出典は旧唐書列伝四十八盧懐慎伝で、
懷慎與紫微令姚崇對掌樞密,懷慎自以為吏道不及崇,每事皆推讓之,時人謂之「伴食宰相」
これを正確に読み下すのは大変(つうかそもそも出来ません)なのですが、時は玄宗皇帝の御代で姚崇という切れ者宰相がいました。その手腕は開元の治と呼ばれる唐の全盛時代をもたらしたと評価されています。ほいでもってwikipeadiaより、
ある時姚崇が不在であった際に黄門監の盧懐慎が政務を代行したが、姚崇に比べると裁決に迅速を欠くこと甚だしく、大いに政務が遅滞した。このため人々は盧懐慎のことを相伴の大臣という意味で「伴食宰相」と呼んだ。今日に至るまで能力・実権に欠ける大臣のことを「伴食大臣」と呼ぶのは、この故事に端を発するという。
盧懐慎の無能を嘲ったとなっていますが、旧唐書の原文を読む限り、盧懐慎は姚崇の有能を認め、これを妨げないようにしたぐらいに読めなくもありません。もっとも、その立てすぎる姿勢に批判があったぐらいでしょうか。原典はそんな感じですが、伴食大臣とはコトバンクより、
高い地位にありながら、無能で他の人のなすがままになっている大臣。要職にありながら、実力の伴わない者をあざけっていう語。伴食大臣。
まずは6/22付デイリースポーツより、
この日、午前中に丸川珠代五輪相(50)が閣議後の定例会見で、東京五輪・パラリンピック組織委員会が会場で観客への酒類の販売を認める方向で調整していることについて言及。「組織委が検討している。大会の性質上、ステークホルダー(利害関係者)の存在がどうしてもある。いずれにしても大声を出さない、拍手での応援などの観戦スタイルが貫かれる形で検討を願いたい」と、説明。スポンサーへの配慮を示唆していた。
正気かと思うような発言の数々です。そりゃ、
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大会の性質上、ステークホルダー(利害関係者)の存在がどうしてもある
ですがそれを内輪ならともかく、外に向かっての説明に使ったらアカンでしょ。ましてや発言しているのは国会議員であり、五輪担当大臣でもあります。ステークホルダーの要請も腹に納めながら、そんな影響はなくあくまでも責任者の判断として発言するのが政治家のはずです。橋本組織委会長も驚いたようで、
一部報道で酒類の販売について、組織委の判断がスポンサー契約の影響を受けているかのような記載がありました。安全最優先の大会を開催すべく、酒類の販売・提供については、大声の抑止・安全な誘導の実現の観点や現在の一般的ルールに鑑み検討中です。スポンサー等の意向で販売方針を決めることはありません
あの「アホンダラが・・・」の怒りが滲むようなコメントと受け取ります。五輪での酒販売は1日で引っくり返り無くなったようですが、ステークホルダーと目された企業はもっと仰天したはずです。五輪スポンサー企業はマスコミを除いて一社独占です。酒の販売に関与する企業はアサヒのみです。五輪相の発言は、
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ステークホルダー = アサヒ
ではアサヒがステークホルダーでなかったら誰になるかです。これは憶測も良いところの話にしかなりませんが、ステークホルダーに該当する人物が、
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五輪を酒を飲みながら観戦させろ
無理やり五輪担当相を擁護すれば、世論の大反発を計算してステークホルダー発言をあえてやったとの見方も成立します。会議室では酒販売容認をゴリ押しされ押し切られてしまったが、これを覆すためにステークホルダー発言を出したぐらいです。
もっともそこまでの政治的手腕が五輪担当相にあるかどうかについての知見は、私は持ち合わせていません。断片的ですが否定的な評価の方が多い気がします。それでも結果は明瞭で、五輪会場では酒は売られないことになりました。
それにしても今でも無観客の選択が残されている情勢で、酒の販売の是非レベルの話が出て来るのに驚いています。これって、五輪強行開催が決定したから、五輪推進派が舞い上がった一つの動きなんでしょうか。
つくづく、エライ時期にエライ物を抱え込んでしまったと痛感しています。後世にコロナ五輪として名を残しそうで嫌な気分になっています。