PM2.5みたいなお話

今年になって突如と言う感じでクローズアップされたPM2.5環境省のHPから簡単に、

PM2.5は非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が心配されています。

今年になってPM2.5が急に増えたかどうかですが、これも環境省の昨年度(確定値)と今年度(速報値)の比較からですが、

地域差があるようで、引用した地域以外にもリンク先にあるのですが、増えたところも、減ったところも、変わりがなさそうなところもあります。大雑把に昨年とあんまり変わりはなさそうぐらいにしても良さそうな気がします。現在のところPM2.5対策は注意喚起のための暫定的な指針となっています。ここで「注意報」的な基準に達した時の対応ですが、

これまでの研究知見から、屋内のPM2.5濃度は屋外のPM2.5 濃度に比べて低い傾向にあることが知られているため、PM2.5対策として屋外活動を控えることは有効と考えられる。したがって、PM2.5濃度が暫定的な指針となる値を超えた場合には、屋外での長時間の激しい運動や外出をできるだけ減らすことは有効である。その際、屋内においても換気や窓の開閉を必要最小限にするなどにより、外気の屋内への侵入をできるだけ少なくし、その吸入を減らすことに留意する必要がある。特に高感受性者においては、体調に応じて、より慎重に行動することが望まれる。

高感受性者とは

呼吸器系や循環器系疾患のある者、小児、高齢者等

こうなっています。高感受性者には小児も入っているのですが、春に運動会を行う学校もあります。運動会のためには屋外の練習が不可欠なんですが、暫定値を越えるような状況になり「注意喚起」になった時には指針として、

不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす。(高感受性者 ※2 においては、体調に応じて、より慎重に行動することが望まれる。)

ただし、これは望ましいと言うだけで現在は禁止令的な性格を帯びていません。あくまでも注意を呼びかけているだけです。ただなんですが、PM2.5への社会的な関心度は高まっていますし、もし注意喚起の状況でなんらかの症状を起せば、場合によってはチトうるさい時も生じるかもしれません。昨今の学校だけでなく社会全体がそういう流れの中にある事はよく知られています。

とある学校(私は信用を置いているソースからです)が運動会の予行演習の日に「注意喚起」が出たそうです。難しい判断だと思います。学校行事のスケジュールも余裕はそうはないですから、判断は決行だったそうです。この決行の根拠はおそらく、

Q. 「屋外での長時間の激しい運動」とは、どのような運動を指しているのですか。
A. 一概に明示することは困難ですが、マラソン大会のように呼吸器系への過度の負担が長時間続くような運動が想定されます。
運動会等の屋外活動は、長時間の激しい運動にはあたらないと考えています。

運動会は

    長時間の激しい運動にあたらない
それでもなんらかの対策を行う必要があるの判断も同時になされたようです。その対策がマスク着用です。PM2.5に対するマスクの有効性は、

PM2.5に対して、高性能な防じん(小さな粒子の吸入防止用)マスクは、微粒子の捕集効率の高いフィルターを使っており、微粒子の吸入を減らす効果がある。但し、マスクを着用する場合には顔の大きさに合ったものを、空気が漏れないように着用しなければ、十分な効果が期待できない。一方、着用すると少し息苦しい感じがあるので、長時間の使用には向いていない。また、一般用マスク(不織布マスク等)には様々なものがあり、PM2.5の吸入防止効果はその性能によって異なると考えられる。

ポイントは

  1. マスクはPM2.5の吸入を減らす効果はある
  2. マスクは正しく着用する必要がある
  3. マスクの着用は長時間の使用に向いていない
  4. マスクの種類によって吸入防止効果に差がある
こんなところでしょうか。マスクについてはもう少し説明があり、

微小粒子状物質PM2.5)に対して、一般用マスク(不織布マスク等)の着用により、ある程度の効果は期待できますが、PM2.5 の吸入防止効果はその性能によって異なると考えられます。また、医療用や産業用の高性能な防じんマスク(N95※1 やDS1※2 以上の規格のもの)は、微粒子の捕集効率の高いフィルターを使っており、PM2.5 の吸入を減らす効果があります。但し、マスクを着用する場合には顔の大きさに合ったものを、空気が漏れないように着用しなければ、十分な効果が期待できません。一方、着用すると少し息苦しい感じがあるので、長時間の使用には向いていません。

まあ、N95マスクを本気で着用したら、いくら運動会が「長時間の激しい運動にあたらない」と言っても、かなりの難行苦行になります。N95でなくともマスクを「正しく着用」すると、激しくなくとも運動は少々辛いものになりそうです。それでも何らかの対策を行っておかないと「拙い」のでマスク着用の予行演習と相成ったのだと思っています。学校も大変だと思います。


そうなると気になるのは本番の日です。注意喚起が出ていなければ問題は無いのですが、運悪く出ていたらどうするかです。それも翌日以降の天気予報がチト微妙なんて事も重なったらです。つまりは決行するかどうかです。「運動会は激しい運動にはあたらない」となっているので決行しても問題は無いのですが、予行演習で着用したマスクが一つの先例問題になります。

本番でもマスクを着用するか否かです。さらには観戦する父兄対策も考慮に入れる必要も出てきます。父兄は観戦しているだけで激しい運動はしていませんが、それでも父兄にマスク着用を呼びかけるかです。こういう時の責任者にはなりたくないとシミジミ思いました。校医として医学的な意見なぞ求められたらゾッとします。


PM2.5の問題に社会的関心が高まれば、小学校の運動会だけではなく各種の屋外イベントにじんわり影響が及んでくる可能性があります。健康成人なら影響が少ないとはなっていますが、喘息傾向があればどう扱うのかみたいな話にもなります。ここのところ各地で盛んに行なわれているマラソン大会もどうするかは出てくるかもしれません。

ラソンは「長時間の激しい運動」にあたるとなっていますが、一方で暫定指針は注意を喚起しているだけで、とくに従わなくとも具体的なペナルティはありません。ここも暫定的な指針には具体的なペナルティはなくとも、実際に当日に「PM2.5の影響じゃないか?」と思われるような症状が発言し、これが少々重症化し、さらにこれがマスコミにでも大きく取り上げられたりすれば主催者は辛い立場に置かれるかもしれません。注意喚起であっても具体的に注意はなされているからです。

暫定指針にも具体的に行動指針まで書く一方で、注意喚起が社会的影響を広げる点に苦慮している様子は窺えます。言っちゃ悪いですが、環境省も何か注意を出さないと責任が問われるかもしれないし、一方で注意が禁止令となって社会活動・産業活動に影響が現れれば、これまた責任問題が生じるかもしれないぐらいのところでしょうか。だからデータと方針を示すが、後は各自で判断してくれみたいな感じです。

そうなってしまうのも現在の状況から判らないでもありませんが、とくに高感受性者の集団の屋外イベントを主宰する責任者には頭が痛い問題として続きそうです。禁止令でなくとも具体的な行動指針が出ている注意喚起を無視するのも問題がありそうですし、忠実に従うと行事予定に混乱は避けられませんし、下手すると過剰反応批判も出てきます。とりあえず判断を迫られる責任者でなくて良かったと思う次第です。

蛇足ですが、

今回定める指針は、中国在留邦人のように日本国内のPM2.5濃度レベルと比べて極端に高濃度のレベルの状況にある地域を考慮した指針ではないことから、中国在留邦人への対応については、既に在中国日本国大使館から示されている注意喚起に基づき対応することが適当と考える。

中国の濃度は「極端に高濃度」であり、日本の暫定指針なんて適用していたら「住めない」レベルにあるぐらいと解釈しても良いかもしれません。そこまでなら注意喚起として「渡航制限」なんて話も将来的に出るのか、出ないのかも注目して良いかもしれません。既にあるのかな?