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「SSU附属戦のラインナップを発表する」
監督の水橋敬遠に対する対抗策はボクと古城、もちろん春川も含めて誰か水橋の前に誰かが走者としていれば、水橋敬遠で必ず二塁に走者が進むことになる。そこまでSSU附属がやるかはわからないが、水橋の前に二人走者が出ていれば満塁になる可能性さえある。後は夏海と秋葉の二枚でタイムリーを期待するぐらいだ。
ここで秋葉は水橋のスタミナを心配していたが、他にも心配しないといけないスタミナがある。それはボクたちのスタミナだ。ボクもかなり疲れがたまってきてる。夏海や秋葉が不振なのは練習不足もあるけど、確実に疲れが出てる。だからこそ、ここまで温存した古城に監督は期待しているように思うんだ。
でもね、勝つためには夏海が打たないとダメだ。アメリカ遠征に行った時の夏海は凄かった。アメリカ人相手に長打連発で向こうの新聞にも大きく取り上げられたんだ。社交辞令だとは思うが、このままアメリカに残ってメジャーを目指さすべきの記事もあったぐらいだ。あの活躍の再現が欲しい。
あのときの夏海の活躍は『サマー・タイフーン』とまで書かれていたんだ。あの活躍の十分の一、いや一瞬の再現があればボクたちは勝てるんだ。そうやって一点でも、もぎとったら水橋は必ず守ってくれる。そんなエースがボクらにはいるんだよ。
試合はSSU附属の先攻で始まった。水橋の今日のスタートはキャッチボール投法。これは意表を衝いたのとスタミナ温存のためだろう。水橋は今日勝ったら明日も投げないとならないから。ただキャッチボール投法は城翔戦で攻略法がわかってるから、どこかで切り替えるだろうが、秋葉よリードは任せたぞ。
裏の攻撃だがボクは三振。これはちょっと打てない感じ。春川も三振だったが古城がヒットを放ってくれた。これでSSU附属が水橋敬遠をやるかどうかが確認できる。やらなければ、水橋は必ず打つ。やっぱり敬遠だ。そうなると夏海だが、ボテボテのセカンド・ゴロか。今日の試合はやはり厳しい。
二回からSSU附属はバント策で来た。やはりリサーチ済のようだ。秋葉はどうするか。たぶん一回りまでこれで押すんだろう。でも城翔戦の頃に較べたら守備はマシになったものだ。春川もあのキャプテンだってかなり動けるようになってる。
二回のうちは秋葉、大丸、乾と凡退。三回は手塚凡退の後でボク。SSU附属は今日はエースじゃなく二番手投手。昨日見たエースに匹敵するぐらい良いピッチャーだけど、ストレートは速いがカーブに難点があるようなんだ。難点といってもストレートに較べての話だが、ちょっとコントロールが甘い時があるんだよ。そのうえで結構カーブが好きみたいだ。だからその気で待ってるとチャンスボールが来る時があるんだ。待っていたら来た。上手く打てて三遊間を抜けてくれた。春川は凡退したが古城がもう一本打ってくれた。今日の古城は当たってるようだ。これでもし水橋敬遠なら満塁だ。頼むぞ夏海、任したぞ。
オレの目の前で敬遠かよ。それも一・二塁からわざわざ満塁にしてまで水橋敬遠て正気か。この夏海大輔をそこまでコケにするか。舐めるのもエエ加減にしくされよ。ネクスト・バッターズ・サークルの秋葉が、
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「ダイスケ、ガツンとかましてこい」
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「ボコッ」
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「夏海、次には打てるって」
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「ストラック・バッターアウト」
それにしても水橋は化物や。もちろんあのスピードボールと、信じられないコントロールもそうやけど、ピッチャーとしてのメンタルが化物や。たとえオレが水橋ぐらい投げられても、ここまで絶対勝ちあがれん。こんなお荷物バックじゃ腐らん方が不思議や。
なんとか打たんと、なんとか塁に出て水橋の前で塁を埋めないと勝てん。今日の冬月も古城も当たってるから、オレがなんと塁に出られればSSU附属の水橋敬遠策を打ち破れるはずなのに。どうしたって打てへんやんか。なんとかしないと、なんとかしないと・・・
ユウジは四回からダイナミックフォームにチェンジしたよ。でも今日のユウジはちょっと不調みたい。ちょこちょこヒットを許すんだよ。さすがに炎天下の真夏の三連投だもんね、ユウジだって疲れてるんだきっと。でも点が取れないのよ。冬月君と古城君は打ってくれるんだけど、夏海君がどうしても打てないの。SSU附属のユウジ敬遠策を打ち破るには夏海君の打撃にかかってるって駿介監督は言ってたけど、ここまではSSU附属の思う壺やない。がんばれユウジ、夏海君はきっと打ってくれるはずよ。そこまでなんとか踏ん張って。ユウジはウチの夢を請け負ってくれたやん。ウチはユウジを信じてる。
あ〜ん、延長戦になってもた。SSU附属は八回からピッチャー代えてる。エースナンバーじゃないから三番手投手かな。しっかし三番手言うても先発の二番手とあんまり変わらへんやんか。なんであないに次から次に仰山ピッチャーおるねん。
あのユウジが肩で息をしてる。苦しいんや。でも頑張って、ウチにできるのは声援しかもう出来へん。十回も、十一回もうちは凡退、あっユウジがまた打たれた。一死一・三塁になってもた。秋葉君がマウンドに行ってくれてるけど、さすがに苦しそうな顔してる。
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「だいじょうぶか水橋」
「さすがにしんどいわ」
「そりゃそうやろ。ところで水橋に言っておきたいことがあるんや」
「なんや」
「お前には感謝してる。オレたちがここまで来れたのはみんな水橋のお蔭や」
「水臭いこというな。今日も勝つで」
「もちろんや」
クソッ、クソッ、クソッ、なんで一点が取れへんのや。夏海の馬鹿野郎、あんだけチャンス潰してどうするんや。冬月も二安打、古城も二安打と四球で塁に出てくれてるんやぞ。そこで水橋敬遠やから、満塁もあったし得点圏にランナーが四回もおったやんか。それを全部潰しやがって。お前がどこかで一本打ってりゃ、試合はとうに終わっとるんや。わかっとるんか夏海、お前も男やったら一回ぐらい根性出して水橋援護したれや。
夏海の事をボヤいてもしゃぁない。打ててないのはオレも同じやからな。それよりこの回や、ここで点取られたらあかんのや。怪物水橋の球威もさすがに落ちて来てる。オレがなんとかリードせんと、このザル守備陣がなんとしても水橋を支えてやらないとアカン。ここはスクイズもあるから早めに追い込んでしまいたいんやが、
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「カキーン」
さて十二回の裏やけど、大丸キャプテンから。ここからじゃまず点は入らへんから十三回も水橋は投げなあかんやないか。まあ、この回が三者凡退なら、十三回の裏は冬月からやから最後のチャンスになると思うけど、アカンかったら良くて引き分け、水橋の疲れからすると十五回までもつかも危ない。引き分けで再試合になっても、勝機なんかあらへんやないか、SSU附属はまだエースが残ってるんや。
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「カキーン」
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「コーン」
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「オレたちは必ずリンドウを甲子園に連れて行く」