大司教がユダであるかないかの確認は、ミサキとシノブ常務にはどうしようもない問題です。さらにシノブ常務は最後は及ばずながらでも戦うと仰ってましたが、過去はともかく神との実戦経験は皆無です。もう俎板の上の鯉状態です。
大司教を乗せたタクシーが玄関に着き、そこから歓迎式典が行われました。表面上は聖ルチア教会に定期的に寄付する事により教会での結婚式の優先使用を認めてもらってる関係ですから、会社としては精いっぱいの歓迎の姿勢を示します。
歓迎プログラム自体は和やかに進行していたのですが、ミサキもシノブ常務も緊張でガチガチです。とにかく大司教と二人きり、ないしは三人きりになる状況だけは避けようと考えてますが、ユダの力なら他の同席者を眠らせてしまうなんて朝飯前の気がします。
一番の難所は会議室での会談。出席するのは社長、副社長、シノブ常務と通訳を兼ねてミサキです。相手も大司教と司祭、それに助祭が二人ですが、司祭と助祭にはミニチュア神が宿っている危険性も十分にあります。その時刻がだんだんに近づいてきて緊張が頂点に達した時に
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「ミサキちゃん、あれはユダじゃないよ。ただの大司教だから安心してイイよ。シノブちゃんにも伝えといてね」
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「わかった」
無事大司教をお見送りし、ミサキとシノブ常務と一緒に常務室に向かいました。とにかく緊張したのでコーヒーでも一杯飲もうってところです。歓迎式典の間は緊張のあまり水さえ口に出来なかったからです。さて常務室には前室があり、そこには秘書が詰めているはずなのですが、
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「あれ、どこ行ったんだろう」
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「ハ〜イ、お疲れ様。ユダは約束守ってくれてるみたいよ。コトリもニュースで見たから心配して見に来たけど、メデタシ、メデタシで良かったんじゃない」
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「会いたかった、本当に会いたかった・・・」
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「コトリ専務〜」
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「そんなに泣くことないじゃないの。とっくに気づいてたんでしょ。それより、どう、立花小鳥の感想は」
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「どうして、どうして、どうして、もっと早く言ってくれなかったんですか。私は面接で見た瞬間からコトリ先輩と確信していました。もっと早く言ってくれても・・・」
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「そうそう、ミサキちゃん、やっぱり甘いわよ。どうしてもミサキちゃんは量に傾いちゃうのと、マネージメントが優しすぎるのよねぇ」
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「ゴメンナサイ・・・」
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「イクエちゃん、御手洗に行くときのマニュアルをまた忘れたね」
「えっ、えっ」
「そうだよ、コトリだよ」
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「専務〜」
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「おいおい、なにが起こってるんだ」
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「専務が、専務が・・・お戻りになられました」
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「帰って来てくれたのか。いや、必ず帰って来てくれると信じてた・・・」
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「これは、いったい、なにが・・・」
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「高野君。ついに帰って来てくれたんだ・・・」
「えっ」
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「どうも失礼しました。今日はお休みを頂いておりますので、これで帰らせて頂きます」
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「明日、明日必ずお待ちしています」