ところで

福島の事件以来、眦を吊り上げて、血相を変えて医療問題を連続して取り上げてきました。時に勇み足もあり、方向性に迷ったりで試行錯誤の面もありましたが、なんとか自分なりに主張をしてきたつもりです。この事件の波紋は学会や各地の医師会の公式抗議声明の続出につながったり、空前の結束によるWEBで結集した集団による陳情書を提出したり、小さくは平穏な話を紡いでいた医者のブログが糾弾モードに変わったりです。

WEBのこの事件に関係するサイトはまだ盛り上がっていますが、医師全体としてはどうなんでしょうか。なにせ町の片隅の開業医で、他の医者との付き合いもお世辞にも良いとは言えず、何ヶ月も医者と話をした事がないのも珍しくない境遇ではトンとわかりません。陳情書に署名した医者の数は6000人ぐらいだったと思いますが、それ以外の医者はどれほどの関心をこの事件に寄せているか、そもそも関心があるかないかも実感としてまったくわかりません。

そんな事を考えていたら、私のお膝元の医師会もなんのリアクションもない事にフト気がつきました。医師会といっても不熱心な末端会員で、出来うる限りの会合を避けているような状態ですから、情報不足は私が悪いと言われればそれまでですが、定期的に入る医師会情報には一言も触れた形跡はありません。

今回の事件への温度差は勤務医、開業医なら勤務医の方が深刻で、外科系、内科系ならメジャーな外科系ないし循環器内科や消化器内科のような侵襲度の強い診療科のほうが強いと考えます。また大都市部と地方では地方の方が圧倒的に強く、危機の影が微弱な大都市部ではまだまだ対岸の火事の意識がどうも強そうです。

うちの地元を見れば、医療危機なんてどこの話だと言う環境だとも言えます。産婦人科は病院も開業医もまだ健在で、小児救急も十分とは言えないかもしれませんが、それなりに整っています。そんなところで「危機だ、危機だ」といくら力説しても共鳴は得られないのかもしれませんし、危機感を抱くのは難しいのかもしれません。

そうなると、そんなところで医療危機と言って力みかえっている医者はピエロのような気がしてきました。でもうちの地元でも危機の影が無いとは言えません。中核市にほぼ匹敵する都市の市民病院から産婦人科が消滅しました。神戸の北部の重鎮病院からも産婦人科が消滅しました。でも代替施設が十分あるので、椿事ないし一時的なものとしか誰も考えていないようです。それよりもそんな事さえ新聞記事にさえならない状態です。

せめてそれなりの医師会の集会に出席してみて雰囲気を聞いてみようかと思います。できれば質問もしてみようかと思いますが、返答は「???」の気がしないでもありません。どうもこの地ではあの事件は、遠い遠い別世界の話以上の存在でしかない様な気がします。そんな事を考えたら今朝は少々鬱の気分です。