舞鶴延長戦

昨日は舞鶴市民病院の人件費が15億円などという無謀な推測値を出しましたがhiro様から

総務省のホームページのなかに去年3月策定の舞鶴市民病院改革プランがありました。

またtadano-ry様から、

こういう情報を頂きました。これによると人件費(職員給与費)と職員数は、

年度 H.18 H.19 H.20 H.21
職員給与費 818 794 900 864
常勤医師 3 6 8 8
非常勤医師 9 11 14 9
看護師 43 46 46 45
薬剤師 5 5 5 5
放射線技師 8 7 7 6
臨床技師 11 10 9 9
理学・作業療法士 7 7 6 6
給食職員 2 1 1 2
事務職員 13 14 16 9
その他職員 2 11 9 16
医師以外職員数 91 101 99 98


単位は百万円ですから、職員給与費は8〜9億円が正しい情報でした。謹んで訂正させて頂きます。これがどれくらいの給与になっているかですが、医師の数が少ない平成18年度を参考に考えてみます。舞鶴の常勤医師構成も少し複雑で、病院の他に付属診療所があるのですが、「どうも」病院と診療所の人事交流は薄そうな感じです。そのためか平成18年度は病院が1名、診療所が2名なんて体制が組まれています。

それはともかく、常勤医師については舞鶴なう様から業者の勧誘として「2300万/年であったらしいです」とあります。非常勤医師にどれぐらい払っていたかになると検討も付かないのですが、大雑把に8億1800万円のうち1億1800万円が医師給与と仮定すると、医師以外の職員数は91人ですから、平均で770万円ぐらいになります。

う〜ん、どんなものかの評価の物指しがないので、なんとも言えない位にしておきます。ただ良くわからないのが事務系職員数で、事務職員と「その他の職員」が平成19年度から合わせて25人ぐらいいるのですが、この名目がクルクル変わっています。なんじゃろ?ってところです。


次に医業費用の内訳です。医業費用は医業収入にある程度比例するはずです。私の手許にある、近江八幡十和田四万十比較対照として示します。

舞鶴 近江八幡 十和田 四万十
医業収入 739 医業収入

比率
7620 医業収入

比率
5241 医業収入

比率
1909 医業収入

比率
職員給与費 864 116.9% 3897 51.1% 3159 60.3% 1018 53.3%
材料費 176 23.8% 2545 33.4% 1182 22.6% 712 37.3%
経費 341 46.1% 708 9.3% 824 15.7% 274 14.4%
減価償却 121 16.4% 247 3.2% 171 3.3% 84 4.4%
その他 9 1.2% 21 0.3% 722 13.8% 3 0.2%


先にお断りしておきますが、年度はそろっていません。サンプリングですから舞鶴は平成21年度にしていますが、他は私が適当に選んでいます。減価償却費は過去の投資の反映ですから、絶対額からするとこの程度のものと理解する事にします。「その他」は十和田が理解不能なぐらい多いのですが、私の知識では意味不明なのでこれ以上は突っ込みません。

材料費とは具体的に薬品費、診断材料費などになります。これらはその病院のやっている医療の質にも関係するところはあります。高度医療を行なう基幹病院では高くなる傾向があるでしょうし、病院だからとりあえず二次救急みたいなところは安くなる傾向はあると考えられます。もちろん業者に対する値段交渉も少なくないところです。

そう考えると四万十は高すぎるかなとも感じますし、十和田はちょっと低すぎるんじゃないだろうかと感じます。近江八幡は経営内容、医療内容から妥当かもしれないと言うところです。舞鶴はどうかなんですが、年間の入院数は24820人なんですが、内訳は一般患者が13505人、療養患者が11315人です。他の病院がほぼ一般患者と考えると、材料費は少々割高に感じます。

経費とは委託料・その他を指すようです。指すと行ってもよくわからんところですが、他の3病院は10〜15%程度です。ところが舞鶴は驚きの46.1%です。絶対額も驚異的で、四万十より多いだけではなく、医業収入では10倍以上の近江八幡の半分ぐらいになっています。何にこんなに使われているのか全く不明なんですが、医業収入の半分に匹敵する経費が計上されています。

それとこの経費ですが、医業収入にはほぼ連動していないようで、

年度 H.18 H.19 H.20 H.21
医業収入 230 304 511 739
経費 299 334 302 341
経費比率 130.0% 109.9% 59.1% 46.1%


経費もかつては医業収入を上回るものであった事が確認されます。経費の比率が落ちたのはあくまでも医業収入が増えための相対的なものであり、ほぼ不変の金額が毎年計上されています。それにしても具体的な内訳はなんなんでしょう。気になるので近江八幡の経費の内訳を参考までに出しておきます。

項目 金額
厚生福利費 3,815,644
報償費 4,877,204
旅費交通費 1,403,435
職員被服費 1,347,307
消耗品費 23,759,313
消耗備品費 4,649,119
光熱水費 112,379,394
燃料費 46,128,495
食糧費 91,168
印刷製本費 12,800,861
修繕料 23,171,920
保険料 25,084,781
賃借料 45,064,854
通信運搬費 8,387,886
委託料 977,478,028
諸会費 3,152,267
補償費及び賠償金 42,000,000
雑費 12,642,536


紹介した近江八幡の経費にはPFI委託料が7億5000万円ぐらい含まれているのと、上の経費の比較表とは年度が違うので注意して欲しいのですが、内訳からすると医業収入に関係するというより、ある程度の固定経費に近いものと見れないこともありません。それでも舞鶴近江八幡の半分の経費が必要なのはベラボウと素直に感じます。舞鶴ほど「経費節減」のスローガンが似合う病院は少ないかもしれません。


人件費については訳がわからない状態ですが、経営改善の見通しです。広報紙に院長の言葉として、

今年度後半の入院患者数は、療養病床は42床まで、一般病床は、リハビリを中心とした回復期と亜急性期診療で40床まで増やすことを目標

この目標が100%運用されれば一般患者が14600人、療養患者が15330人になります。合計で29930人になるのですが、平成21年度が24820人で医業収入が7億3900万円である事を考えると、8億9000万円ぐらいになると推測されます。ざっと9億でも良いかもしれませんが、相も変わらず人件費とチョボチョボです。ひょっとしたら100%を切るかも知れませんが、その程度です。

もう一つの指標として公立病院改革プランの概要があり、

平成18年度より、一般病床150床のうち90床を休床し、一般病床60床、療養病床48床の計108床で運営を行っている。

これがマックスまで稼動したとすると、一般患者21900人、療養患者17520人で合計39420人になります。100%稼動は無理ですから9割稼動として35000人、一般と療養の比率が変わるので正確ではありませんが、単純計算で10億4200万円。一般患者の比率が高くなるので概算ですが医業収入12億円程度までは期待できると考えて良さそうです。12億円の医業収入があれば、人件費と経費ぐらいはやっと賄える様な気がします。それでも人件費は9億円としても75%ですし、経費は3億円であっても25%です。


う〜ん、人件費は15億円ではなく8〜9億円である事は判明しましたが、それでも異様に高いのは間違いありません。もう一度経営規模の近い四万十と較べてみます。比較年度は平成21年度です。

分類 舞鶴 四万十
常勤医師 8 6
非常勤医師 9 不明
看護師等 45 65
医療技術者 26 20
事務・その他 27 17
合計 115 108
職員給与 864 914
一般病床 60 97
療養病床 45 0
病床利用率 62.9% 51.3%
医業収入 739 1796
極めて平凡な結論ですが、舞鶴の人件費は人数から考えるとさほど多いとは言えない様に思われます。ただ医業収入から考えると現在の半分以下の4億円程度に減らさないと経営は成立しないと考えられます。108床フル稼働の医業収入が12億円程度と推測しましたが、ここまではすぐには無理として10億円としても5〜6億円程度に減らさないと経営再建は夢のまた夢でしょう。

それと莫大としか言い様のない経費です。舞鶴市もそんなに余裕のある財政とは思えないのですが、どうなっているのかよく判らないのが舞鶴なんでしょうね。