ハーフパイプ

なるほど元はスケートボードなんだ事はよく分かります。解説者が「グラブも決まってます」なんて表現が最初理解しにくかったのですが、スケートボードは足をボードに固定してないのですから、飛ぶ時にボードを持っていないと足から離れます。だから高く飛ぶ時に手でボードを持つことが評価点になっているんだと、最後の方でやっと気がつきました。

でもよく考えればスノーボードは足をボードに固定した時点でスケートボードとは飛び方が変わっているのですから、ああやって手でボードをつかむ動作もやがて廃れていくんじゃないかと思います。きっとトリノが懐かしの映像に変わった頃には、「当時はスケートボードの影響が色濃く残っており・・・」なって解説が入るような気がします。

それはそうと優勝した選手の演技は迫力がありました。スピード、高さ、テクニックの完成度、それと画面からでも伝わる勢いと言うか迫力みたいな物の差がよく分かりました。日本勢も決勝には残りましたが、どうしてもこじんまり、無難にまとめた印象が強いのに較べるとえらい差です。ミスもありましたが、ノーミスで完璧であってもメダルには少し距離があるように感じます。

アメリカはスポーツ大国です。夏も冬も揺るぎない強豪国です。五輪種目だけではなく、ほとんどすべての競技で世界の頂点に君臨しており、不毛と言われるサッカーなんかでも日本とチョボチョボ程度には張り合えます。ラグビーでも日本よりは強いです。

理由はいろいろあるでしょうが、ハングリー精神の差みたいなものを感じます。あの国ではとうの昔にアマチュアリズムは衰退しています。スポーツをやる事は立派な職業であり、勝つ事で巨万の富を約束されている世界です。ただし職業ですから勝たないと食って行けません。食うためには勝つしかない世界でしのぎを削った連中の向上心と競争意識の強さは目を見張るばかりです。

プロ化という点ではおもしろいお国柄で、結構ヘンテコな競技でも興行師が「ビジネスチャンスがある」と感じればすぐさまプロ組織を作り上げ、全米興行を打ち出します。おそらく途中で挫折して消滅した競技も数知れずあるでしょうが、新たな競技に参加する選手たちもプロとして観客を集めないと興行が潰れますので、観客が集まる演技やテクニックを磨き、ファンサービスに努め、興行が大きくなることにより賞金も増え、収入も増えるという相関関係が見事に成り立っています。

アメリカで成り立っているプロスポーツ、とくに新興競技では何より観客を唸らせる事が最重要になります。採点基準も審判員が観客と別の視点で見るわけではなく、観客的な印象が採点基準になります。だから既製の技の完成度より、新たな技で観客を唸らせる選手の方がこれからの興行にはありがたく、評価が高いことになります。

ハーフパイプ競技もその辺の差が如実に出ている気がします。ハーフパイプも発祥の国アメリカは基本的にワールドカップには参加していないそうです。だから五輪競技としてのワールドカップとショービジネスとしてのXゲームは採点基準が違うと言えます。ただ競技の性格上「見せる」要素が強い種目ですので、Xゲーム基準がワールドカップ基準を圧倒したのが昨日の結果ではなかったかと思います。

日本勢もワールドカップ基準の枠内では高い技術を持ち、成績を残していたようですが、しょせん観客を集め、集める事により大金を獲得する事にしのぎを削るXゲーム基準の技術の進歩には、一昔前の水準であったと言えると思います。

ひとつだけはっきりした事は、次期五輪でメダルを狙うにはワールドカップを転戦するのではなく、Xゲームでしのぎを削っておく必要があると言う事です。アメリカを除く世界水準ではなく、アメリカのメダル水準を身につけ凌駕する必要があると言う事です。

幸い体格の大小で有利不利が目に見えてつく競技ではありませんから、4年で巻き返しは不可能ではありません。Xゲームで成功すれば富も手に入りますし、その技術で五輪の名誉も手に入ります。若人よ目指せアメリカに・・・てか。う〜ん、やはり日本はしょぼくれていますネ。。。