったのはWEBですが、流れを大きく決めたのは医師会や学会の公式声明です。WEBは草の根の声を拾い上げ、医者世論をリードはしますが、それを結果として世間にインパクトを与えるにはやはり権威が必要です。医者世界の権威は医師会であり、学会です。ここが最終的に動かないと現状では力になら無いということです。

権威の一つとして医師会を挙げましたが、ここは既に政府とのしがらみが濃くなり、かつて全国ストライキを行なったような独立不羈の気風は失われています。地方ではまだ覇気のあるところは残っているようですが、全国組織となると老化からの動脈硬化の状態を起しているとしか思えません。また歴史的経緯からあまりにも開業医よりの組織となっており、勤務医の参加や影響力があまりにも弱く、名前とは裏腹に全国の医師の団体でないのも医師なら良く知っています。

もう一つの権威である学会ですが、ここは医師会に較べるとまだ独立不羈の気風は残っています。残ってはいますが、診療科によりあまりにも細分化されており、考えの及ぶ範囲が非常に限局されたものになっています。医者の気風の一つである、専門以外のテリトリーには口を出さないが徹底しすぎているのが難点です。難点ではありますが、動くのであればまだこちらの方が期待をもてます。

現実的な方針として、WEBで草の根が動き、学会に波及し、医師会も引きずられるように動く形態を目指さざるを得ないのが現状です。福島の事件と同じ構図です。しかし難点はやはり学会が細分化しすぎていることと、WEBと学会には直接の接点が無い事です。

そこで考えたのですが、学会は専門領域ごとに細分化されすぎていることが欠点と書きましたが、逆に新しい学会を作る事もまた容易であろうという事です。良い意味でも悪い意味でも「医療事故」に対する世間の関心は高く、医者と患者では同床異夢かもしれませんが、「医療事故を防ぐ」必要性では一致しています。そこで仮称ではありますが「医療事故防止学」なるものを提唱し、それに対する学会を作ればどうだろうかと考えます。

医療事故防止学会では過去現在の医療事故の検討分析し、その結果に基づいた具体的な防止法の提唱やガイドラインの設定を行なうのです。もちろん行動の一つに医療事故が発生したとき、これが過誤なのか事故なのかの見解も学会として公式発表します。

こういう学会なら診療科や勤務医、開業医の枠を超えて参加できますし、多くの医者が危機感を抱いているテーマなので参加者も見込まれると思います。こういう学界の権威は参加者の多寡で左右される部分もありますので、できるだけ沢山の医療関係者に参加してもらうことが望ましいです。こういう学会ができて、それなりの権威を有してくれれば、後はこの学会の動きに引きずられて従来の学会、さらには医師会も連動して医療サイドの運動として効果的ではないかと考えました。

考えたのは良いのですが、問題は誰がどうやって作るかですね。一介の町医者では手に負える問題ではありませんし、具体的な設立手順となるとお手上げです。もちろんできたら真っ先に参加するつもりですが。