リンドウ先輩:あとがき

 この作品は『天使と女神』のスピンオフ作品となっています。『天使と女神』がラブロマンスだったのですが、同じような路線では次回作の構想がさっぱり浮かばず、路線転換を図っています。

 青春野球ドラマなんてこの世に掃いて捨てるほどあるのですが、マンガやアニメ、実写ならともかく小説にすると案外書きにくいところがあります。サッカーなんかもそうですが、テキスト・ベースでは試合のシーンの迫力の描写が難しいと言うのがあるからです。

 そのためって訳じゃないですが、話の力点は試合の前後の人間模様をいかに描くかが重要になってきます。そのためにフォア・シーズンズの四人にはあれこれ働いて頂きました。ただですが、四人も立てたために冬月はなんとかなりましたが、残りの三人のキャラが立てきれず、少々心残りの部分になっています。

 今回のテーマの一つに破格のスーパーマンである水橋に、いかにリアリティを持たせるかがありました。手法的にはある程度確立してまして、まず周囲との接点を丹念に描くのがまず重要です。次のポイントはスーパーマンにも人間としての弱みがあることです。そのために水橋のスタミナ問題を配しています。

 これは個人的な好みの問題もありますが、普通人が時にスーパー能力を発揮して難局を解決するより、スーパーマンが普通人に近いところがある方が妙に親近感を覚えるというのがあると思っています。とは言うものの、理屈はそうであっても書いてみると大変なのはよくわかりました。

 ほんじゃ、スーパーエース水橋を出さない話にする手もありましたが、今度はたかが五月から練習したぐらいで県予選の決勝までヘッポコ野球部が進出させるのに無理が出てきます。ヘッポコ野球部だって少しは上達するでしょうが、やはり奇跡の快進撃を起すにはジョーカーが必要だったぐらいです。


 ヒロインの竜胆薫は作品構想で最初に思いついたキャラです。一行も書いていない時点で『天下無敵の竜胆薫』ってフレーズが出来上がり、このフレーズに相応しい活躍をヒロインにどうやってさせようかをあれこれ考えたのが、この作品だったとしても良い気がします。

 最初はあれこれ校内の問題をバリバリ解決するような話も考えていました。学園ものによくある、ヒロインを中心とするグループがあれこれ活躍するストーリーです。これもある程度まで構想を練ったのですが、次々起こる問題を考え出すのが大変で、なおかつそんな総花式のエピソードをまとめて大団円に持っていくのがさらに大変で挫折しています。

 そこで難問に体当たりして、力業でも強行突破するキャラに変更しました。決して天下無敵ではありませんし、出来ない事は出来ないのですが、何とかしてしまう役どころです。どちらかといわなくても健気なキャラですが、弱々しくて健気ではなく、元気いっぱいで健気ってところでしょうか。

 でも好きなキャラでした。もうちょっと周辺人物を配置したかったのですが、猛練習で連日ヘロヘロって設定にしないと県予選に間に合わないし、他の部員に恋模様を出そうとすると他のヒロインも出さないといけません。そういうのも書きだしてはいたのですが、どうにも話が冗長になるというか、ストーリー展開のリズムの乗りが悪くなってすべてカットにしています。

 最大の問題は私自身の歳でして、今の高校生活の感覚がイマイチつかめません。だったら高校時代の設定なんか書くなと言われそうですが、それはそれ『書きたかった』に尽きます。細部を書くとボロが出るので誤魔化しています。

 でも毎度ですが、書いていて楽しかったのが最大の収穫です。やはり趣味ですから、楽しくなくっちゃね。